第32話

怒っているって言うより、呆れてるって感じだな。


「獣王国の人何か言ってた?それよりフィアもサンドイッチ食べる?」


「コウの機嫌がどうかひとまず見て来てって言われたんだ。勿論サンドイッチも食べるぞ」


空いている椅子に座って残っているサンドイッチを食べ始めた。


「で、あれはなんだったんだ?失神した人が続出したり、すごい騒ぎになってるぞ」


「ちょっと怖がらせる程度のオーラを出す予定だったけどちょっと強すぎちゃったみたいで」


「効果の差がありすぎだろう。後、メル殿下がコウに嫁ぐのが正式に決まった。コウが精霊界で用事を終わらせるまで、ひとまずリンファスの王城で過ごしてもらうことになった。式は構わないが、披露宴はオルフェナスでやって欲しいとアウルス陛下が言っていたぞ」


「突然すぎてちょっとびっくりなんだけど。メル殿下とはあんこの話しかしてないよ?」


「このままだと、お互いの都合が合わなくて流れてしまう気がしたから少し強引だがアウルス陛下と私で決めてしまったんだ」


確かに話す機会を設けてからって言っていたけど。

毎回タイミング悪くてろくに話せないし、この後だって精霊界に行くから、またあって話せないし。

今決めて貰えなかったら、確かに結婚する事はなかったかもしれない。


「分かったありがとう。じゃあメル殿下は飛行機がリンファスに帰る時に一緒に行くことになるの?」


「いや、それだとコウの用事の方が早く終わる可能性も出てくるから走って向かうと言っていたぞ」


走って?馬とかでって事かな。


「えっと、馬車とか馬でってこと?」


「メル殿下はホワイトタイガーの獣人だから自分で走った方が早い。足の早い部下と1週間ぐらいでリンファスにつく予定らしいぞ」


まじか、獣人すごいな。予想以上に前衛特化って感じなんだな。

リンファスの王都からベラフまででも空を飛んで3日ぐらいかかったのに、それ以上の距離を走りで1週間ってどれだけ早いんだよ。


「結構な強行日程とは言っていたがな。今は急いで準備しているらしい。コウが渡したマジックバックを使うから荷物も厳選する必要が無いって喜んでたぞ」


マジックバックはメル殿下が使うって事は実質俺のところに戻ってきたようなものか。

好きに使ってて言ったから文句は言わないけど。


「じゃあディアーネさんはその強行軍に同行してリンファスに向かってね。いつ出発するって言ってた?」


「準備が出来次第出発、遅くても昼頃には出発すると言っていた」


「出発前に挨拶とかできるかな?それとも城の中自由に歩いたらまずいかな?」


「オーラを出してなくても、今城の中を歩き回ったら更にパニックが起きるからダメだ。挨拶せずにこのまま精霊界に行くと話はつけてある。フェムト様からの要請と言ってあるから、文句を言うやつもいなかったから問題ない」


酷いゴリ押しな気もするけど。面倒事を回避できるし気にしないことにしよう。

メル殿下にはリンファス王国戻った時に話せるだろうし。


「あのサラッと支持して流されましたが、メル様御一行と一緒にリンファスに向かわなきゃダメですか?1人で向かった方が早くつくのですが」


「護衛としてディアーネさんには同行してあげて欲しいんですよね。襲われる可能性もあるでしょうし」


まだ国内情勢だって安定しているわけじゃないし何があるか分からないからね。

ディアーネさんがもしもの時も問題ないだろうし、安心して精霊界に行けるんだけどなー


「分かりました。コウ様がそう言うなら、護衛としてメル様と一緒にリンファスへ向かいます」


「ありがとうございます。これで安心して精霊界に向かえます」


「その代わり、私の農園はそのままでお願いします」


「農園?唐突すぎて意味がわからないんだけど」


「まあ、精霊界に行ってフェムト様のお願いをこなしていればすぐに分かります。私からしたら命の次に大事なものなのでくれぐれもお願いします」


「農園の件もとりあえず分かりました」


「ありがとうございます。ではメル様の所へ向いますので失礼します」


そう言ってそそくさと部屋を出ていった。


農園って実はやばい隠語とかじゃないよね?

フェムトも知ってるみたいだしきっと大丈夫だろう。


「俺達も出来るだけ早く用事が終わるように、さっさと精霊界に行くか」


「これ以上獣王国にいてもやることもないだろうし、城を出ていくのは私が説明してあるからいつでも出発できるわけだからな」


精霊門を発動して、精霊界と人間界を繋ぐ門を作り出し門をくぐった。


「久しぶりにきたがやはり精霊界は綺麗だな」


俺は何回も来てるからこの景色にも慣れたけど、まだ数回しか来てないフィアは景色に見とれていた。

俺は感知は出来ないが既に居るであろうフェムトに声をかける。


「どうせもういるんでしょう?フェムト早く出てきて今回俺は何をすればいいのか教えて」


「まあ確かに居るけど、もうちょっと良い呼び方なかったの?せっかくオフィーリアちゃん驚かせようと思ってたのに」


いっつもそういうこと考えてるからだろう。

自業自得だ。

それより早く本題を教えて欲しい。


「ほんとコウはせっかちさんだな〜。今回はコウの支配領域で、精霊王の宝玉っていうのを作って貰うのが目的だよ」


支配領域?精霊王の宝玉?また知らないものな。

って言うか支配領域ってそんなの作った記憶が無いんだが。

まあ、フェムトがちゃんと説明してくれるだろう。

そう考え質問などはせず、そのままフェムトの話を聞く体勢に入るのだった。


読んでいただきありがとうございます。




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