第23話

時は少し遡り、さらわれた直後からのフィア視点


「はは、異世界は最高だな!こんなにいい女を好きに出来るなんて」


私をさらった男が下品な目つきでこちらを見てくる。

失敗した。最近はコウがいつも傍にいるので

油断していた。もう少し警戒していれば、さらわれなかったかもしれない。

まあ、直ぐにコウが助けに来てくれるだろう。

そう落ち着いてコウが来るのを待つことにした。


「なんだ、もっと離せとか助けてって泣き叫ぶと思ってたのに、つまんないな。まあいい早いところ俺の女になってもらうか『チャーム』」


そう言って男の目が赤く光ったが、それだけで私には何も影響がない。

だが男はこれで俺の物だーと叫んでる。

本当に気持ち悪い。吐き気がする。

完全に自分の使った魔法かスキルを信用しているのか、無警戒に近ずいて来て拘束を解いた。

馬鹿か此奴はと思ったが、敵が馬鹿に越したことはないので、気にせず魔法をぶっぱなす。

魔法で吹き飛ばされて壁に突っ込んで行ったが、男は無傷で瓦礫の中から出てきた。


「クソッなんで『チャーム』が効いてないんだ!魔法やスキルじゃ防げないって言ってたのに、嘘じゃねぇか!」


さっきからゴチャゴチャうるさいが、気にせず殺す気で魔法を撃っても透明な壁のようなものに守られているのか、男に魔法が当たらない。近づいて剣で切っても同じな気もするし 、このまま魔法で牽制しつつコウが来るのを待つのが1番か。


「さっきから効きもしない魔法をちょこまかと、鬱陶しい。こうなったら、手足切り落として、無理や・・・」


男が攻撃してくるかと思ったら突然、石像のように動かなくなった。

よく見ると男だけじゃなく、空を飛んでいる鳥も全く動かない。


「私以外の時が止まってる?」


信じられないが、周りを見た限りそういうことなのだろう。


「問題は誰が、こんな事をしたのか」


時を止めるなんて、人間には命をかけたって出来ないだろう。

実際、出来そうなのがフェムト様かコウ。

知らないだけで、時を止める事が出来る人間がいるかもしれないし、今回のこともある。

油断は禁物だろう。


「ん、コウの気配がする。」


最近、何となくだがコウが近くに来ると分かるようになった。

スキルが増えた訳でもないし、分かるのはコウ限定なので、理由は分からないけど、今は気にせず転移魔法で出来た門の中から、出てくるコウに抱きついた。


ーーーーーーーーーー


「コウが来るまでは、こんな感じだった」


フィアに俺が来るまでの事を聞いていたのだが、途中で何回、目の前の男を殺してやろうと思ったことか。

既に生かすも殺すもこちらの自由なのだが。


それに、男が言っていたという、魔法やスキルでは防げないと言うのは権能なのでは?


男が騙されたという可能性もあるけど、権能を使えると仮定して動いた方が安全だろう。


この男は追加でスキルとかも使えないように

停止させておこう。

時間を止めてるから、大丈夫だとは思うけど念の為ね。


「取り敢えず此奴どうしようか、殺しちゃえば終わりだけど、情報を吐かせずに殺すのもちょっと勿体ないよね」


「その男は、世界神様が直接調べるって言ってたから、そのまま僕が持ってくよ。後、コウは正座」


毎度の如く突然現れるフェムトもうそういうものだと思い特に突っ込まずに、話を続ける。


「やっぱり、異世界の神が関わってるの?」


「異世界の神が自分の使徒にする為に、日本から召喚したみたいなんだよね。ここで殺しちゃってもいいんだけど、死んだら自動で発動するスキルとか異世界の神がこっそり仕込んでたら危ないし、世界神様が色々調べてくれる事になったんだよ。異世界の神についても分かるかもしれないし。で、コウは正座って言ったよね?」


顔が笑ってない。大人しく正座しよう。


「なんで怒ってるか分かる?」


「今回、油断してたせいでフィアがさらわれたから?」


「確かに、今回相手にさらうつもりがなくて、殺すつもりだったら、転移した瞬間心臓一突きで殺されてたよ?もうしないと思うけど油断しすぎ。だけどそうじゃないよ!コウが今回やりすぎって話。」


「やりすぎって何を?今回人間界全体の時間を止めたから被害ゼロだよ?」


「それがやりすぎって話なの。そこまでしなくても、余裕で倒せたでしょこのぐらい。そのせいで神の中で、あいつは危ないから排除するべきだ。ていう奴らが増えたし。それで今回みたいにホイホイ時間停止させられると、色々問題が起きないとも限らないから、広範囲の時間停止のみ使えないように制限する事になったから」


そう言って、紙を渡してきので、紙を受け取る。すると紙を受け取った瞬間手から体の中に入ってきた。


「うっわなにこれ!」


「詳しい説明はしないけど、これで広範囲の時間停止は出来なくなったからね」


「えー。もしもの時の切り札として強力だと思ってたのに!」


「広範囲の時間を止めなくても似たようなこと出来るでしょ!それに本来なら技術的にも魔力量的にも、まだ無理なのに精霊から魔力供給を受けて無理やり発動させたでしょ?あれ失敗してたら、コウは爆発して肉片になってたんだよ?とにかくそういうのも含めて今は危険すぎるから広範囲の時間停止は禁止!」


「わかったよ」


そう少し不満そうに言ったのが行けなかったのだろう。


「もし、失敗してたらコウが死ぬだけじゃなくてオフィーリアちゃんだって助けられなかったんだよ?ほんとに無理をしなきゃ助けられないならまだしも、今回は危険を犯さないでも安全にオフィーリアちゃんを助けられたでしょ?」


「確かに、今度から気をつけます」


「これ以上、僕からの説教はいらないだろうし、そろそろ帰るね。後、折角時間止まってるんだから、ベラフだけ解除して、ささっと王都解放しちゃえば?」


最後にそう言って、汚いものを持つような感じで男を掴んだフェムトは目の前から消えていった。


読んでいただきありがとうございます。




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