第2話 ゲームと平和と約束

 黒龍は気づいていた、明智と会った時、黒いパーカーの人物が監視していたことを。黒龍と明智の接触は見られてしまったが明智とアリスの接触も見たことになる。アリスは明智とずっとついているとなると反逆ではなく劣勢か?ただ単に監視対象が明智なだけなのだろうか、だがまだあってない人物の行動も探る必要がある。未来は落ちた、朱音、天理、さくら、全員見定めてからが投票だ、あと3時間強。



「あ、天理ちゃんだー」


 聞き覚えのある声、何でこんな海のある端っこにいるのに出くわすんだ、と言わんばかりの表情。


「さくらか…」


「天理ちゃんは誰がなんだと思う?」


 このゲームは自分のカードを見せることは禁止だ、しかし、答えがわからない人物、それが敵味方関係なく相談することは禁止されていない。なぜなら答えがわからないから推測でしかないからだ。


「わからない…ただ朱音さんとは会った…」


「朱音さんと?てことは天理ちゃんと朱音さんは劣勢者?」


「はいともいいえとも言えない…ルールだからな」


「まあそうだよね、でも天理ちゃんの意見聞きたいな、でもその朱音さんと会ったって話が本当かも証明できないよね」


「証明のしようがない…まず反逆者は未来を落とした、ということはわざと親友の朱音さんが未来さんを蹴落とし朱音さんは反逆者との線から背けるか、それとも全く関係のない私や明智に誘導させたか、もちろんさくらも入る」


「天理ちゃんならあまり話したことのない未来さんを落としても疑われないよね、香ちゃんも私もだけど」


「逆に未来さんと同学年の黒龍さん、仲がいいアリスは未来と親しいから反逆者として見ていない…そんなわかりやすいことはしないだろう、一番読めないのは朱音さんだな…もっと知る必要がある」


「協力しない?もちろん答えは教えないけどその朱音さんを探しに行こうよ」


「なにか裏がありそうだな…私は一人で見つける…下手に敵だろうと思う存在と行動したくない…」


「味方かもしれないよ」


「それはどうだか…」


「じゃあ私が一人で探すよー」


 それだけ言うとさくらは行ってしまった。

 一人で見つけると言いながら天理はただ海を見つめるだけであった。

 天理は街の端にいるにもかかわらず朱音、さくらと二人の人物と遭遇したことになる。劣勢者の可能性が大きく出始めた一人である。


「なかなか難しいゲームだね、今会ったのは黒龍さんとさくら君か、確か未来さんは指定のレストランにいたらしいね、答えを聞くのはアウトだけれど相談するのはセーフだから行ってみようか」


 明智は未来のいるレストランに向かう。


「あ、明智さん」


「こんにちは未来さん、何者かに落とされてしまったようですね、相談するのならセーフなんですよね、ゲームマスター」


「ゲームマスター…なれませんね、はい、相談するのなら大丈夫ですよ、答えは私の答えも含めて教えられませんけどね」


「未来さんとアリス君は仲が良かったですよね?」


「仲良くなれるきっかけがあったんですよ」


「反逆者はアリス君を陥れる人物と私は企んでいますよ」


「確かに可能性はありますね、ゲームマスターですけど脱落者の答えしかわからないので何もわからないんですけどね」


 明智は未来と会話するが動きがないため全く真相がわからない。



 黒龍は見知った人物を見つけた、大道寺さくらだ。


「おい、さくらじゃねぇか」


「あ、黒龍さん、こんにちは」


「お前の目は何か企んでいる目をしているな、まあ今はゲーム中だ、全員そうか、お前の後ろで誰かが暗躍している、そんな目がな」


「私は黒龍さんの味方かもしれませんし敵かもしれませんよ」


「そうだよな、答えを聞くのはずるだ、お前天理か朱音見なかったか?」


「天理ちゃんなら海にいました、天理ちゃんは朱音ちゃんと話したって言ってましたよ、天理ちゃんのことなのでほんとかわかりませんけど」


「そうか、ありがとな」


 黒龍は海を目指す、ほんとに天理がいた。


「おう、天理」


「はぁ…」


 なんでこんなに人と会うんだといった感じの天理の表情。


「お前さくらと朱音と会ったらしいな」


「まあ…なんでこんな人と会うんだ…」


「さくらから聞いたからな、お前の目はやっぱり読めねぇ、企んでるのかそうじゃないのかすらな、お前はなんで未来を落としたと思う」


「アリス、黒龍をはめる作戦だ…ただ朱音さんに関しては親友、親友をそこまでして蹴落とすかと言われれば難しいところだ…親友がどういったものかわからないがアリスから二人は親友と聞いた…」


