第7話

水不足で弱ってる所を、敵が一気に叩きに来た訳だ、最初から計画の内だろう。


「アルトさん、俺を獣王太子殿下のところに連れて行くのは可能?」


部外者だからダメって追い返されるかもしれない、でも今動ける兵士がどれぐらいいるかとか知りたいこともある。


「問題ないと思います。正直、コウ様の力を借りずに切り抜けるのは、無謀だと思いますし」


アルトさんに、貴族が集まってるであろう会議室に案内してもらう。

時間がかかるかと思ったが、ほぼ顔パスで中に入れた。


「首をつっこむべきでは無いとも考えましたが、何かできないかと思い、ここまで案内していただきました」


獣王太子は、歓迎してくれるだろうが、他の貴族はどうなんだろう?あった事ない人も多いし、表立って反対してくる人はいないかな。


「正直、我々はようやく水を自由に使える様になったばかりです、まともに戦える兵士は、5000人いるかいないかです」


やっぱり、本当に最低限の兵力しか残ってないみたい。


「因みに敵は、どのぐらい来てるんですか?」


「帝国兵5万です。反逆した辺境伯の軍はいないみたいです」


帝国兵しか来てないんだ。じゃあ、精霊神フェムトを怒らせた神敵として、俺一人で排除するか。

少し無理やりな気もするけど。


「帝国は、精霊を無理やり使役して、精霊神フェムト様の怒りをかっています。

使徒として、罰を与えなければ行けません。

今回、私に対処させて頂けないでしょうか?」


ここにいる人たちは、仲間だからね。

脅したりはせず、紳士的にお願いするしか無い。


「分かりました。今回はコウ様におまかせ致しますので、魔力を抑えていただけると」


おっとイケナイ、感情的になって何時も抑えてる魔力が、溢れ出てたみたい。

魔力を引っ込める。


「コウ様、絶対わざとですよね?」


アルトさんが何か言っているが、聞こえないふりだ。


「それで、敵はどうしているんですか?」


「帝国兵5万、城壁前に陣取ってる状態です」


体調が万全じゃない状態で、10倍の兵、ここが城塞都市だとしても難しい戦いになっただろうな。


まぁ、俺には関係ないけど。


「さっさと殲滅してきますね」


それだけ言って、城壁に向かうため会議室を後にした。


「獣王太子殿下、着いてくる必要はないですよ?」


獣王太子だけでなく、会議室にいた人達がぞろぞろ後ろから着いてくる。


「流石に、会議室で座ってそのままという訳にはいかないので」


獣王国と関係ない人に全てを任せるのは 、流石に難しいか、もしくは実力が見てみたいだけとか。

そんな気がしてきた。


列を作りながら、城壁に到着する。


「本当に陣取ってるだけなんだな」


宣戦布告も無しに、公爵領を襲撃してきた帝国とは思えない。


「敵は、獣王太子殿下を差し出せと、そうすれば他の者には手を出さないと言っています」


何を考えてるんだ帝国は?

獣王太子は自分が犠牲になれば助かると言われ、どうすればいいか考えてるみたいだ。


「精霊を害し、精霊神様の逆鱗に触れた、

だから精霊神様の使徒である私が直接始末する。」


わざわざ相手の反応を待っているつもりは無い。

帝国兵の上から氷の槍で雨を降らせる。

ガードしようと色々しているが、全て無意味

無慈悲に貫いていく。


無理だと悟り、逃げようとし出す帝国兵だが、氷の壁で既に囲んでいるので、逃げるのは無理だ。


「これは、戦闘なんかでは無い。蹂躙だ......」


獣王国の人達に、凄い怖がられてるけど、

まあいっか、恐れて敵対しないのなら力をふるう必要も無いし。

個人的にも獣人とは仲良くしたい。


「精霊神様を怒らせなければ、こんな事滅多にしませんよ」


滅多にというのは、フィアやマルタに手を出したら、消す。それだけは絶対に許さない。


「この期に及んで精霊を無理やり使役するか、救いようの無い奴らだ」


帝国兵は、いつもの魔道具を起動して精霊を呼び出した。

奴らが魔道具化して使っていたスナイパーライフル、あれを自分の魔法だけで、再現してみるか。


形だけ再現するのは簡単、でもそれだと

真っ直ぐ飛ばないだろう。

銃には、ライフリングという機構があって、

銃砲身内に螺旋状の溝がある。

ここを銃弾が通る事で、弾丸が回転する。

その結果ジャイロ効果で、直進性を高められる。

なので、弾丸を撃つ時に回転を加える事も忘れないように、魔法を発動する。


「アンチマテリアルライフル」


回転を加えられ、発射された氷の弾丸は、

狙い通り魔道具を持った腕を撃ち抜く。


魔道具が壊れ、開放された精霊によって、

そいつは焼かれて灰になった。


「助けていただきありがとうございます。

我が王とは違えど、お呼びいただければ、必ず力になります」


そう言って、精霊は帰って行った。


「意外に時間かかっちゃったな」


攻撃を初めて30分後、帝国兵5万人を殲滅し終わった。

氷漬けにしたのではなく、氷の槍で貫いて殺したので、目の前が血の海になっている。


こんな事をしても、何も思うことがないとは、悪い事をしたとは思わないけど、元日本人としてはどうなんだろう?


フェムトが俺の事を、半精霊にした時に精神も変化させられた?

そう思う事にしよう。


「緊急の報告が」


1人の兵士が、息をきらせながら獣王太子の前に現れた。


「何があったんだ?」


「所属不明の空飛ぶ船が、こちらに向かってきています」


飛行船!帝国が熱気球を作っているのは知っているが、果たして敵か味方かどちらだろうか。


読んでいただきありがとうございます。

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