第27話


「うぅ、酷い目にあった」


「それはこっちのセリフです。まさか時速500kmのままで急上昇、急降下するとか」


ここまでずっと飛んで移動してきたけど、いまは歩きで移動している。


魔物が全く出てこなくなったし、下へ進む階段が有るだろうオアシスとその番人である、

巨大な蛇を見つけたからだ。


「ほら、二人ともいつまでもグチグチ言ってないで集中しなさい。もう相手もこっちに気づいてるんだから」


まだ1キロ以上離れてるのにしゃァ〜って威嚇音が聞こえてくる。尻尾もめっちゃ振って警戒してる。


「見た目は普通の蛇だよね。馬鹿でかいけど」


ほんとに大した特徴はなく、アオダイショウをそのまま巨大化させたような・・・でもなんか嫌な予感するんだよね。

異世界小説だと透明になって魔力感知も躱して、攻撃してくる蛇が定番だったりするよね。


そう思い何気なく霧を操って物を感知するミストソナーを使うと、レイラさんを丸呑みにしようとする、蛇を感知した。


「まじで透明になってやがった!」


すぐに氷漬けにして氷の刃で首を落とした。


「いきなり何が!」


俺以外は全員何が起きたか理解出来ていないみたい。俺もギリギリまで気づかなかったんだけど。


「蛇とオアシスも消えていく・・・もしかしてあれは幻覚で本物は透明になって迫ってきてたという事ですか!全員の感知を掻い潜って」


気配や魔力を全く感じなかったからね。

透明になってただけで物体として存在はするからミストソナーは騙せなかったみたいだけど。


「私、コウさんが気づくのあと少しでも遅かったら食べられてましたよね?」


レイラさんが1番ビビってる、しょうがないと思うけど、まじで食われる3秒前みたいな感じだったから。


「ただ、透明になるだけではなく、幻覚で代わりの蛇まで用意するか・・・やっぱり蛇系の魔物は厄介だ」



あっさり倒したけど、今までで1番ピンチだったのは間違いない。

下手しなくてもレイラさんが死んでたかもしれない。


さっきまで威嚇していた蛇どころかオアシスさえも幻覚だった。

蛇の魔物を倒したらまた何も無い砂漠に戻っていた。


「階段だけは、幻覚じゃなかったみたいだ」


ただ洞窟の入口のようなものがぽつんとあって中を見ると下へ進む階段があった。


「ところでこの魔物の名前知ってる人いる?」


今までも、フィアたちも見たことも聞いたこともない魔物が多かったので、こいつもそうかもしれないけど、一応確認しておく。


「エルフに伝わる古いおとぎ話にアペプと言う蛇の魔物が出てくる物があるんですけど、能力が全く同じなんです。ですがその物語ではアペプは森で幻覚を見せて騙されたエルフを食べるといった感じだったので、砂漠にいる以上別物かもしれませんが」


「でも、そのアペプって言うのが1番近いかもね、アペプ亜種とか?それよりちょっと心配なのはこのアペプの皮を使えば姿を消すローブとか出来ちゃったりしない?

もし、それが出回ったら問題になりそうだよね」


透明化する魔道具を帝国が開発して使ってきた時は本当に厄介だった。


皮は焼いて消し炭にした方がいいかも知れない。

ほとんどの人がその意見に賛成してくれたけど、1人だけ待って欲しいという人がいた、

錬金術師のフィロさんである。


「錬金術師としては、皮にどんな効果があるかしっかり調べたいです。もしかしたら透明化に対抗する方法が分かるかもしれないですし」


透明化したアペプに気づけたのは俺だけだし、透明化に対抗する方法と言うのは結構重要だと思う。


(アペプの皮だけじゃ完全に透明になったり出来ないよ。せいぜい止まっている間気配を薄くする程度かな、それも1歩でも動けば意味なくなるし)


悩んでいるとフェムトから連絡が入った。

フェムトがそう言うなら大丈夫かな。


(アペプの皮だけじゃって事はほかの素材を組み合わせれば透明化出来る物が作れるってこと?)


(それは勿論、実際帝国は完全に透明化する魔道具を持ってたじゃん。まぁ帝国が開発したんじゃなくて、異世界の神が用意したものだろうけど)


そうだった。今はそれを押収したリンファスがその魔道具を所持してるんだよな。

悪用はしないと信じてるけど。


(ありがとうフェムト)


(どういたしまして。後、アペプは食べれるよ〜)


確かに食べれるか気になってはいたけど・・・

フェムトが寂しいって言ってたけど、俺もそろそろフェムトに会いたくなってきたな。

なんかフェムトが膝の上にいない方が違和感感じるようになって来ちゃったな〜。


「アペプの皮だけじゃ止まってる間気配を薄くするぐらいのローブしか作れないってフェムトから連絡きた。後、食べれるらしい」


「皮がそこ迄の危険物じゃないことがわかったのは良かったが、食べれるか食べれないかは必要なのか?」


フィアにそんな事を言われてしまった。

俺から聞いた訳じゃ無いからね?


「じゃあフィアは食べない?」


「それとこれとは話が別だ」


魔物の肉は食べれる肉ならランクが高い魔物の方が美味しいって言われてるからね。

(ランクが高くても不味い肉はある。巨人系とか)


アペプの皮は廃棄せずにフィロさんに渡すことになった。

そんな感じの話を話をしながら階段を降りて5層を確認するとシダ植物の生い茂る原生林が広がっていた。




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