「俺かアリスを反逆者と仕立て上げて脱落させにかかってるわけだな、俺が本当に反逆者かもしれねぇぜ」


「アリスと黒龍を反逆者として見ていない」


「それはお前が反逆者だからか?」


「イエスとも言わなければノーとも言わない…」


「まあいい、時間も迫ってきてる、朱音は未来を貶めるようなことはしねぇとみてる朱音は反逆者として見ていねぇな、そろそろ俺は動くか…」


「間違えないようにな…」


 それだけ言い残し黒龍は投票するのである。



 未来の個人チャットから黒龍にメールが来た、指名者と勢力が書かれている。未来だけはゲームマスターのため知ることができる。その相手に報告する。ゲームマスターには嘘はつけない、その相手は本当の役職を言う。そして7人グループに未来なりの文章で書き記すのである。


『黒龍連、明智香に対して劣勢者で言及。明智香は劣勢者でないため黒龍連は脱落となります』


 そしてゲームマスター未来は明智の役を知ったことになる。

 黒龍が未来のいるレストランにやってくる。


「こういうの向いてねぇな俺、アリスが良かったか、ゲームマスターだし俺の役見るか?」


「他言はしませんけど一応ゲームマスターですし把握はしておくべきなんですかね」


 黒龍は未来にカードを見せる。そこに書き写されたのは…



 いきなり告発された明智、確かにさくらと会っていた、その光景を見られていたのかもしれない。しかし、明智は劣勢者ではないことが判明してしまう。


「黒龍さんからの告発か、これには冷や汗をかいたね、でも私からしてみればまず恐ろしい存在、黒龍さんは脱落してくれた。犠牲として劣勢者ではないことがバレてしまったけどね、私が集中砲火される可能性が出てきたね」



 今残っている人物は朱音、アリス、明智、天理、さくらの5人となった。もしかすると劣勢者はもういないのかもしれない、または反逆者はもういないのかもしれない。それともどの陣営も残っているのかもしれない。それは未来だけが知っている。



 アリスは監視ターゲットを明智からさくらに変えていた。今どういう状況なのかはわからないがさくらは天理、黒龍と遭遇していた。しかし黒龍は明智に劣勢者を打った、つまり、黒龍は劣勢者の可能性は限りなく低い。さくらと天理が繋がっている可能性は十分にある。まだ劣勢者が残っているのであればさくら、天理だろう、時間はあと1時間強、タイムリミットは迫る。



 そして自体は急激に動き出した。さくらから未来にチャットだ、さくらが指名した人物は…未来なりの文で打つ。


『大道寺さくら、明智香に優勢者として言及。明智香は優勢者です。よって、明智香は脱落となります』



「なかなか進歩したね、さくら君、今回はさくら君にやられたよ、残っているのは反逆者、劣勢者、それとも全員だろうか」


 真相は未来にしかわからない。



 朱音はアリスと出くわす。


「あれ、アリスちゃん?」


 アリスの先にはさくらの姿が。


「監視中だよ、僕的にさくらと天理が劣勢な気がするね、朱音は分からない」


 朱音はその言葉を逃さない。


「そのいいぶりからするとアリスちゃんは劣勢陣営ではないってことだね」


「だとしても僕に勝てるかな?」


 アリスは自信に満ち溢れている。


「そういえば誰かと会ったかい?」


「天理ちゃんと会ったよ」


「天理か、ふむ、ありがとう」



 数分後、未来のチャットは動く。今度は天理からだ。天理が指名した人物は。

 未来なりに文で記す。


『天野天理、新谷朱音に劣勢で言及、新谷朱音は劣勢者のため脱落です』



 残された人物はアリス、天理、さくら、まだ勝負が終わらないということは優勢者が3人でもなければ全滅でもない。つまり1人か二人いるわけだ。


 アリスは困惑する、この天理の言及がなければ天理を劣勢者で言及しようとしていたからだ。ただし、アリスに勝ち目はある。天理かさくらのどちらかを当てればもう投票する必要はなくなる。反逆者の場合はどちらも当てなければならないが回答してないアリスは二回回答できる権利がある。



