第50話

「地上のお掃除して、何時になったら終わるんだろうってぐらい、ずっと襲ってくるティンダロスの猟犬を倒し続けてようやく襲撃も終わったから、じゃあ俺たちは先進むからとは言えないよなー」


何とか切り抜けたけど多国籍軍の人達は死傷者続出。

飛行船も飛べない程ダメージを受けたものは無いけど、それなりにダメージを受けてるのでメンテナンスが必要。

この状態を放置して先に進むのは流石に可哀想。


という事でけが人を治療して、野営地に魔物の襲撃が無いか見張りをしている。


「この辺りは1度一掃してるからそこまで魔物が来ることはないだろうけど、飛べるミ=ゴがいるし警戒は必要だよね」


フェムトに貰ったクジャタの肉を使ったビーフジャーキーを食べながら警戒を続ける。

飛行船のメンテナンスで結構大きい音も出てるからその音に反応してって事も有り得る。


「ティンダロスの猟犬を見た後なのによく普通にご飯食べれますね?俺は気持ち悪くて食欲わかないです」


一緒に見張りをしているハジメくんが呆れた顔をしながらそう言ってくる。


「食欲無くても食べないと、いざという時にお腹が空いて動けないなんて恥ずかしいよ?」


「それは確かに、でも食べるならビーフジャーキーじゃ無くてもっとあっさりしているものがいいです」



それもそうかと焚き火の上に鍋を置けるようにして鍋に水、ビーフジャーキーとはまた別の塩漬けして作った干し肉、気分で選んだ野菜を食べやすい大きさに切って鍋に入れて沸騰させる。

最後に胡椒を適当に振りかければ、干し肉の塩味が染み出してあっさりとした野菜スープの完成。

収納魔法が有るからもっとちゃんとしたものも作れるけど、冒険者っぽい料理も作ってみたかったからこれにしてみた。


「はい、これハジメくんの分ね」


お皿によそってハジメくんに手渡す。


「ありがとうございます。さっきまで食欲無かったですけど、いざ料理が出てくるとお腹も空いてたし普通に食欲がわいて来ました」


それは良かった。


それにしても暇だ。見張りが忙しいのはダメかもしれないけど。


アルさんはイスカが神獣化をもっとつかいこなせる様に少し見てあげるって言って、

山脈まで飛んでっちゃったし、他のみんなは、飛行船に積んでる物資の被害状況の確認手伝ってるから話し相手がハジメくんしかいない。


「さっきから、山が削れて行ってるんだけど何やってるんだあの二人は」


イスカが神獣化を使ってやってるんだろうけど、さっきから音がここまで聞こえてくるし、地面が揺れてるからもうちょっと加減してくれないかな?


「飛行船が帰る時に高度をあげなくて済むし良いんじゃ無いですか?」


山が無ければ高度を上げる必要は無いからねぇ。


まぁ、音につられてあっちに魔物が集まってくれれば、こっちに来る魔物も減るだろうし

いっか。

あそこまで行くのもあれだし。


そう思ってたけど、いくら音を出して場所がバレてると言ってもドンドン山が削れている場所に向かうような魔物はいなくて、寧ろ山から離れるために魔物が大勢こちらに逃げてきた。

おかげで暇じゃ無くなったけど後で文句言ってやろう。



イスカのせいで魔物がこっちに逃げて来たことを除けば他に問題は起きずに飛行船のメンテナンスが終わり、多国籍軍の人達は撤退を始めた。

ダメージが大きい飛行船は負傷者を乗せてリンファスに戻るらしい。

外の魔物に対処する戦力が減るけど仕方ないか。


「俺たちはもう一度ティンダロスの猟犬と戦わなきゃ行けないのか・・・」


匂いがキツいし、だからと言って速度重視でティンダロスの猟犬を無視して進むことも出来ない。どこまでも追っかけてくるから。


「それは仕方ないですよ。一日で通り抜けられる広さなだけ有難いと思いましょう」


確かにそれがせめてもの救いか。

後、多国籍軍全員に使ってた権能を維持する必要が無くなったから、ちょっと楽になった。


ティンダロスの猟犬は素材とか気にしないし、出てきた瞬間に魔法で瞬殺しながら早足で進む。

ティンダロスの猟犬ってこっちが魔法を使えれば、どこに出てくるか事前に教えてくれるし、すぐに動き出さないから割と倒しやすい。

思ってたほど脅威じゃ無かった。



「ここが最後の部屋で次に進む裂け目も見えてるけど、なんかデッカイのが陣取ってる」


ティンダロスの猟犬の王がいた気がするけど

それかな?ミゼーアだっけ。


「ちょっと試してみたいことが有るから、あれは私が倒して良いか?」


フィアの試してみたいこと?

ブラックホールとか共鳴とか意外とやらかしの多いフィアの試してみたいことって若干怖いんだけど・・・大丈夫?


そんな話をしている間、相手は待ってくれる訳もなくこちらに接近して鍵爪を振り下ろそうとしたが、振り上げた前足が消えた。

ミゼーアはバランスを崩して倒れてしまった。


「もっとガッツリいくつもりだったんだが

上手くいかないな、やっぱり魔法より制御が難しい」


魔法より制御が難しい?・・・まさか。


「フィア、権能使えるようになったの?」


「アルビオン様に少しコツを聞いたら使えるようになった」


まぁ、異世界の神と戦う前に戦力アップするのはいいことか。




読んでいただきありがとうございます。

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