第4話
「思ったよりアッサリ許可がでたな。私はかわりに新しい魔法の適正ぐらい寄越せって言われると思ってたのに」
俺ってそんな風に思われてんの!?
寧ろ、対価を要求したことの方が少ない筈なんだけど。
「いやいや、そんなこと全然考えて無かったですよ?」
「そうみたいだな。じゃあ早速例の魔法を見せてくれ」
攻撃魔法じゃないし、このまま食堂でやっても良いかな?とも思ったけど一応、魔法を使うのだから中庭で実演する事にした。
「まず、相手がいなくても使える身体強化からやりますね」
身体強化は割と使う頻度が高く使い慣れているのでサッと使用する。
「ほぅこれが。確かに身体能力が強化されてるな。実際に動いて見てくれ」
指示通りに反復横跳びしたり垂直跳びしたりしてマギに観察されながら運動をした。
「なるほどねぇ〜。なんとなく理解出来た。直ぐに詠唱魔法化しても良いけど、回復の方も見せてもらってからにしよう。早くそっちも見せてくれ」
回復魔法を使うには怪我してる人がいないとできないんだけど、使用人でちょうどよく怪我をしている人いるかな?
「あ〜、回復魔法なんだから怪我している相手がいないと使えないよな」
そう言って自分の左腕をいつの間にか右手に持っていた短剣で斬って、左腕をこちらに向けてきた。
「ほい。これで回復魔法使えるだろう」
まじかよ。実験の為なら自らも実験台にするとか。
しかも浅く斬ったとかじゃなくて、結構深く斬ってるし、具体的には骨が見えちゃってるぐらい。
見ているこっちが痛く感じてきた。
早く治そう。
「ササッと治しちゃいますね〜」
怪我している部分を魔法で生み出した水で包み込んで回復魔法を発動する。
光魔法と少し違い一瞬で治るんじゃなくて、
徐々に傷が塞がっていく。
「お〜ほんとに水属性の魔法で回復したぞ!もう1回見てみたいからまたやってくれ」
そう言ってマギはまた左腕を傷つけた。
まじでマッドサイエンティスト。
このあとも回復してはもう一度見たいとマギが自傷してその傷を回復させてを繰り返した。
「よ〜し詠唱魔法化するから少し待っててくれ」
やっと終わったか、付き合うとは言ったけど
回復魔法を見るために自傷してそれを何度も治してって言うのは精神的にくる。
マギは地面に座り込んでブツブツ言いながら見せた魔法の詠唱魔法化を始めたので、その場で詠唱魔法化が終わるのを待ってるのも良いけど、いつ終わるかも分からないので屋敷の中に戻って待つことにした。
「で、1人で中に戻って来たんですね。何も知らない人がその状態のマギ様を見たら、だいぶホラーですよ?大丈夫ですか?」
使用人からしたら、あったこと無い人が中庭に1人でブツブツ言いながらなにかしている光景って…確かにホラーだ。
「誰かが中庭に通らないように願っておくよ」
「まぁこの屋敷じゃ色々起きるのが当たり前って、使用人も思ってますし大丈夫だと思いますよ」
何それ?この屋敷、面白屋敷だと思われてんの?
「それならそれで良いや、マギの詠唱魔法化が終わるまで暇だから、お茶でも飲もうかなって思って」
「分かりました。お茶をお持ちしますね」
ディアーネさんがお茶を持ってくるのを待っていたらフィア達が帰ってきた。
「おかえり〜」
「ただいま、コウ。体調はもう大丈夫みたいで安心した。暇なら、会議で決まったことを説明したいんだが大丈夫か?」
マギの無詠唱魔法の詠唱魔法化は多分時間がかかるだろうし、もし想像より早く終わったとしてもちょっと待って貰えばいいだろう。
それにフィア達の説明もそんなに長くならないと思うし問題ないだろう。
「大丈夫だよ。このまま緩い感じで聞くので大丈夫?もっと真面目な感じが良かったら場所も変えてしっかりやるけど」
「説明と言ってもエステル様とマギ様が例の半球ドームの中に入っても影響が出ないようする装備を作るまで待機。装備が行き渡り次第、足並み揃えて突入と言う事だけでだから会議で決まった事の説明はもう終わりだ」
凄い簡潔に纏まってる。
指示系統はどうするのか、自分の派閥の戦力を少しでも多くしようとする貴族達の論戦があったり、決まった事はこれだけでも会議は大変だったろうに。
「わざわざ面倒臭い会議出席ご苦労さま。
でも、この話ってリンファスとオルフェナス2カ国のみの話だよね。話が世界規模になっちゃったし、他の国はどうするの?」
「エルフの国はさっき迄の会議に大使が出席していて今頃、本国に報告をあげている事だろう。コウがいるからエルフの国は問題ないと思う」
エルフの国と関わりなんて大使の妻が暗殺されそうだったのを助けたぐらいで、ほぼ関わりないけど。
なんで俺がいるとエルフの国は問題ないって言えるの?
「水と風の精霊王はエルフからしたら神と同じく信仰対象だ。元々エルフは水と風の精霊と親和性が高い種族でもあるからな。エルフの妻が1人増えるぐらいの覚悟は今からしておいた方がいい」
俺の意思関係なく、ドンドン奥さんが増えていくなと思うコウだった。
読んでいただきありがとうございます。
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