未来、朱音、黒龍、明智はゲームマスター未来の話で整理する。


「まずは私と外した黒龍さんの役に関してはゲームマスター権限で教えられないけどもうわかってる部分で整理するね」



未来  反逆者により脱落

朱音  劣勢者

黒龍  脱落だが不明

アリス 生存

明智  優勢者

天理  生存

さくら 生存


「なるほどなぁ、俺は自分の訳わかってるがまさか中学一年戦争になるとはな、動くのが早すぎたか」


「いやー、まさか会話少ししかしてないのに天理ちゃんに見抜かれてるとは思わなかった」


「黒龍さんは強敵に見てましたからね、私が狙われてさくら君に止めを刺されましたよ」


「私だけが答えを知ってることになっちゃうけど隠すのって苦手だなって実感しますね」


「誰が勝つと思う?多分優勢が二人いるな」


「天理君ですかね、天理君は反逆ですかね、でも私は嬉しいですよ、後輩たちの死闘が見れて」


「お前は結構天理に信用があるんだなぁ明智、誰がどこの陣営かわかんねぇからな、ゲームマスター含め、な」


「でも未来しか知らないわけだけど優勢が一人の可能性もあるよね?あたしはアリスちゃんの回答次第かな」



 時間が迫る、アリスは整理する、天理は朱音を劣勢者と見破った。となると天理は優勢、反逆のどちらか。しかし、さくらは明智を優勢と見破った。さくらは劣勢、反逆のどちらか。未来の役もわからない。そしてアリスの陣営は…

 もし反逆者が残っている場合、もう一回回答権の使える反逆者が勝利するだろう。未来脱落の件もアリスを貶めるような使い方、となると反逆者は



 未来の携帯からチャットだ。アリスからのチャット。未来は7人グループに内容を送信。


『花野アリス、天野天理に反逆者と言及、天野天理は反逆者ではないため花野アリスは脱落です』



「チェック…」


 天理は指定のレストランに向かった。もう時間になるからだ、レストランに向かった後は、焼き肉店に向かうつもりだ。


「まさか最後の相手がさくらになるとはな…」



 天野天理が反逆者ではないからと言ってさくらが反逆者だとは限らない、黒龍連が反逆者の可能性もあるからだ、しかし、さくらは一回明智に回答して回答権もないにも関わらず、勝ち誇った笑みをしている。


「最高の勝ち方だね、香ちゃんに打ち勝って天理ちゃんにも打ち勝てる、未来さんには悪いけどカモフラージュするために天理ちゃんから学んだ知恵を生かした戦略だよー、天理ちゃんは劣勢者を当ててアリスちゃんは天理ちゃんに反逆者を言及、反逆者は私だから違うんだけどね」


 そう、大道寺さくらこそ反逆者なのである。そして勝負を終わらせるためには反逆者以外全滅させなければならない。


「最初に反逆者になったときは勝ち目がなくてどうしようと思ったよー、天理ちゃんの入れ知恵と私の力のおかげかな、ごめんね天理ちゃん、ゲームだから許してね」


 さくらは二回目の投票をするのだった、もう天理に投票権はない。



 未来の携帯からチャットだ、さくらである、このチャットで理解する、反逆者はさくらだと。未来は内容を伝える。



 天理の携帯から7人グループにチャットだ。この時点で確信した。


「チェックメイトだ、さくら」


 内容を確認する。


『大道寺さくら、天野天理に優勢者を言及、天野天理は優勢者ではないため脱落、よって、劣勢者陣営、新谷朱音、天野天理の勝利となります』


最終結果

未来  優勢者

朱音  劣勢者

黒龍  優勢者

アリス 優勢者

明智  優勢者

天理  劣勢者

さくら 反逆者



 このゲームは天理にとって一番の障害は反逆者の反逆権、問答無用で脱落させられる、天理、または朱音が脱落させられた場合勝ち目は薄かっただろう。だが、脱落させられたのは優勢者の未来、よって、天理にとっては一番やりやすい陣営になった。


「このゲームの全ての鍵を握るのは反逆者だ、私を落としてしまえば明智、さくらが反逆者として疑われる可能性は高い、特にさくらの場合部活も同じ、年齢も同じ、さくらの防衛本能か、それとも私を真似たか、そして私は先輩だろうと駒として使う、正直逆で朱音さんが私を切っても良かったが任せられたから仕方なく受けることにした…反逆者が優勢者を脱落させてくれたため実質一番有利なのは劣勢者となった、いい感じのタイミングで身内を切ればいいだけ、味方がわかっているのだから動く必要もない…身内切りをすることによって天野天理は劣勢者ではないと備え付けることができる…反逆者、優勢者の二択だろう、感がいい人間に気づかれる前にこの行動をとった、よってさくらはまんまと引っかかった訳だ…頭を使う必要もなかった、さくらが生き残り続けたのは意外だったな…」


