第8話
「…やることが無い」
地の大精霊を解放する為にダンジョンを黙々と攻略していってる訳だが、出てくる魔物は全部経験値にするため3人組が倒してるし、カルアさんが貰った階層情報を確認しながら先導していて、レックスさんはそんなカルアさんの護衛をしている。
俺だけやることが何も無くてただ後ろをついて行ってるだけの状態だ。
「エンシャントドラゴンをかかと落としで倒す人が浅い階層の敵を倒す必要なんて無いでしょう?階層が深くなればなるほど出番は増えるはずなので、その時まで温存しておいてください」
魔物を倒してどんどんレベルアップしていく3人を見てるとその出番も無くなりそうな気がする。
それにレベルを上げるために敢えて魔物のいる方に向かうことも少なくないからペースが凄いゆっくり。
何度も戦闘をこなしている、3人もそろそろ疲れてきてそうだし。
ある程度下の階まで一気に降りてそこでパワーレベリングした方が効率いい気がする。
「レベルあげはもうちょっと下の階でも問題無いんじゃない?3人もこのレベルの魔物には苦戦してない訳だし」
全員同じようなことを考えていたらしく俺の案はあっさり採用された。
1度休憩を取るために各階層に1箇所はあるセーフティーエリアに向かうことになった。
「そういえばなんで魔王は大精霊を封印するだけして、そのあとは大人しくしてるんですか?そのままの勢いで人類を蹂躙しちゃえばいいのに」
大精霊達が割と奮戦して魔王も結構なダメージを受けているとか?
それだけだったら、ほかの魔族が戦えば良いだけだと思うけど…。
「大精霊様達が最後の足掻きで、ほとんどの魔族を1箇所に閉じ込め無ければ、そうなっていたと思います」
だから今は魔族の大規模な進行が無いのか。
ホントぎりぎりを生きてるな人間。
「それじゃあ当分は魔族の大進行は気にしなくていいわけだ」
ダンジョンクリアして大精霊を救出したぞーってダンジョンを出たら人間滅んでました。とかシャレにならないからね。その確率は今のところそこまで高くないって思って良いだろう。
…魔物を使って襲ってきたりはして来たな。あれ、俺が居なくても何とかなってたのかな?下手したらあれで滅びてたとか有り得そう。
やっぱり、大精霊解放に時間をかけるのは良くない気がする。
道順とかそんなこと気にせずに俺が魔族殲滅した後に大精霊解放すれば良いんじゃないの?
「俺が魔族の閉じ込められてるところに行って殲滅して来ちゃダメなの?そうすれば魔族を警戒しないで大精霊の解放に専念出来るんじゃ無いかな?」
「勇者を召喚する魔法を神託で与えられた時に魔族は元々バグから生じてしまった想定外の存在で、中でも魔王は幾ら攻撃されてもHPが減らない存在になってしまったらしいのです。それを解決する為に勇者というシステムを作ったらしいので、コウ様が魔王より強くても勇者じゃ無いのでHPが削れなくて勝てないと思います」
そんなのチーターじゃん。結局勇者のハルくんのレベルを上げつつ大精霊を助けて、魔王を倒しに行かなきゃいけないわけだ。
権能を使えばダメージを食らわせる事もできる気がするけど、できなかった時に責任取れないから試そうとするのはやめとこう。
もしかして今日中に元の異世界に帰れるかも!とか思ったけど現実はそう甘くなかった。
「ずるじゃんそれ」
「その通りです。だから、本来は作るつもりのなかった勇者というシステムを作り出して、そのシステムに適応できる人間を異世界から連れてくる事になったらしいです」
ちなみに最終的に勇者が絶対勝てるようになってるらしい。
どう言うことかと言うと、魔王を倒すまでは勇者は死んでも教会で生き返るらしい。
逆に言うと魔王を倒すまで何度死んでも戦わさせられるということで…俺、勇者じゃなくてほんとに良かった。
セーフティーエリアで休憩して体力を回復させたあとは、階段まで最短距離で下の階を目指した。
結果的に降りる速度は倍以上になって一気に17階層までたどり着いた。
ここまで来ると3人の攻撃じゃ魔物を一撃で倒せなくなってきたので、ここからは慎重にまたレベルあげを重視しながら進むことになった。
20階層にはボス部屋も有るらしいのでしっかりとレベル上げをしていく方針だ。
「魔王ってダンジョンも作れちゃうの?」
勇者3人組はモンスターと戦闘を繰り返してレベル上げに勤しんでるけど。
俺はその後ろを歩いているだけでやることが無いので、レックスさんに質問ばっかりしている。
「流石にそれほどの力は有りません。元々あった未攻略で難易度の高いダンジョンを利用されてしまったんです」
流石に1からダンジョンを作る力は無いのか。
もし、ダンジョンを作れるんだったら、魔王が作ったクリアさせる気ゼロ悪意満載のダンジョン攻略になってただろうし、そうならなくて良かった。
「ただし、ダンジョンのように魔物を生み出す能力を持っているので、魔王が存在する限り、敵の兵力は増え続けることになります」
魔族が生まれたのは神からしても予期せぬ出来事って言ってたけど、ホントなんてもん生み出してんだ!って文句の1つでも言いたくなるな。
取り敢えずこの世界の神に会う機会があればこの世界の人の代わりに1発殴っておこうと思った。
読んでいただきありがとうございます。
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