第7話
国王に自由に転移に使っていいと許可を貰っている王城の一室に転移してきて、久しぶりに帰ってきたな、フィアの妊娠もあるしフロンにもその内顔を出さないとなーと考えていると、ドアが突然開いて廊下には掃除道具を持ったメイドさんが立っていた。
「えっ!部屋に人がいます!」
俺が転移をするために用意してくれた部屋なので、基本無人の部屋に突然人がいたから驚かせてしまったみたいだ。
「驚かせてしまったみたいで申し訳ない。
悪いけど国王陛下にコウが来たと伝えて貰って良いかな?」
「分かりました!」
そう言ってメイドさんは掃除道具を持って走っていった。
狙った訳じゃないけど若干申し訳ない気分になる。
そもそも、掃除の時間にピッタリって運がいいのか悪いのか、掃除中じゃなかったので運が良かったと思っておこう。
ソファーに座って待ってると予想よりだいぶ早くメイドさんが帰ってきた。
ただ連れてきたのは国王ではなく、メイド長のサリアさんだった。
「陛下が執務室まで来て欲しいとの事でしたのでお迎えに上がりました」
「分かりました。案内お願いします」
一瞬国王がここに来れない程忙しいのかな?って思ったけど、充分綺麗だとは思うけどまだ掃除をしてない部屋に国王を連れてくるのは不味いってことだろうなと個人的に解釈した。さっきのメイドさんまだ掃除道具持ってるし。
「サリアさんパッと見上級貴族らしき人まで端に寄って道を開けてくれるのはいいんだけど、なんでみんな目が合わないように必死に目を逸らしてくるの?リンファスではそんなに暴れてないはずなんですけど」
「獣王国で大暴れした話はリンファス王国でも有名です、コウ様と親しい方も少ないのもあって貴族からは恐れられてますよ」
話を聞いただけでここまでなるものなんだろうか?大体こういうのって俺は大丈夫って思ってる奴とか、そんなの冗談に決まってると決め込んだ奴が逆に突っかかって来るものだと思うけど。
「そういうのって逆に突っかかってくるバカが大抵いると思うんですけど今回はいないなーと思って」
「それはコウ様が精霊王だと広まったのと同時期にホムラ様も表に出て精霊王だと隠さなくなったのです。コウ様が言ったような貴族の方はその時にホムラ様の怒りに触れて文字通り灰すら残らず消滅しましたので」
「つまり、ホムラが暴れたせいで同じ精霊王の俺も下手に関わると不味いと思われてるってことかな」
「ホムラ様の1件で獣王国での話が嘘じゃないと理解したと言うのが正しいと思いますよ」
まあこのままで問題あるかといえば別にそんな事ないし、変な貴族に絡まれなくなったって考えればいっか。
「陛下コウ様をお連れ致しました」
もう執務室に着いていたらしい。
扉が別の部屋の扉と変わらなかったから分からなかった、扉の横で警護してる騎士もいないし。
そんなことを考えていたら返事が帰ってくる前にサリアさんが扉を開けて中にどうぞと言われた。
良いのかなこれ?怒られる事はないだろうし別にいっか。
特に考えるのを止めて大人しく中に入ることにした。
「折角来てくれたのに、執務室に呼び出すようなかたちになってしまい申し訳ない。私が迎えに行くと言っているのに、この男が許してくれなくてな」
国王は執務室で山積みになった書類を確認しながら挨拶された。
国王もこれぐらいじゃ俺が怒らないってわかってるからやってるよね?まあ良いや。
国の為にせっせと働いてもらおう。
それと国王の後ろにいる人は確か宰相だっったかな。直接話したことは無いけどどっかで説明された気がする。
「気にしないでください。今日の目的はマルタに会いに来るのが主目的なので、陛下はそのまま書類の確認をしていてください」
「いや、たとえ挨拶程度だったとしても、しっかりと挨拶をしないといけないだろう。
今の状態だって不敬と捉えられて、リンファス王国には今後一生雨が降らないように
なっても可笑しくないのだ。そうだ、この非礼を詫びるためにレイモンドを宰相から罷免するとかどうだろう」
国全体で雨を降らなくするとか俺は悪魔か何かかな?
「コウ様を利用して、休もうとしてる陛下の方が不敬なのでは?罰にあった貴族家の再編成や領地の見直しで仕事が山積みなんです。諦めて働いてください」
どうやら忙しいのはホムラが暴れたけっかっぽい。
俺は気にしないし、大前提として一国の王にアポなしで会いたいと言って30分程度で直接会うことが出来てるんだから、むしろ頑張ってる方だと思う。
「アポなしで突然来ているんですから、直接話が出来てるだけで充分ですよ。国民が不幸にならないよう頑張ってお仕事してください」
「こう言って頂いてますので陛下は頑張って働いてください。コウ様の詳しい話は私がお対応させて頂きますので」
「お前ずるいぞ!その流れでコウ殿から菓子を自分が貰うつもりだろう!
私だってマルタが話していた羊羹という新しい菓子が気になる。
少しぐらい休ませてくれても良いだろう!」
「いえいえ、そんなつもりは全くありませんよ。ただ獣王国のみで栽培されている豆を使った菓子を開発されたとういうのは大変興味深い話でしたので質問はさせて頂くつもりでしたが」
「コウ殿なら収納魔法でその菓子を持ち歩いて説明のために食べさせてくれると計算した上でその質問だろう」
「そんなことはありませんよ。ただリンファス王国の農作物でも新たな料理が作れないかお聞きしたかっただけです」
そう2人で言い合いを眺めながらもうほっといてマルタの所に行っちゃおうかなと思うコウだった。
読んでいただきありがとうございます。
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