第5話

「それで、最初はどこのダンジョンに向かうんですか?」


「地の大精霊が封印されてるところ」


水の精霊は俺が応急処置で何とかできるし、最後でいい。

火、風、地、光、闇が残りの大精霊だけど。

この中からだったら食料問題に直結する。地の大精霊を助けた方が良いだろうという考えだ。


「それにしても、大精霊が封印されてるダンジョン全部バラバラの場所にあって、向かうにだけでも時間がかかりそうです」


「それに関しては、これを使えば近くの街まで転移できるらしいから心配ない」


魔族の男が使用した。棒状の魔石のようなもの、あれは転移魔法を使う触媒らしい。

安くは無いけど一般にも流通しているものだと教えられた。

この世界の魔法はそんなに進んでるのかって思ったけど、これは人間が作り出した訳じゃなくて、神が作り出して、作り方を人間に教えたらしい。


「そんな便利なものが有るんですね」


「これが有るから、俺も飛ばなくてすむから、良かったって思ってる。ダンジョンに潜った時に必要なものは俺が持ってるから、今から用意する必要もない。この現状の国から巻き上げる気にもならないし」


ぶっちゃけ貰っても余り質のいいものは貰えないだろうって言うのもあるけど。

流石にひのきのぼうと100Gよりはいい物を貰えると思うけど。


「って言うかコウさんちょくちょく人外発言しますよね。自前で飛べるんですか?」


「飛べるよ。それに最初に転移した時に人間と精霊のハーフになっちゃったかられっきとした人外だよ」


「そう言う事を言いたかったんじゃ無いんですけど…まぁ、私たちは今すぐにでもダンジョンに挑戦出来るってことですね?」


彼女的には求めている答えと違ったらしい

今すぐダンジョンに行っても良いんだけど、

3人がどれだけやれるのか確認しておかなくちゃいけないよね。

ぶっつけ本番は怖いし。


「その前にちょっと手合わせしよう。3人がどこまで出来るか分からないし」


別にただの手合わせだからそんなに絶望した顔をみんなしてしないで欲しい。

怪我させるつもりないし。


「ほんとにやらなきゃダメですか?」


「今回は怪我させたりするつもりは無いから、単純に3人が今どれだけ戦えるのか見たいだけ、迎撃はするけどこっちから攻撃したりもしないし」


俺が寝ていた間、戦闘訓練は受けてたらしいし多少は戦えるでしょう。


「いつまでも待っても始まりそうにないし、このコインが地面に落ちたら始まりね。コインが落ちてから10秒たっても攻撃して来なかったら、迎撃しかしないって言ったけどこっちから攻撃するから」


仕方が無いので無理やり始めることにした。

流石に覚悟を決めたのかコインが落ちた瞬間プリーストの女の子が初手で魔法を発動した。


「【魔法障壁】、【勝利の加護】」


シールドとバフみたいだ。それにこっちの魔法は名前を叫けんで発動する感じらしい。


「【ファイアーアロー20】、【ウインドアロー20】」


魔法使いの子は、後方から魔法で攻撃をしてくる。40本も魔法の矢がこっちに向かって飛んできてるけど、集弾率が良くない。

ここにたったままでも当たるには10本有れば良いぐらいかな。

その場から動かず、自分に当たりそうなものだけ氷の矢を飛ばして撃ち落とした。


「あそこまでアッサリ破壊されると分かってても悔しくなるわね【爆破】【ウインド】」


俺に当たらず地面に突き刺さった火の矢が爆発、風の矢が風を起こした事によって、砂が舞い上がって視界がゼロになった。

最初からこうするつもりだったのか。

残念なのは魔力感知が有れば視界がゼロになっても問題ないということだろうか。

でも、そんなこと3人も分かっていて敢えてこの作戦を決行したのだろう。


あたりに霧を充満させて、3人の動きを感知する。

砂埃のおかげでかなり濃い霧をだしても気づかれ無かった。


やっぱり、前から突っ込んできてる。勇者君と同じ魔力を垂れ流しているのは囮。


後ろから気配を消してゆっくり近づいて来てるな。


「【ホーリーアロー】、【ホーリージャベリン】」


「【ファイアーアロー45】」


前からは魔法の飽和攻撃が来てる。魔法使いの子の魔法もさっきと違って余り分散せず、密集して飛んできている。

これも俺が後ろからくる勇者君に気づかないようにするための作戦かな。

いちいち迎撃するのはめんどくさいので氷の壁で全部受けきる。


それにしても、ここまで作戦練ってるって最初のやりたく無さそうにしてたのも演技か?もしかして。


その間に俺の真後ろまで迫ってきていた勇者君が斬りかかってくる。

覚悟!とか言って不意打ちなのに声をだすようなバカじゃなかったか。

それを体をずらして避けて、足払いで勇者君を転ばせる。


「痛った。全部お見通しかよ!いい作戦だと思ってたのに」


「正直ここまで作戦練ってくると思ってなかったよ。まだ続ける?」


「降参です。せめて一撃ぐらいは入れられると思ったのにな〜」


「俺もそれなりに鍛えてるから。じゃあ座りながらどうだったか話でもしよう。3人も気になることとかあるでしょ?」


砂埃が舞い上がってない所まで移動してテーブルとイスを用意した。





読んでいただきありがとうございます。

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