第47話

飛行船の甲板で待機をしながら1時間ぐらいたっただろうか、山脈に近づいて来てミ=ゴ達もこちらに気がついたらしい。次々と飛行船に飛んできている。


向かってくるミ=ゴたちは一瞬で蒸発してしまって、何も出来てないけど。


何が起こっているのかと言うと、神獣アルビオンのアルさんが権能を使っている結果だ。

アルさんの権能は温度を自由に操れる物らしい。

今は近づいて来たミ=ゴの体温を急上昇させて文字通り蒸発させているという事だそうだ。


最初に聞いた時になにそのえげつない権能、こわ!?ってなった。

コウくんの権能ほど理不尽じゃないでしょ?

なんて言われたけど、俺はそんな事ないと思うけど。


「飛行船を1度停止して貰えるかしら?

ちょこちょこ倒すのは効率的じゃないから、一気に殲滅するつもりなんだけど、巻き込んじゃいそうだから」


わざわざ、一体づつミ=ゴの体温を急上昇させるのは面倒そうだもんな。

山脈周辺の気温を急上昇させればそれだけでミ=ゴは倒せるし。

多分それをやるつもりなんじゃ無いかな?


飛行船は全機、一時停止してアルさんが

ドラゴンの姿に戻って飛行船を巻き込まないように少し前に進む。

少しすると、山脈に変化が起き始めた。

山脈を包む氷や雪が溶け始め岩肌が露出しだす。

飛んでいるミ=ゴも殺虫剤をかけられた虫みたいにポトポト地面に落ち始めた。

アルさんの権能による気温上昇はこの程度で終わらない。

雪や氷だけでなく、岩も徐々に溶け始めてマグマが生成され始める。

ミ=ゴ達は自然発火し始めた。


今更だけどミ=ゴって炎に耐性無かったっけ?ミ=ゴじゃなくてミ=ゴが着けるバイオ装甲に耐性が有るんだっけ?

でもバイオ装甲っぽい薄く光る粘液を身に纏ってるミ=ゴも自然発火して燃えてるんだよね。

それだけアルさんの権能が凄まじいという事だろう。


ミ=ゴが全滅する頃には山脈にあった氷や雪は完全になくなり、岩が溶けてできたマグマが下に向かって流れている。

目に前の山は活火山です。と言われたら信じてしまう光景だ。


これでも、見ている人が理解しやすいようにゆっくり段階的に気温を上げてるからな。

その気になれば一瞬で目の前の光景以上の惨状を簡単に引き起こせるだろう。


その気になれば片手間で世界を滅ぼせるのが神獣なんだから。


「これで邪魔者は排除出来ました。

待たせて悪かったわね、温度はしっかり下げておいたから。飛行船が山脈に近づいても何も起きないわ」


目の前の光景が理解できなくて固まっていた兵士達がアルさんの声で正気に戻り、バタバタと動きだした。


「凄い便利ですね、その権能」


「確かに便利だけど、コウくんなら温度を上げることは無理でも、下げることは出来ちゃうでしょ?」


それはまぁ水の精霊王ですし、寧ろ出来なかったら大変だから。


「それに加えてなんでも停止させちゃう権能に、対象の時間を巻き戻す権能。神だって裸足で逃げ出す理不尽さよ」


確かに、ゲームでそんな能力持った敵が出てきたらはい、クソゲーって言ってコントローラー投げてたかもしれないけど・・・。


俺自身まだ能力を使いこなせてないからまだまだだと思ってる。


模倣で俺の権能をコピーした、フェムトの方が停止も逆行も使いこなしてるからね。


ホント、いつかフェムトをギャフンと言わせてみたい。


「恐らく裂け目まで、大きな戦闘は無いだろうし、俺らは船室に引っ込んでますか」


ミ=ゴはもしいたとしても山脈を離れていた極小数しかいないと思うから、もし戦闘になっても俺らは必要ないだろう。

せっかく人がいっぱいいるんだから休める時に休んでおかないと。


「それにしても、もう少し速度が出てくれると良いんだけどな〜」


この飛行船は全速力で時速100kmぐらいしか出ない。

別に遅くはないけど、ここから戦闘なしでも裂け目まで5時間ぐらいかかるってなると少しでも早くならないかなって考えてしまう。


「普通は空を飛ぶ乗り物と言うだけで、大発明なんだ。遅いわけじゃないしこれ以上の性能を求めるのも酷だろう」


飛行機どころか車もまだない世界で空を飛ぶ乗り物を発明したとなれば、それはもう大発明と言われて当然だろう。

確かにこれ以上を求めるのは酷か。

でも作ったの日本人だし、チートスキル貰ってるんだから、もうちょっと早く出来たんじゃ無いかなって。


「5時間俺がなにかする訳でもないし、別にいっか。人数いるしUNOしようUNO」


ダンジョンでUNOとかトランプで遊んでた時、俺だけ参加出来なかったから。

俺も遊びたかったから時間がかかるのは丁度良かったかも知れない。


と思ってたんだけど、流石にこの状況で遊ぶのはまずいだろと俺の提案は却下。

裂け目の近くに着くまでふて寝して過ごした。


空の裂け目まで飛行船で1時間ぐらいのところで、確認しておきたいことが出来たので、操縦室に向かう。


「やっぱり、飛行船でそのまま突入する予定だったか。ふと、思っちゃったんだけど、もしあの裂け目の先が洞窟だったら大変なことにならないって思って確認に来たんだ」


可能性が無いわけじゃないという事で、また俺とアルさんの2人で先行偵察しに行くことになった。




読んでいただきありがとうございます。





新作始めました。ダンジョンクリアして報酬にスキルを貰って強くなるお話です。

https://kakuyomu.jp/works/16816927859804684114












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