第54話
「終わった?」
魔力を限界まで使ったせいで、剣を杖代わりにして立っているのがやっとのハジメくんが、ニョグダがいた場所を見つめながらそう言った。
そんなこと言うとニョグダが復活するんじゃ無いか?と少し身構えたけど、ニョグダが再び現れる事は無かった。
俺が対処しなくても世界の上書きも止まってるし、ニョグダを完全に倒せたという事だろう。
「ニョグダからの侵食も一切されなくなってるから、倒せた筈だよ」
それを聞いたハジメくんは良かったーと安堵した声を上げて、そのまま意識を失い倒れてしまった。
流石にそのまま地面に激突は可哀想なので、
キャッチしておんぶする。
「ほんとに全魔力を使ってって感じだったから、限界だったみたい。魔力が回復してくればそのうち起きるでしょう。それより早く外に出て、元通りにしないと」
ニョグダのせいで既に世界が上書きされてしまった場所はニョグダを倒したからって勝手に元に戻ったりしない。
俺が権能を使って、上書きされる前まで巻き戻す必要がある。
今ならフィアに上書きを無かったことにしてもらう事でも元に戻せるだろう。
休憩するにもお風呂に入ってしっかりしたベットで寝たい。
他の人も同じだったようで、すぐに帰る意見に反対する人はいなかったので、転移魔法で外に転移した。
「やっぱり結構な数の神話生物が外に放出されてたんだね」
外に出てきて1番に目に入ってきたのは、
ビヤーキー、ミ=ゴ、駆り立てる恐怖みたいな飛べるクトゥルフ神話生物と戦っている飛行船の姿だった。
やっぱりこいつらもニョグダを倒したからって消えないみたいだ。
「私はあっちの援護に行ってきましょう。アレを元通りにするのは任せました」
そう言ってアルさんは飛行船に向かって飛んで行った。
「こっちも早く終わらせて、合流しよう」
飛行船にはマルタとメルも乗ってるから。
と言っても少し傷が着いてるぐらいで、飛行船に大きな損傷は無さそうだから 、そこまで心配する必要は無いだろう。
アルさんも援護に行ったし。
逆行を使って上書きされる前まで巻き戻し始める。
半球ドーム状に形成されていた壁がドンドン小さくなり、最終的に消えて元通りになる。
後は残った神話生物を倒せば、長かった異世界の神関係の騒動は終わりだ。
長かった。ようやく安心して好きな事に集中出来る。
やることも終わったし、飛行船に向かって俺も手伝おうと思ってたけど、俺が到着した頃には全て終わっていた。
「アルさんが援護に行ったんだし、すぐに終わるのは当たり前か」
現在、飛行船の食堂スペースで軽食を食べている。
俺が飛行船に戻って異世界の神をちゃんと討伐した事を宣言したら、皆がいっせいに歓声
を上げてめちゃくちゃうるさかった。
それこそ寝ていたハジメくんがびっくりして
起きたぐらいだ。
フィアに「うるさいとか空気の読めないこと絶対言うなよ」って言われたけど、流石に分かってるよ?
他にもリアさんに無事でよかったです〜って泣きながら抱きつかれたり色々とあったけど割愛。
アルさんはもう私は必要無いでしょうと言って先に帰ってしまった。
なら俺もと帰ろうとしたんだけど、ハジメくんを筆頭に周りの人に全力で止められた。
異世界の神討伐成功の報告は既に国にしてあるので国中お祭り騒ぎらしい。
飛行船に乗ってるんだからこのまま3カ国の首都まで飛んで凱旋パレードをするらしい。
その時に俺がいないのはまずいんだって。
俺がいないぐらい皆、気づかないってと何度言っても納得してくれなかった。
なので首都に着くまで、軽食を食べてゆっくりしているのである。
「リンファス、オルフェナス、ソールシュルテンの順番だっけ?」
この向かう順番を決めるのも大変だった。
どこも1番目を譲ろうとしないからいつまで経っても決まらないし。
最終的に決まらないなら帰るよ?って言ったら10分も掛からずに決まったけど。
飛行船だとシャワーを浴びることは出来たけど、流石に湯船は無いのでゆっくり湯船に浸かることは出来ない。
早く帰って湯船に浸かって癒されたい。
それに凱旋パレードで甲板に出る時は精霊だとわかる状態でとか色々言われた。
その方が後々の面倒事が減るって言われたから、まぁ従うけど。
「後、10分程で王都上空に到着致しますので、ご準備の方よろしくお願いします」
そう兵士の人が伝えに来たので、甲板に移動して、予めここに立ってくださいと言われた位置につき、精霊化を使って姿を精霊よりに変更した。
王都上空にたどり着くと、地上から視認できる高さまで行動を下げて、王都上空をゆっくり何周かした。
その間ずっと笑顔で手を振り続けてた。
最後に城に向かって国王に戦勝の報告をしたんだけど、これは精霊王の強権でハジメくんにやらせた。
着陸した城の中庭で行う簡易的なものだったけど。
同じ事を2回繰り返しようやく開放された。
読んでいただきありがとうございます。
新作始めました。ダンジョンクリアして報酬にスキルを貰って強くなるお話です。
https://kakuyomu.jp/works/16816927859804684114
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます