第6話
翌朝、獣王国にいる間の俺たちの警護をしてくれるらしく、アルトさんが尋ねてきた。
「お2人に私なんかの警護は要らないかもしれませんが、精一杯努めさせて頂きます」
信用出来る人って事なんだろうけど、王女の
護衛を外して大丈夫なんだろうか?
こっちが考えることではないか。
治療所に案内して貰って、早いとこけが人の治療を済ませてしまおう。
「警護、頼りにさせて頂きますね。それと、怪我の治療がしたいので、治療所に案内して貰えますか?」
しまった、この言い方だと俺が怪我して、治療を受けたいって勘違いされちゃうじゃん。
「どこかお怪我を!?急いで治療ができる者を連れてきます」
案の定勘違いされた 、今回悪いのは完全に俺だ。
申し訳ないなと思いつつ、訂正をする。
「俺の言い方が完全に悪かった。回復魔法も使えるから、治療のお手伝いしようと思って」
「そういう事でしたか。では、診療所に案内します」
フィアは部屋で待ってると言ったので、アルトさんと2人だ。
「コウ様ってヒューマンしか居ない世界から 来た、ドリフターなんですよね?
私たち獣人ってどう思います?」
「姿かたちが違うだけで、別に皆同じ人間だと思ってるけど」
寧ろ、半精霊っていう俺の方が人間じゃない気がする。
「その姿かたちが違うことが、嫌われ差別されたりもするのですがね。コウ様は違うのですね」
地球だって肌の色が違うだけで差別される。
世界が変わろうとも人間は変わらないな。
「個人的にはどんな種族だろうが、その人の性格次第かな?見た目とかより」
「そうですか。では、獣人と結婚も可能と?」
なんでそんな話になった?
「コウ様に対して、既成事実をつくって取り込もうとするバカ貴族がいるんです。
私が護衛についているのもそのせいです」
兎好きだし、アルトさん結構好みだったりするから、その貴族の企みは成功してるわけだ。
「つまり、王女の護衛をハニートラップにしたと?」
「違います。自分の娘とかを送り込もうとしてたので、それをさせない為に私が護衛に着いたんです。下手のことしてコウ様が怒ったら、国が滅びてもおかしくないのに」
ちょっとキレたぐらいで、国を滅ぼすなんてしないですよ?
アルトさんは、俺をなんだと思ってるの?
「そういう事は、コウ様の好みやタイプ、獣人が大丈夫か、しっかり調べてからやるべきです」
ん?アルトさん、ろくに準備をせず実行しようとした事を怒ってるだけで、ハニートラップ自体は賛成してる?
「ハニートラップ自体は賛成なんですね」
「使徒であるコウ様と繋がりがあると、1番他国に示しやすいですからね」
この世界での結婚って、好きな人同士がっていうよりも、家同士の繋がりを強める為だったり、優れた血統を取り込む為だったり、
けっこう夢がない感じだもんね。
貴族などがこの傾向が大きくて、優秀なら
平民も側室としてにはなるが正式に妻として迎え入れる事も珍しくないらしい。
平民は、財力一択みたいだ。どれだけ貯蓄があるか、安定している職業かが重要らしい。
その為、お金を稼げるが、死の危険と隣り合わせの冒険者はあまり人気がないらしい。
冒険者同士で 、結婚するのが殆どだとか。
俺も、リンファス王国以外の国からお嫁さん貰っとかないと、リンファス王国が他の国から変なイチャモンつけられて被害に遭う可能性もあるし。少なくとも、リンファス王国だけを贔屓している訳じゃないって言い訳できるし。
それでも言ってくる奴はいっぱいいるだろうけど。
獣王国も俺も結婚すれば、他国への牽制になる、こういう理由での結婚がこの世界での普通なのである。勿論、恋愛して結婚というのもない訳では無い。
何かしらの才能がなければ難しいらしいけど。
「アルトさんが、ぶっちゃけたから俺も正直に聞きますけど、アルトさん的にはベラ王女殿下と結婚して欲しいってことですよね?」
「獣人と結婚するなら、ベラ様と結婚して頂く事が条件になるかと。そうしないと今回と同じような事が起きる可能性も有りますから」
言い訳の仕様のない見事な政略結婚ってやつだ。
王族だから仕方ないのかもしれないけど。
「これ以上は、獣王国を取り返してからにしましょう。後、ベラ王女殿下と2人で話す機会も貰えるとありがたいです」
「かしこまりました。お話も近いうちに出来るよう調整させて頂きますね」
明確に断ってないし、俺が了承したって事で話が進むんだろうな。
「着きました。此方が診療所です」
案内された場所は、大きな体育館みたいな倉庫だった。
床には沢山の怪我人が寝かされていて、足の踏み場がないレベルだ。
何人いるかパッと見では分からないが問題ないだろう。
今回は1人づつ治療していこう、その方が驚かれないと思うし。
「コウ様、1度休憩された方が良いかと。
既に2時間治療をし続けてます。」
そんなにたってた?集中してたから全然気づいてなかった。
治療は3分の2が終わった状態、後1時間治療を同じペースで続ければ終わるはずだし、休憩はそれからでいいや。
「後1時間ぐらいで治療終わるだろうから、そしたら休憩することにします」
その後、予想通りだいたい1時間で治療が終わった。
「終わったー、フィアのところに戻って休憩しようかな」
「かしこまりました。お部屋ご一緒させていただきます」
それにしても水が足りなかったから、まともなご飯も食べれてなかったのだろう。
ここにいる人たち皆痩せている。
今日からはしっかり食べれてるだろうけど、
一日で治るようなものでもないし、直ぐに戦闘とか難しいだろうな。
「今、敵が攻めてきたら対応出来る兵士がいないんじゃ」
そう考えた時、鐘がカーンカーンとなり始める。
「アルトさん、この鐘はもしかしなくても」
「はい、敵が攻めてきた合図です」
さぁどう対処したものか。
読んでいただきありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます