第12話

ダンジョンの攻略は順調に進んで最奥だと言われてる60階層まで1週間程で到達した。

中層は下に降りれば降りるほど魔物の強くなるのに一度に戦闘する数がどんどん増えて、ダンジョンも大人数で戦っても問題ないように階層のサイズが大きくって道幅も広くなったりしていた。

中層のボスは女王アリの魔物でこの魔物は見た目は皆同じ兵隊アリなのに遠距離攻撃は出来ないけど耐久が高いタイプ、耐久は低いけど蟻酸を吐いて遠距離攻撃してくるタイプ、攻撃性能はゼロに等しいほど低いけど他のアリにバフをかけるタイプ。

中層のコンセプトがそんな感じだったんだからボスだって役割分担されていて連携してくるのはおかしくないんだけど、兵隊アリの姿は皆同じと言うのがとても厄介。

バフをかける兵隊アリを最初に倒さないと兵隊アリ達が強化されてジリ貧。

けどいっぱいいる兵隊アリからバフをかける兵隊アリを探すのは大変だし、やっとの思いで見つけても兵隊アリの群れの中に混じられて見失う事が多かった。

そうやってグダグダバフをかける兵隊アリが倒せないでいると女王アリが追加のバフをかける兵隊アリを産んで、更にアリ達が強化される。

ちなみにバフをかける兵隊アリが増えれば増える程バフの威力は高くなり続ける。

バフの限界で上がらなくなるとかそんな優しい条件は存在しない。


だいぶHPも削られて3人だけじゃ無理そうだったので、俺が兵隊アリを一掃、その後1匹になった女王アリを3人がタコ殴りにするという方法で突破した。


そのまま下層に挑戦しても良かったけど、3人はこのまま下層に行っても通用しないんじゃないか?と自信喪失気味だったので、中層でもう少しレベル上げをして再挑戦することになった。


この時、宝箱から『流水の短剣』っていう面白い魔道具が出たので俺が貰った。

流水の短剣は水属性の魔法に適性を持つ人が魔力を流すと刀身が伸びて蛇腹剣みたいな使い方ができる。

実用性は有るのか?と問われると無いけど。

使ってて面白いしロマン武器ってことで。


この世界の武器にはゲームみたいに武器にも攻撃力が設定されている。

流水の短剣は魔法攻撃力でダメージ計算される仕様でしかも流水の短剣自体の魔法攻撃力はゼロ。

他の宝箱から手に入った武器とか防具、道具類の方が確実に性能が良いのもあって欲しいって言ったらすぐに貰えた。寧ろそれだけで良いんですか?って聞かれるレベルで流水の短剣は人気がなかった。


レベル上げをした後の女王アリとの再戦はまさに短期決戦。

一回目はバフをかける兵隊アリが厄介なのは分かるけど、それだけに集中しすぎたせいでグダグダになってしまった。

今回はバフをかける兵隊アリを速攻で倒すのは同じだけど、何もバフをかける兵隊アリだけを倒す必要は無い。兵隊アリを纏めて倒せば良いんだと言う作戦だ。


1回戦目の中盤あたりにはこの事に気づいてたけど、その頃にはバフをかける兵隊アリが増えすぎて兵隊アリを捌ききれなくなってたから実行出来なかった。

なので今回は最初っから最大火力で兵隊アリを殲滅。その後兵隊アリを産む暇を与えず女王アリをボコボコにするということだ。


この作戦が見事にハマり一回目の苦戦はなんだったんだというぐらいあっさりと終了した。


満を持して挑んだ下層はモンスターの数は少なくなって罠の類もほとんど出てこなくなった。

だけどその分魔物の強さが数倍にも跳ね上がっていて、わなも作動させたら即死するような凶悪なものになっていた。


罠が少ないと言ってももし起動させれば即死というう品物なので気が抜けないし、魔物との戦闘も毎回命懸けレベル。

その分宝箱から出てくる物のレベルが段違いだった。全部解除不可の即死トラップが仕掛けられてたけど。

イラッと来たので停止の権能で宝箱のトラップを起動しないように停止して全部回収した。


俺からしたら大した物じゃなかったので、中身は全部あげたけど。

カルアさんいわく国宝と呼ばれるものの数倍の性能があるらしい。


「解除不可の即死トラップ付き宝箱なんてずるいだろう。そんなの絶対手に入れられないじゃん」


実際、この世界最高ランクの冒険者、蒼天の翼2人はこの階層にたどり着いてるのにドラゴン装備を欲しがったのは、この宝箱が開けられなかったからだろう。


「そこまで厳重だからここまで高性能な物が中に入っているとも考えられますけどね。それにダンジョンなので何かしら開ける方法はある筈ですよ」


ほかのダンジョンでの話だけど、そのダンジョン限定で罠を発動させずに開けられる鍵が手に入ったと言う話も有るらしい。


「そう言うのを全て台無しにするのがコウさんの能力なんですね」


確かにギミックなんて関係ないゴリ押しだけど無事に手に入るんだから言いじゃん。


「そろそろ休憩を初めて1時間が経ちますし、そろそろボスに挑戦しましょう。今回は完全に事前情報無しのボス戦です一瞬の判断ミスが死を招く可能性もあります。最大限気を引き締めて挑みましょう。後、今回はコウ様も普通に戦闘に参加してください」


戦闘する許可も出たし、性能の確認がてら流水の短剣を使って見よう。








読んでいただきありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る