第49話
「これは確かにこれでは軍で進むのは現実的じゃないです」
報告をした後、実際に裂け目の先に進んでもらい、確認をさせた。
実際に見せないと納得しない人もいるからね。
「なので軍の皆さんには外に戻ってもらって
魔法神の結界を壊して、外に出ようとしている魔物の掃討をお願いしたいんですよ。この先、異世界の神が嫌がらせで外に放出される魔物が増える可能性も考えられるので」
マギの結界が簡単に壊れるとは思わないけど、何かあってからじゃ遅いし。
「進むのが難しい以上それしかないですね」
それを聞いて今回は特に揉め事が起きずに済みそうだなと飛行船の撤退の準備を見てたんだけど、やっぱり面倒事が起きた。
「話を聞かずに先に進んでった集団がいると・・・」
その報告を聞いた時にイラッとしてちょっと殺気が漏れてしまった。
教えてくれた兵士の人は何もしてないのに、悪いことしたな。
「そいつらのせいで下手したら、多国籍軍全滅も有り得るんだけど、逃げ帰ってくる前に引き上げた方がいいと思うよ」
その集団が万が一ティンダロスの猟犬から逃げてここまで来てしまったら、ティンダロスの猟犬もセットで着いてくるからな。
「先に進んだ集団の一部が帰ってきました!どうやら遭遇した魔物にやられたらしく鉤爪で切り裂かれた様な傷を全身に負っていました」
どうやら遅かったみたい。まだその魔物がティンダロスの猟犬だと確定したわけじゃない。
俺も確認しないで帰ってきてるし。
「ちなみに傷口周りに膿みたいなものが付着してたりは?」
「確かに付着していました」
ならティンダロスの猟犬確定でいいだろう。
「全員、戦闘準備。近接戦闘はリスクが高い、遠距離で戦うように。それと魔力を纏った攻撃じゃないとダメージは入らないから注意しろ」
こう言う魔物が出てくる可能性が高いって説明はして有るけど念の為もう1回説明しておく。
「ディアーネさんは非戦闘員を守りに行って、ディアーネさん自体めっちゃ狙われる可能性も有るから注意して」
「私が狙われるんですか?」
「ティンダロスの猟犬が人間を襲うのは食事の為だ。しかも注射針みたいな舌を刺して精神体を吸収される。ティンダロスの猟犬は精神体が好物らしいから俺、フィア、ハジメくん、ディアーネさん、サリーさんは。普通の人間より美味しそうなご馳走に見えてるかも?」
それを聞いてディアーネさんが凄く嫌そうな顔をした。だが、非戦闘員の中にはリファーリアさんもいるので、ディアーネさんは直ぐに元の顔に戻って非戦闘員がいる区画へと向かっていった。
「ティンダロスの猟犬から逃げる方法は無い。諦めてくれるまで倒し続けるしか生き残る方法はないよ」
「ですが、ダンジョン風に言えばその魔物がいるのは下の階層です。階層を跨いで追ってくることは無いのでは?」
馬鹿な集団が帰ってきたと報告に来た兵士が警戒しすぎだといった感じでそう言った。
ティンダロスの猟犬にそんな常識通用する訳ないだろう?
ティンダロスの猟犬が匂いを覚えた人物が
飛行船に帰ってきてしまったのだから、奴らは必ずやってくる。
わざわざ、時間をかけて説明するのも面倒なので、その兵士は放置。
船内よりは戦いやすいだろう甲板に移動中の通路で酷い刺激臭を伴った腐臭が漂って来た。
どうやらお出ましのようだ。
通路の曲がり角から青黒い煙が噴出して、集まってティンダロスの猟犬の姿になった。
太く曲がりくねって鋭く伸びた注射針の様な舌を動かし、青みがかった脳漿の様なものを全身から滴らせながらこちらに近づいてくる。
ティンダロスの猟犬を観察したりするつもりもないので即、凍らせて粉々に砕いた。
「1匹だけで終わりっだったら良いな〜って思ってたけど、やっぱりそんな訳無いよね」
飛行船のあらゆる角から青黒い煙が噴出しだしている。
恐らく全ての飛行船で同じことが起きている。
救いようのないバカのせいでこのままじゃ大勢の死傷者が出てしまう。
更に、無理をする事になるけど仕方ない。
停止の権能を使って周辺の時間を止めた。
ティンダロスの猟犬なら時間停止とか耐性有りそうだったけど、ひとまず大丈夫そう。
「とりあえず、状況確認して連携を取れるようにしよう」
人間は動けるようにしてあるので、兵士に指示を出し、全員を甲板に誘導させた。
その間に今出現しているティンダロスの猟犬を討伐しておいた。
時間を止めてるから当然、通信用の魔道具も使えなかったので、俺が転移で直接飛行船に行って説明しなきゃ行けないのはすごい面倒だったけど。
「ティンダロスの猟犬相手に逃亡は無理。だからと言って船内で戦闘をするのは不利、じゃあ着陸させて地上で戦おうって言うのは
確かにその通りだと思うけど・・・」
地上には当然、元からこの空間にいたクトゥルフ神話生物達がうじゃうじゃいるので、
それの掃除を俺がやらなきゃ行けない。
馬鹿な集団への怒りをクトゥルフ神話生物達にぶつけてストレス発散をするコウだった。
読んでいただきありがとうございます。
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