 天理にとっては全てが駒、今回はクイーンが選択を間違えた、ただそれだけだった。ただし、攻撃的になると優勢者が勝ってしまう。クイーンにもナイトの動きはできない。


「一番難しい陣営反逆者、よく最後まで生き延びたものだ…確かこのゲームを企画したのはアリスか…アリスもチェスに誘ってみようか…」



「くぅー、絶対勝ったのと思ったのにー」


「さくら君、しかし私を打ち取ったではないか、しかも反逆者で」


と会話をしている中天理も戻ってくる。


「ただいま…」


「いやー天理ちゃんまさかそういう方法でほんとにうまくいくとはね」


「身内切りは基本ですから…」


「なるほど、僕があの時さくらに反逆者を打っていれば良かったということだね」


「そうすればアリス、優勢者の勝ちだ…」


「でもなんで未来落としたのさくらちゃん」


「正直未来さんと黒龍さんと朱音さんで迷いましたけど個人的に一番敵に回して怖い人を落としましたよ、香ちゃんとか天理ちゃんに使っちゃったらバレちゃうから」


「え?私ってそんなに怖いの?」


「違いますよー、怒ると怖いとかじゃなくて一番信用性がありそうなので」


「俺は信用ねぇってのか?」


「すいませーん」


「まあ言いたいことは分かるぜ、俺も未来は敵に回したくねぇな、俺が反逆者なら未来と歳が同じで疑われるだろうから天理落としてたかもな、お前ら中学生組に濡れ衣かぶせられるからな、お前馬鹿っぽいけど結構考えてんじゃねぇか、さくら」


「なんか知らないけど褒められたー」


「よし、着いたな、焼き肉食うか、奢らねぇとな」


「いやー、私は別に奢られなくてもいいんだけどね、楽しめたし」


「私も別に…食べれれば奢りとかいいんで…」


「約束は約束だ、僕は千円しか奢れないが奢ろう」


「それにしてもアリス君、ゲームを作るのが得意だね、一つの才能だ」


「だとしても勝てなければ意味がないのだよ、作るのができても、勝てなければね、僕はいつかあらゆるゲームを支配する、そんな人間になって見せる」


 アリスにとっては大きな一歩。アリスに目標ができたのだ。



 焼肉食べ放題は幕を閉じた。


「じゃあねー、ありがとね、天理ちゃんと組むのも悪くなかったよ」


「また遊ぼうね、アリスちゃん、天理ちゃん、さくらちゃん」


「気をつけて帰れよお前ら」


「私はこっちなのでね、今日は楽しかったよ天理君、さくら君、アリス君」


朱音、未来、黒龍、明智と別れたアリス、天理、さくら。


「今日のゲームはユーモアがあまりなかったかもしれないね」


「反逆者ゲーだな…」


「私はたのしめたけどねー」


「人数が多いところで面白くなければ意味がない、この三人でも楽しめるようなそんなゲームを作らなければ」


「アリス…お前の将来の夢は創造することか…?」


「僕は作ることが好きだったのかもしれない…何もないこの虚無の世界に新たな可能性を、新たな進展を」


「じゃあさ、工作とかどうー、結構楽しいと思うよ」


「僕は一人ではなく他の人と楽しみたい、そう思ったのかもしれない…」


 アリスの心には変革が訪れている。


「そうか…なら次のゲームはもっと面白くなっているのだろうな、この私でも関心が向くようなそんなゲームに」


「君は全く関心を示さないからね、いいだろう、君の関心を抱くようなゲームを必ず作って見せる、約束だ、それがいつになるかはわからない」


「いいねー、それ私も楽しみたい」


「まあ…私が興味を示すようなゲームか…作れるものなら作って見せるんだな」


「天理、僕は必ず僕が作ったゲームで君を虜にし、関心を持たせる、どんな手を使っても興味を示させると約束しよう」


 こうして、アリスと天理は約束を交わした。アリスの作ったゲームで天理に関心を持たせると、果たしてアリスは天理が関心を示すようなゲームを作ることはできるのだろうか?













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悟りゲーム 休日編(パート3) @sorano_alice

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