第54話

「そう言えばここにある建物は誰が建ててるんですか?」


ここにある建物どれも立派な創りをしていて

人間界にいたら貴族から建築の注文が入るレベルの腕を持ってると思う。


「屋台とかは違いますが建物は基本、私が建ててます。土属性の魔法を使えば簡単に建てられますから」


土属性の魔法が有るからって簡単に家を建てられる訳じゃない筈なんだけど。


俺もフロンで屋敷を建てて貰う時に魔法が有るんだから、魔法で簡単に立てられちゃうのかな?って思ってたけど、土属性の魔法でレンガを作ったり、この世界にセメントは無いのでレンガどうしを結合させるのに使うぐらいで他は殆ど人力で建築をしていた。


と言うのも、詠唱魔法に家を建てる魔法はないし、かりに無詠唱で土属性の魔法を使えたとしても家を建てるとなると、相当正確にイメージが出来ていないと、細部が歪んでいたり、床や壁が薄くなってしまったりというのが頻繁に起きるらしい。真四角でなんの装飾もない豆腐ハウスなら出来るけど、普通の家を土属性の魔法だけで作るのは現実的じゃないって教えて貰った。


それにティアナさんどれだけ魔法適正あるんだろう?


「ふと気になったんですけどティアナさんってどれだけ魔法適正あるんですか?」


「適正自体は水属性だけですよ」


「でも、色々な魔法使ってますよね?」


「人間に広まった詠唱魔法は適性がないと使えませんが、無詠唱魔法なら適正がなくとも使えるようになりますよ。当然、適性がないので習得は大変ですが、具体的に言うと、火属性に適正が無い人が10年やってこぶしサイズの火が出せるようになれば良い方です」


普通の人間からしたらそれだけの為に10年費すのは難しいかな。そもそも無詠唱魔法を使えるだけで凄いって言われてるし、こぶしサイズの火が出せるようになれば良い方って言ってたから、指先から火が出せるようになったぐらいの可能性もある訳でしょ?しかも10年もやって、それなら適正のある属性の無詠唱を使えるように練習する方がよっぽど有意義だと思う。


詠唱魔法が適正のある属性しか使えないのは当然だと思う。だってそうじゃなきゃ全人類

呪文を詠唱すれば、全属性魔法が使えるようになっちゃうし。


「なんで詠唱魔法なんて作っちゃったの?

これが有るから、魔力操作の練習をしなくなって無詠唱魔法を使える人が希少になっちゃったんじゃないの?」


「その昔、今回問題を起こした人間界の管理神の前任者の魔法神が魔物に対抗出来るよう魔法を使えるようにしてあげたんだけど、今で言う無詠唱魔法を直ぐに使いこなせるわけもなくこのままじゃ人類滅びるんじゃね?

ってなったから詠唱魔法を新しく作って人間に使えるようにしてあげたんだよ」


それでそのまま詠唱魔法の方が主流になっているって事か。

それなら仕方ないのかな?


「無詠唱魔法の方が応用が利いて色々できるから、時間が経てば無詠唱魔法の方が流行るだろうって思ってたらしいけど、詠唱魔法じゃ魔力制御が鍛えられないからね」


俺が教えるまでは、同じ詠唱魔法を使い続けているとその魔法が無詠唱で使える様になるって言われてたからね。


「ねぇ、もし魔力制御の練習ができる魔道具を作って練習して貰ったらどれぐらいの人が無詠唱が使えるようになると思う?」


「少し増えるぐらいかな?ちょっと魔力制御が出来るようになったぐらいじゃ無詠唱魔法は使えないし」


「フィアもマルタもあっさり出来るようになったよ?」


「マルタちゃんはホムラの血が流れてるから補正が掛かるし、理解さえしちゃえば簡単だよ。フィアちゃんは天才だから」


そういえば、精霊って魔法特化で魔法制御に補正がかかるとかあったな。


フィアは天才だからって…まぁ実際その通りだと思う。


まぁあの二人を基準に考えるのはダメって言うのは分かった。

少しでも増えるなら試してみるのもありかな?


それに無詠唱魔法なら適正無しでも訓練次第で使えるようになるのか…。

念動魔法便利そうで良いなぁって思ってたんだよね。


手の上に収納魔法から取り出したお皿をおいて、お皿に魔力を込めて宙に浮かせるイメージをする。あれ?成功しそうな気がする。

そのまま魔法を使って見ると、お皿が手の上から1cm程浮かんだ。


「いくら天才って言われても、コウと一緒にいると自分が唯の凡人に思えてくるな。

そのおかげで天狗にならずに、すんで良いとも言えるが」


「あれは天才じゃなくて、理不尽の塊だから比べちゃダメだよ。まぁ一般人からしたらフィアちゃんもじゅうぶん理不尽だけど」


言いたいことは分かるけど

フェムトとみたいな理不尽そのもの

みたいなやつに言われたくない。


「完全にどんぐりの背比べですね。いとも簡単に適正の無い魔法を発動させるとは流石に思いませんでした」


「発動したって言ってもこれが限界だし、これ以外の魔法が使えないぐらい集中してようやくだよ?」


グリンカムビ達のように自由に動かしたりなんか到底出来そうにない。


「本来、5年ぐらいかけて発動すれば早い方ですからね?」


「そう言えば住居探しをしてる途中だったね。ティアナさんが直々に案内してくれるって言ってたのに話を脱線させてしまい申し訳ないです」


これ以上何言っても無理だと思うので多少強引でも話を変えよう。


「コウ流石にそれは無理やり過ぎると思うよ」



読んでいただきありがとうございます。

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