第48話

「先行偵察となるとやっぱり私とコウくんになるんだね」


少数でもし敵に囲まれても問題ない戦闘力。

転移魔法も使えるんだから仕方ないとは思うけどね。


「それに加えて今回はシャルを連れて行こうと思うんですけど、ダメですか?」


万が一、俺の予想が当たって次が洞窟のような狭い階層だったら、探知能力に優れたシャルに先がどうなっているか調べてもらう必要がある。


「ディルフィーニの子だね。確かにディルフィーニの探知能力は優秀だし、連れていくのに賛成だよ」


アルさんは当然ディルフィーニを知っていた。

アルさんも賛成してくれたし今回はシャルも連れて行こう。


「って事でシャルも着いてきてくれる?」


同じ部屋にいるので聞こえているだろうけど大丈夫か確認する。


「勿論、その為に着いてきてるんだから。

何があってもコウと一緒なら大丈夫!」


正直、今の状態だとその期待に答えられない可能性も有るけど、アルさんもいるし大丈夫だろうきっと。


という訳で俺とシャルはアルさんの背中に乗って空に有る裂け目に向かっている。


「飛行船もやっぱりこのぐらいの速度は欲しいよね」


アルさんからしたら俺達も背中に乗ってるしだいぶ手加減した速度だろうけど、飛行船の何倍以上の速度が出ている。

アルさんを飛行船と比べるのは失礼かもしれないけど。


あっという間に空の裂け目まで到着したので、アルさんに人化して貰って小さくなってから中に進もうって言おうとしたら、アルさんがドラゴンの姿のまま裂け目に入ろうとする。


「ちょっと、アルさん!?」


だが、中に進もうとしたドラゴン姿のアルさんは裂け目の反対側にそのまま出てきた。


「どうやらコウくんの予想通りこの先は狭い空間になってるみたいね」


「どう言う事ですか?」


「空間に作用する魔法の特徴なんだけど、転移側に出れないようなサイズのものは転移出来ないの。一種の安全装置みたいなものよ」


石の中にいるとかを防ぐための効果って考えとけばいいかな。


「アルさんのサイズで入れないということは飛行船は絶対無理ですね」


サイズ的にはアルさんより飛行船の方がでかいからな。


「そういう事よ。じゃあこの先がどうなっているか確認させて貰いましょう」


人化して小さくなったアルさんが裂け目の中に入っていった。今度は反対側に出てきたりしていない。

どうやら先に進めたみたいだ。


「じゃあ俺たちも行こう」

シャルは自分で飛べないので俺が抱っこしてる状態だ。

裂け目の中に入っていった。


「何かの研究所?」


空に浮かぶ裂け目を通った先には、近未来的な研究所みたいな場所だった。

まさかの室内。

飛行船はわかってたけど絶対無理だし。

1万人以上の人が入るのも無理だろう。

今たっている通路だって2人横に並ぶのが精一杯の幅しかない。


「シャル、探知でこの先どうなってるかわかる?」


それは置いておいて先に周辺のマップ把握をしなくちゃ。


「通路と小部屋の繰り返しみたいですね。一本道なのに何故か何度も直角に曲がったりしています」


カクカクしています?通路が何回も直角に曲がっているって事か?一本道なのに?

距離感を狂わせるためか、もしくは単純に遅延行為?

・・・角がある事が重要だって事か。


クトゥルフ神話には120°以下の鋭角が存在すればどこからでも現れる神話生物がいる。

しかも1度匂いを覚えられると時間や次元を超えて逃げたとしても追いかけてくる。めちゃくちゃ厄介な神話生物だ。


しかも厄介なのは舌を使った攻撃をされると

精神体までダメージを受けることだ。

ぶっちゃけ半精霊の俺からしたら天敵と言ってもいい存在だろう。

今までは腕を切り飛ばされても半精神生命体

という分類なので魔力を消費すれば普通に新しい腕が生えてきてダメージは皆無だったけど。

今回は逆に危ないかも、進化してスピリット

ヒューマンになってるフィアとハジメくんも注意が必要だろう。


そんなめちゃくちゃ厄介な存在、ティンダロスの猟犬についてアルさんとシャル2人に説明する。


「ほかの攻撃も厄介だけど、舌を使った攻撃は絶対避けないと行けないって事だね。悪臭がするから不意打ちされることは無いのは良いのかもしれないけど・・・」


2人ともめっちゃ嫌そうな顔をしている。俺だってやだ。


「シャル、ゴールまで探知できてる?」


出来れば一日で通り抜けられる広さだとありがたい。

角が有ればティンダロスの猟犬はどこにでも現れるのでこの階層で休憩を取るのも難しいだろうから、1度も休憩せずに通り抜ける事になると思うので、出来るだけ短い方が良い。


「途中で分岐も無く、ずっと道なりに進むと大きな部屋に着くみたいなのでそこがゴールだと思います。普通に歩いて5時間ぐらいの距離だと思います」


願いが通じたのか、あまり広くなさそうだ。多国籍軍の人たちをどうするか相談も必要だし、今日は前の場所で休憩して、この階層は万全な状態で挑むべきだろう。

ティンダロスの猟犬に1度捕捉されてしまうと、撃退するか、こちらが死ぬまで追っかけてくるから、見つかる前に通ってきた裂け目を通ってさっきの階層に戻った。



読んでいただきありがとうございます。



新作始めました。ダンジョンクリアして報酬にスキルを貰って強くなるお話です。

https://kakuyomu.jp/works/16816927859804684114














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