第21話

「酒くさ」


階段を降りて城の地下にたどり着いた途端

吐き気がする程の強烈な酒の匂いが漂ってきた。

しかもこれただ酒臭いんじゃなくて、魔力を纏ってる。

つまり、酒呑童子がただ酒を飲みまくってるから酒臭いんじゃなくて、酒呑童子の魔法って事だろう。

今は時間を止めてるから酒臭いだけになってるけど。

デバフとか掛けられちゃうのかな?本来なら。


酒呑童子は一番奥の牢屋を部屋に改造して住んでるらしいから、そこに行けばいるんだろうけど、先にコノハさんの母親を助けに行くことになった。魔力を封印されて幽閉されてるって言ってたし。

まぁ俺はコノハさんのお母さんが捕まって言う牢屋の近くで待ってるだけだったけど。


「酒呑童子が使ったと思われる。魔法は全部無効化してきたぞ。後はコウが権能を解除するだけだ」


最初は治療だけして解放自体は酒呑童子を倒して全体の時間停止を解除してからって思ってたんだけど。酒呑童子を倒した後に諸々の説明をするのが面倒なので先に解放する事にした。

檻まで直接見に行くとコノハさんが妖狐なんだから母親が妖狐なのは知ってたけど、尻尾が三本生えていた。

この世界でも尻尾が多いいほど魔力が多いいとかそんな感じなんだろうか?

そんな疑問より解放してあげる方が先か。

説明要員としてコノハさんに前にたって貰ってから時間停止を解除する。

突然知らない男が前にいたら、攻撃されるかもしれないし。


「お母様!」


「コノハ一体何が起こっているのか私に説明してくれますか?」


コノハさんのお母さんは時間停止を解除されて突然目の前に知らない人が沢山いたり、拘束が解除されている事に驚いたりせず、冷静にコノハさんに説明を求めた。

俺の事をじっと見つめて警戒しながら。

警戒どころじゃなくて少しでも動けば攻撃するつもりっぽいし。


説明と説得はコノハさんに任せるか。

攻撃されたところでダメージを受ける訳でもないし、さっさと酒呑童子の所に行って倒してくるか。

コノハさんの父親の将軍様も助けに行かなきゃ行けないし。

将軍様は城にある自室にいるらしいから後回しだけど。


「コノハさんこの場は任せました。私たちは酒呑童子を倒してここに戻ってきますね」


将軍様助ける時も同じような事になりそうだし、コノハさんにはいてもらいたいからね。

コノハさんとお母さんを回収してから将軍様のところに行くべきだろう。


「分かりました。お母様今何が起こっているのか1からしっかり説明しますので1度落ち着いてください。あの方達は──」


コノハさんが説明を始めたのを確認してから1番奥の部屋に改造されたという牢屋に向かった。


「ほんとに部屋になってるな。と言うか酒呑童子の目的がイマイチわからん」


現状、将軍家を裏から操ってるだけでほかは特に何もしてないんだよね。コノハさんに俺を連れて来いって命令してたか。


俺の勝手なイメージだけど、鬼ってもっと派手に暴れるイメージだったんだけど。


1番奥の部屋はほんとに部屋に作り替えられていた。

中には身長160cmぐらいで色白の少年が杯を口につけた状態で固まっている。


「おかしい……」


この城から感じた瘴気。てっきり酒呑童子が出してるのかと思ったけど違う……。

詳しく言うと酒呑童子から出てるのは間違いないんだけど、酒呑童子の中に別の何かが植え付けられてる?

1回、時間停止を解除して話聞いてみるか。

勿論、停止の権能で喋ること以外出来ないようにしてだけど。


いや、その前に瘴気を出してる元凶である植え付けられた何かを取り出しちゃえばいいか。

その前に念には念を入れて、アズチ周辺だけじゃなくてダイワ全体の時間を止めておこう。

ダイワ全体の時間を止めてから、酒呑童子に近づき、酒呑童子の胸に手を突き刺して心臓を抜き取る。


「何これ気持ち悪」


心臓には蛇が巻きついていてそれが瘴気を発している。

握り潰せばいいかな?って思ったけど、フィアに消してもらった方が確実だなと思ってフィアに消してもらった。


「ついでに酒呑童子の傷も治して」


何を考えてるんだ?と言いながらもフィアが酒呑童子を治療してくれる。

やっぱり心臓に巻きついてた蛇が元凶みたいで、酒呑童子から瘴気は出ていない。


酒呑童子の時間停止を解除してすぐに喋ること以外出来ないようにしてから話しかける。


「初めまして酒呑童子。色々と教えて欲しいことが有るから、大人しく喋ってくれると嬉しい」


「成程、何が起こってるかさっぱり分からないけど。どうやら僕は賭けに勝ったらしい。まずは助けてくれたであろう水の精霊王にお礼を。ありがとう」


「単刀直入に聞こう、なんでこんな事を?」


「ヤマタノオロチの呪縛から逃れるにはこれしか無かったから。これでも人は殺さないで尚且つその事をヤマタノオロチにバレ無いように苦労したんだよ?」


確かに、コノハさんの知る限りでは人を殺したりなんかはしてないらしい。

完全に信用はしないけど。


「じゃあヤマタノオロチが黒幕だと?」


「そう、ある日突然現れて蛇を植え付けてゆう事を聞かなければ殺す。だよ?ヤマタノオロチには向かっても死ぬしかと言って人間に敵対しても待ってるのは死だ。死なないためにはどうしたらいいって考えた結果1番確率の高そうな水の精霊王に賭けったって訳。

上手くいって良かったよホント」


何となくフェムトに似たイタズラが好きなタイプな気がするから気は抜けないけど、ひとまず味方扱いで良いか。




読んでいただきありがとうございます。



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