第22話

「助けて貰っといて図々しいとは思うけど精霊王様にお願いが有るんだけど聞いてくれない?」


「内容次第かな?俺に何をして欲しいの?」


(ディアーネさんちょっとお願いが有るんだけど)


(わざわざ念話でなんて珍しいですね。どうしたんですか?)


酒呑童子に聞かれないように念話でディアーネさんにあるおねがいをする。


(分かりました。周囲の水の精霊を総動員して探しますので、水の精霊達の時間停止を解除してください)


確かにディアーネさん1人だと大変か。

水の精霊達の時間停止を解除した。


(これで水の精霊は自由に動けるようになったよ。何が起きてるのか混乱してる子もいるだろうから、そういう子を落ち着かせるにはディアーネさんに任せるよ?)


(分かりました。では、私は行ってきますね)


(お願いしまーす)


ディアーネさんは地下室からこっそりいなくなった。


「…精霊王様は僕の話聞いてくれてた?」


おっと、ディアーネさんとの念話集中しすぎて全く聞いてなかった。


「ごめん、全く聞いて無かった」


「そうだよね。絶対聞いてないと思った。

出来れば精霊界に移住したいって話だったんだけど」


今回、酒呑童子は誰一人傷つけては無いけど、今回のせいで人間に敵対されるのは確実。

なので精霊界に移住させて欲しいらしい。

信用が無いよな〜。

リバイアサンの里で様子を見れば良いかな?

リバイアサン相手に何かしようとは思わないだろうし


「べつに良いけど酒呑童子を精霊界に連れて行って俺にどんな利益があるのかなって」


「精霊王様の利益は確かに少ないかもだけど精霊王様の部下として一生懸命働来ますよ」


酒呑童子自体の信用がないからなー。

将軍家を説得してまで生かしたいとは思わないな。


「分かりました。酒呑童子がヤマタノオロチに挑んで勝てたら精霊界に連れてってあげよう」


「もうちょっと、難易度下がらないかな?

僕じゃヤマタノオロチに敵わないからこんな事になってるんだし」


「でも、そのぐらいしないと将軍家だって酒呑童子を生かすなんて納得してくれないでしょう」


(コウ様。アヅチ近辺の山に潜伏した鬼を発見しました)


ディアーネさんに近くに鬼がいないか探して欲しいってお願いしたんだけどほんとにいたらしい。


(ありがとうディアーネさん。早速で悪いんだけど、転移で連れてきてくれる?)


同族を人質に取られて酒呑童子はどんな反応をするかな?


「おまたせしました。コウ様」


そう言って酒呑童子と同じぐらいの背丈の女性の鬼を連れてディアーネさんが帰ってきた


「茨木!?」


この鬼茨木童子だったのか。日本の昔話だと

大江山に住む酒呑童子の部下の1人だったか茨木童子は。


この世界だとそれ以上の仲っぽいけど、酒呑童子の反応的に。


「酒呑童子が裏切らないように人質にでもなるかな?って思って連れてきてもらったけど、効果抜群見たいだね。酒呑童子だって人間に同じことしてるんだから文句言わないよね?酒呑童子がヤマタノオロチを倒したらしっかり解放してあげる」


それを聞いて酒呑童子は複雑そうな顔をしている。


「1人で戦えとは言わないし、多少は手伝ってあげるよ?武器もこれ貸してあげる」

時間を止めてるから動かない茨木童子を精霊界に転移させてから、酒呑童子に精霊刀を手渡す。


(フェムト神界から精霊界に戻ってきてる?)


(戻ってきてるよ?)


(じゃあ今送った。鬼のお世話よろしく)


(はいよー)


茨木童子はフェムトに任せておいた。


「これは刀?茨木も人質に取られちゃったし、やるしかないか」


鞘から精霊刀を抜き数回素振りをする。

何となく精霊刀を渡したけど、刀術を使えるみたいだ。

ようやくやる気になってくれたか。


「待てよ?そもそもヤマタノオロチが復活する前提で話してたけど、実際どうなの?」


封印が解けないようなら倒す必要ないよね?


「そりゃヤマタノオロチがその気になればいつでも出てこれるぐらいには封印にガタが来てる。どっちにしろ再封印するか倒さないとダメだと思うよ」


なら、倒さなきゃダメだな。


結構話してるしコノハさんもお母さんに説明も終わった頃だろうから合流するか。

酒呑童子の説明もしなきゃだし。


「精霊王様、何故酒呑童子がいるんですか!?」


コノハさんのところに戻ると想定通り酒呑童子の事を聞かれる。

でも、驚いてるのはコノハさんだけでコノハさんのお母さんは酒呑童子を1度見た後は何も言わない。


「ヤマタノオロチの呪縛からは解放されたみたいですね?酒呑」


「お陰様で。それでも人間を利用した罰としてヤマタノオロチを倒せって精霊王様に言われちゃったけど」


もしかして2人は知り合い?


「私がこの鬼と普通に話してるのが不思議ですか?」


コノハさんのお母さんからそう話しかけられた。


「そうですね。とても不思議です」


「この話は将軍家と私の実家にしか伝わってない話ですが、酒呑童子は確かにヤマタノオロチから生まれた鬼です。しかし、人間がヤマタノオロチを封印するのを手伝った鬼でもあります。その事もあって何度か会ったことが有るんですよ。興味があるのは酒だけで人も食べませんしね」


成程、それなら酒呑童子の事をもう少しだけ信用しても良さそうかな?






読んでいただきありがとうございます。

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