集団転移に巻き込まれました、当然チートスキルは無しです。神様がお詫びに種族を変えてくれたけどこっちの方がチートじゃないですか？

第5話

「試合初め！」

レフリーの合図で試合が始まった。

「あんなゴミ素手で触りたくないし、まぁこれでじゅうぶんでしょう」

イスカが手刀を男のいる方に向かって無造作に振り抜いた。

普通は何も起こらない意味不明な行動なんだけど、身体能力だけなら俺より高いイスカすると本当に切れるしかも10m先ぐらいまで。今回はちゃんと手加減をしたらしく、男が真っ二つになったのと、男の近くの地面に深い切れ込みが出来ただけで済んだ。

ちなみに手刀の動きが早すぎてエステルさんや俺らぐらいしかイスカの動きは見えなかったと思う。

普通の人達からは初めの合図がなって少ししたら突然男が真っ二つになったと言う事しかわかってないと思う。

「問題はこっからだよね」

男の死体が光となって消えて、闘技場のフィールド外に転移する。

普通はこの時に試合で負った傷が回復する。

死んだとしても無かったことになるが…｡

フィールド外に現れたのは真っ二つになったままの男だった。

まぁそうだよね〜。だってイスカがどんな権能を使ったのか知らないけど、闘技場の試合が終われば傷が治る、試合で死んでも生き返るってシステムだけ機能しなくなってるもん。

ちょくちょくフェムトに錬金術について教えて貰っているので魔道具の勉強もしている。

その時に魔道具の効果を鑑定できるようになったんだけど、その効果だけ破損中になってた。

でも貴族たちはそうでは無かったようでパニックになってる。

やっぱり信じてなかったみたい。

「陛下これは明確な犯罪行為です。殺人ですよ！」

1人の貴族がこちらを睨みながら国王にギャーギャー何か言っている。

「黙りなさい。私はそのまま続けていいと言ったはずです。それに生き残ったとしても神罰を下すと。信じてなかったんですか？」

エステルさんの言葉に騒いでいた貴族が黙る。

「私、今回の件で学んだんですよ。やっぱり優しく甘やかすだけじゃダメなんだなって。ホントならコウさんはわざわざこんな事しないで帝都に行っても問題ないのに、気を使ってこんな事までしてくれているのに、そんなのお構い無しに言いたい放題。ノーライフキング以前にコウさんの事を怒らせて人間界を滅ぼされたいんですか？彼ならその程度、片手間出来るんですよ？私はコウさんが来る前に言いましたよね？別に敬ったり絶対服従する必要は無いけど、普通に接しなさいって、貴方たちの普通はいまさっき迄の態度なんですか？正直人類に幻滅しました」

なんかエステルさん闇堕ちしかけてない？

「最後にもう一度だけチャンスをあげますのでこれ以上幻滅させないでください。

それでも、もし変わらないようだったら私が人間界を終わらせます」

エステルさんってやっぱり普段は優しくて常識人、滅多に怒ることなんて無いけど、だからこそ怒らせた時の反動がヤバい人だ。

我慢してたのが一気に溢れ出た感じ。

まぁバカ騒ぎしていた貴族たちはエステルさんを怒らせたってことでお先真っ暗だけど、俺は関係ない自業自得だし。

「幸い試合が一瞬で終わったのでくだらない事をやっていても時間は予定より早いですが早く次の試合に行きましょう。次はオフィーリアさんとハジメさんの試合でしたね。準備もできているみたいですし、早く始めてしまいましょう」

流石にハジメくんが死ぬのはトバッチリすぎると思ったので権能の逆行を使ってイスカが壊す前の闘技場に戻しておいた。

これで闘技場も元通り。

フィアと入れ違いでイスカが帰ってきた。

「まさかあんなゴミ処理をさせられるとは思ってなかったです」

帰ってくるなりリンファスの貴族に殺気を向けている。

すんげー機嫌が悪い。

「あの人たちは、もうエステルさんにお説教されたあとだからほおっておけばいいよ。

こっちがわざわざ相手してやる必要なんて無いんだから」

「それもそうですね。フィアさんの試合が始まりますし、そっちに集中することにします。私も勇者と試合したかったです」

今回試合する相手ならハジメくんがいちばん強いだろうし、強い相手と戦うのが比較的好きなイスカならやっぱりそう思うよね。

「まぁ、今度頼んで試合してもらえばいいじゃん」

「そう言えば、コウさんと勇者はご同郷でしたっけ。それならコウさんに頼んでもらえばいつでも試合が出来ますね」

ハジメくんが受けてくれるかは別の問題だけど、ちょっと機嫌直ったし黙っておこう。

「彼女もハジメと同じ進化したスピリットヒューマンよ。油断しちゃダメだからね！」

ハジメくんの横に突然光の精霊が現れた。

多分、上位精霊かな？ディアーネさんよりは

強くなさそうだけど。

どうやらハジメくんは光の上位精霊と契約してるし、フィアと同じスピリットヒューマンに進化しているらしい。

「そこまで警戒する必要は無いぞ。イスカみたいに手刀で真っ二つとかそんな器用な事出来ないし、闘技場の効果を無効化することも出来ない。伝説の海竜でも無ければ、精霊の血が流れてる訳でもない、普通の人間だからな」

言ってる事は何一つ間違ってないけど、

普通の人間ではないと思うよ？

読んでいただきありがとうございます。