第46話
ルージュの実力を確認した次の日、予定通り獣王国に来て、メルの兄で獣王のアウルスさんに会いに来た。
久しぶりに会ったアウルスさんは目の下に
クマができていてとても疲れているみたいだ。
「お兄様、目の下にクマなんか作って、そんなに忙しいんですか?」
「まだ帝国戦争の復興も終わってないし、落ち目とはいえ、私が王になったことを未だに反発する勢力もいます。かといって今の情勢だと国内のことばかりに集中する訳には行かないですし……それと帝国に対して傭兵国が侵略戦争を仕掛けたみたいですが。結果は傭兵国の惨敗、戦争に参加した傭兵国の兵士は全滅らしいです。後、帝国は全ての帝国民を帝都に人を集めていると言う情報も入ってきてます。実際、帝国の国境警備隊が引き上げています。国境近くの村も調査させたらもぬけの殻になっていました」
俺の知らないところで知らない国が帝国に戦争吹っ掛けてぼろ負けしたのは正直どうでもいいけど、帝都に人を集めてるっていうのは少し気になる。
徴兵してもう一度リンファスかオルフェナスに戦争を仕掛けるつもりか?
徴兵なら若い男しか連れていかないだろう。
もぬけの殻ってことは年齢性別関係なしに全員帝都に連れていってるってことだよな。
一体、何を考えてる?
「帝国がなにか企んで居そうですね」
「そうなんです。大人しくしていてくれれば良いのに……。それに帝都に人が集まってるなら、領土を切り取るチャンスだと言い出す貴族も大勢いて、傭兵国の二の舞になりたいのか?と言っても我々は奴らとは違うと言っても話を聞かないし、どうやらコウ様を戦力として見ている貴族もいるようで…」
成程、そこら辺俺のスタンスをしっかり伝えておいた方が良いな。
「俺は防衛戦のみ力を貸します。侵略戦争は勿論、防衛戦後の逆侵攻にも手を貸しません。但し神からの要請があった場合はその限りではないです。俺が直接、戦争を吹っかけられた場合も当然やりたい放題します。
一言で言えば手を貸す時は防衛戦しかしないよーって事ですね」
長ったらしく行ったけど最後の一言だけで十分だったな。
「ですよね。…その1つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「良いですよ。どうしたんですか?」
「そのコウ様の膝の上で寝ているのはドラゴンですよね?」
まぁ何となくこの質問だろうなとは思ってた。
話してる間もチラチラルージュの事見てたもん。
「ルージュ ハ ドラゴン ダヨ!」
俺じゃなくてルージュが直接答えたのでアウルスさんや護衛の人達がみんな驚いていた。
人の言葉を喋るドラゴンなんて人間界じゃ
普通会う機会ないもんね。精霊界にはわんさかいるけど。
「喋るドラゴンに初めて会いました。その子は大分小さいですが子供なのですか?」
「建物内に一緒に入る為に魔法で小さくなってるんです。実際は5mぐらいあります」
「アルジ コノヒトタチニ ルージュノジツリョクミセル」
人間界にいる時は自由にどっか行ったりするのは禁止してるから、どこにも行かないけど
ずっと座って話してるから飽きて動き回りたいんだろうな。
「ルージュがそう言っているんですがいかがですか?」
「是非お願いしたい。場所は城の訓練場で大丈夫だろうか?」
ルージュがするのは自分を弾丸にして敵に高速で突っ込むだけだから、訓練場でじゅうぶんだろう。的は俺が用意してあげればいい。
「では、訓練場へ移動しましょう」
ルージュが言って突然始まってしまったことだけど、アウルスさんの気分転換にもなるだろうし、案外良かったのかもしれない。
「ここが訓練場です」
中々広い訓練場だ外周を走っていたり、模擬戦をしていたり、剣の素振りをしていたりと大分活気がある。
そんなに場所に獣王のアウルスさんと一緒に入っていくんだから当然注目される。
みんな俺に気づいた瞬間目を逸らすけど。
俺どう思われてるんだろう?
やっと体を動かせると嬉しそうに近くを飛び回っているルージュも当然注目されている。
訓練をしている人には申し訳ないけど、ちょっと移動して場所を確保してもらった。
そこに縦横2mぐらいの氷の壁を作った。
硬さは調節したのでルージュなら貫通出来るだろう。
アウルスさん達に氷の硬さを確認してもらっておいた方が良いかな?
「アウルスさん、ルージュにこの氷の壁を攻撃してもらうんですけど先に氷の硬さを確認してもらっていいですか?」
「なるほど、今、訓練場にいる者達でもし氷を傷つけれる者がいた場合私自ら褒美をさずけよう。制限時間は今から30分だ!」
それを聞いて訓練場にいた人たちは30分間全身全霊で氷の壁に向かって攻撃してたけど
傷1つつかなかった。
「壊せとは言わないけど、傷も付けられないとはコウさんかなり手加減して氷の壁を作っていますよね?1回私が壊していいですか?」
メルが突然そんな事を言い出した。
メルが攻撃したら一撃で壊れるぐらいの強度しかないけど、もう1回作れば良いだけだからいっか。メルにもなにか考えが有るんだろう。
「良いよ。もう1回作ればいいだけだから」
「ありがとうございます」
メルがそう言った後、氷の壁を1発殴った。
結果、氷の壁ヒビが入ってバラバラに砕けた。
「私でもこれぐらい出来るんですよ?」
メルがアウルスさん達の方を向いてそう言ったけど、皆驚き過ぎて誰も返事をしなかった。
読んでいただきありがとうございます。
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