第16話


『こし餡の作り方教えて下さい』

そう言って突然現れた精霊、彼女が手紙に書いてあったディアーネさん。フェムトの城で料理を作ってる上位精霊で何百年も料理人をしているのため美味しいのは勿論、多種多様な料理を作ることが出来る。


そもそも純粋な精霊は大気中の魔力を吸収してるだけで十分生きていける。

なので生きるために食事をとる事をしない、尤も味覚は普通にあるので、果物などの甘い物をそのまま食べたりはすると言っていた。

その為、料理をする精霊というのは存在しなかった。


そんな中、ディアーネさんが何故、料理に目覚めたかと言うと、ディアーネさんがまだ下位精霊で人間界をフラフラしている時に冒険者がリンゴを焼いて食べてるのを偶然見かけて、そのまま食べるより美味しいのかな?と試して美味しかったのがきっかけと本人が言ってた。


最初は果物をそのまま食べるより美味しく食べる方法があったなんてと感激し、他にどんな方法が有るんだろうと人間を観察して真似してる間に料理をすること自体が好きになって、今のお料理大好きディアーネさんが爆誕した。


そんな事もあって、ディアーネさんの料理に対する情熱は並大抵のものじゃない。

フェムトの城で料理を作っている時以外は人間界で料理人を観察して、気になる料理があると、精霊石を対価に料理を教えて貰っていたらしい。


そのディアーネさんが、今回こし餡の作り方を教えてと来たわけだ。

今お料理教室なんてしている場合じゃないけど、教えるまで帰らないで着いてくる気がする。


この戦いに協力してもらうのを対価に料理を教えるって事にすれば、ふざけてるんですかって怒られずに済むかな?後はディアーネさんがそれでおっけーって言ってくれるかどうかだ。


「教えるのは全然構わないんですけど、今

結構忙しくて教える暇がないので一段落してからじゃダメですか」


これであっさり引いてくれるのがベストだけど、どうだろうか?料理が関わらないディアーネさんならこちらの事情も十分考慮してくれるんだけど。


「むぅ、フェムト様に人間界の現状について軽く教えて頂いてるので、料理を教える暇がないのは理解できます」


あれ、粒あんの時は、まだ小豆も見つかってないし後日見つかってからでいいじゃんと言っても認めて貰えず。フェムトに精神と時の部屋的な魔道具を作らせて、小豆が見つかって粒あんを作るまで帰らせてくれなかったんだけど、今回やけにあっさり行きそうなのが逆に怖い。何考えてるんだろう。


「なので、私がコウ様のお手伝いをするというのはどうでしょう、当然戦闘にも参加致します。これでも上位精霊なので全く役に立たないという事はないと思います」


成程ディアーネさんも似たような事を考えてたって事か、今回は上手くまとまりそうだし、他にも作れそうな料理があったら教えてあげるか。


「ディアーネさんがその条件でいいならこっちとしては大歓迎だけど、ホントにいいの?」


「問題ないです。こし餡にはそれだけの価値があると思ってます」


いや、確かにこし餡美味しいけど

流石に上位精霊が力を貸してくれるほどの価値はないと思う。


「じゃあその条件で契約成立ってことで」


「はい、ありがとうございます。後、私が城に帰らずこちらにずっといるとフェムト様が拗ねると思いますので、コウ様には私が精霊界に帰るとき一緒に来てフェムト様のご機嫌取りもお願いします」


「やっぱり契約破棄していいですか?」


フェムトのご機嫌取りって無理ゲー過ぎる。

いっそ今すぐ異世界の神を倒してくる方が簡単かもしれない。


いや流石にそれは言い過ぎかな?


すると突然、目の前に手紙が現れた。

さっきみたいに気づいたら置いてあったとかではなく、手紙が宙に浮いて目の前でくるくる回ってる。仕方なく手に取って読んでみる。


ーーー


コウがどんな方法で僕の機嫌を治すのか楽しみに待ってます。


フェムト


ーーーーーーー



手紙にはデカデカとコレだけ書かれていた。

絶対面白がってる。完全に逃げ道も無い。

もし、ディアーネさんを今すぐ帰したとしてもフェムトのご機嫌取りは絶対必要になるだろうし、ディアーネさんのご機嫌取りまで必要になってしまう。


「詰んだ。何もかも手詰まりだ」


もう抵抗するだけ無駄だろう。

何をすればいいかな?やっぱり日本の知識を活かすしかないな。

そうなるとやっぱり料理かな。

獣王国って地球で言う熱帯っぽい気候みたいだし、もしかしたらカカオが採れるかもしれない!チョコは出てきたことないし多分知らない筈だ。

作り方もチョコレート工場に工場見学に行ったことがあるから何となく分かる。

粒あん、こし餡とは比べ物にならないぐらい時間かかるし大変だけど頑張るしかない。


「っていう訳でカカオ豆探しに行ってくる!」


「さっきから喋らないし、全く動かないと思ったら、何がどうしてそうなった!?それに、もう夜遅くだ今からどこに行くつもりだ?」


フィアが何か言ってるけど、聞いてる場合じゃない。


そのまま部屋を出ていこうとしたら、フィアに『一旦落ち着け』と割と強引に拘束され、部屋に連れ戻された。




読んでいただきありがとうございます。


何故か続いた餡子回が終わったと思ったらチョコが出てきました。どうしてこうなった?

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