第39話

ダンジョンコアを安置する場所は別に人が住むわけじゃないので、氷でパルテノン神殿風の小さい建物を作った。

防犯機能として俺の許可がない人が入ると建物の中の気温がマイナス273℃絶対零度まで下がるようになっている。


リアがお父様がコウさんの事を祀る神殿を建てるって言ってたから、この建物の話をしたら見たがるでしょうね。って言われたけど俺を祀る神殿なんて建てなくていいのに。


「暑い時期はこの周りにいれば涼しく過ごせるわ。美味しいご飯も食べれるし」


「涼しいところで美味しいご飯、最高」


精霊王の2人はここを涼める休憩所みたいななにかと勘違いしているらしい。


防犯設備にもなるし案外悪くないか。


ここはダンジョンコアの置き場所以上の意味は無く、ここにいる必要はもう無いのでダイワに帰ってスズカさんにクラーケンの軟甲を渡して、酒呑童子を酒の精霊にしても良いか確認をとった。フェムトがそうしようって言ってるってことは伝えない。

神様がそう言ってるって知ったら断れないだろうし。


難しいかなって思ってたけど自由にしてくれて構わないと言われた。

酒呑童子に教えてもらった海底にあるダンジョンについても報告はしたけど、人間が挑戦するのは環境が厳しいという事で公表などは一旦保留となった。


「と言う訳で許可はでたよ」


酒呑童子にどうするか聞くのと、フェムトがそろそろ地球に行く準備ができて来たから色々説明したい。と念話が来たので精霊界に帰ってきた。


「ここは安全だし良いところだけどなんせ深海ってレベルじゃない深さの場所だからこの場所以外行けなかったから、精霊になれるなら大歓迎。精霊になるだけで転移魔法も使えるんでしょ?」


リバイアサンの里は大きいけどずっとここだけってのは確かに退屈か。

ここの水深は俺も詳しくは知らないけどとてつもない深さだし、魔法も使えなくなった酒呑童子には自分の力で地上に出るのは不可能だろう。

魔法が使える状態の酒呑童子でも勝てない魔物もいるから泳いで行くっていうのは無謀だけど。


「俺も酒呑童子が精霊になることは反対しないけど、水の精霊分類になるからには、悪いことしたら俺が消滅させに行くからね?」


「ヤマタノオロチの呪いさえなければ悪いことはしないから大丈夫だよ。ああそうだ精霊王様って茨木と実際に会うのはじめてだよね?」


そう言えばそうだね。結構大事な話をしてるのに我関せずって感じで生ハムメロン食べてるけど。


「茨木、この人が僕を助けてくれて、わざわざ隠れなくても自由に暮らせる場所を提供してくれた人だよ?ちゃんとお礼言って?」


「私は関係ない話かなと思って空気を読んで黙ってたんだが。コソコソせず自由に歩き回って好きな物を好きなだけ食べれるここに住むことを許可してくれた、精霊王様に挨拶は確かに必要だな。私は茨木童子、今回の件は本当に助かった。おかげで唯一の友である酒呑を失わずにすんだ」


「君たち2人が人間に害をなさない人間からすればいい鬼だったから助けたんだ。

正直、鬼って人さらって食ったりおもちゃにするような奴らだと思ってたよ」


「それが普通の鬼の認識であってるよ。

僕たちが異端なの。茨木が不味そうな人肉を食べる意味がわからないっていう鬼からしたら異常な思考の持ち主だから。僕は酒があれば後はどうでも良かったから結果的に人肉を食べなかっただけだけど。そのおかげで今生きてるから茨木には本当感謝だよ」


人食ってたりしてたら助けたりしなかったしね。


「だから僕が居なくなってダイワにいる鬼達の活動が活発化しなければ良いけど…多分無理なんだよね〜。精霊になったらこっそり鬼を退治しにダイワに転移していい?」


詳しく話を聞くと酒呑童子はあえて人の暮らしているところの近くに縄張りを持って他の鬼たちが人間を襲わないように牽制していたらしい。話を聞けば聞くほど酒呑童子が善人すぎてヤバい。寧ろなんで鬼なの?


これまで牽制していた酒呑童子がいなくなってこれまでの鬱憤もあって、一気に暴れ始めるんじゃないか?というのが酒呑童子の考えらしい。

あながち間違いじゃないと思う。


「助ける分には目をつぶろう。でも、人間に見つから無いようにね?もしバレると色々迷惑かかっちゃうから。主にスズカさんに」


「それは勿論。それに精霊ならこっちから姿を見せない限り人間には見えないでしょ?」


一応、酒呑童子が精霊として鬼退治してるってスズカさんに伝えておこう。


「それじゃあ早速、酒呑童子を精霊にしちゃおう。何となくやり方は分かるでしょ?」


ほんとに何となくだけどね。酒呑童子に抵抗しないでねと言ってから、酒呑童子に大量の魔力を流し込み、種族を鬼から精霊へと変化させていく。

肉体だけじゃなくて魂にも手を加えなきゃ行けないから結構緊張する。ちょっとでもミスしたら廃人になっちゃうし。

神経をすり減らしながら数時間、ようやく終わったので酒呑童子に魔力を流し込むのをやめてその場に座り込む。

種族の変換なんて凄まじいことをしたので当然魔力の消費も大きく、1時間ずっと極限の集中状態だったので立ってるのすら嫌なぐらい疲れた。


「なんか違和感あったりする?」


「今のところは特にないかな?魔法も前以上に自由に使えるようになってるし」


水属性の魔法で水球を作り出して自分の顔を確認する酒呑童子。

意識もはっきりしてるし、今のところ問題なさそうだな。




読んでいただきありがとうございます。





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