悟りゲーム 休日編(パート3)

@sorano_alice

第1話 とある休日のゲーム

まず初めに、参加者七名

 横口未来(よこぐち みらい) ベージュの髪をした優しい少女、芯が強く、善人、その言葉が一番ふさわしい人物。合唱部に所属している。高校一年生。

 新谷朱音(にいや あかね) ピンクのロング髪と小悪魔的性格で都市伝説や噂話などが好きな情報通。高校一年生。

 黒龍連(こくりゅう れん) 赤い髪と少し長い髪の外見。高校最強の武力を持つことで有名な男性。この地域で名を知らない者はいないだろう、暴力で支配してきた。それなりに人望も高い。また、相手の目を見るだけで大体の相手の特徴を掴むことができるという感を持ち合わせているがどうしてもどうつかみきれない相手が一人いるらしい。高校一年生。

 花野アリス(はなの ありす) 初めはいじめられていた黒いパーカー服を着た青い髪の三つ編みの小柄な少女、自殺願望者であったが未来やほかの仲間たちに出会い徐々に心を開き始めている。中学一年生。

 明智香(あけち かおり) 銀髪ロングの髪をした中学三年生。その可憐な姿とは裏腹に運動神経抜群。今は引退したが元女子テニス部の部長をしていた。

 天野天理(あまの てんり) 赤髪ロングの中学一年生。服装、私物、あらゆるほとんどのものが赤、テニス部に所属しているが控えめに言って下手。黒龍連が唯一つかみきれない相手でもある。その他チェスが上手い。今回の参加者の中では一番謎が深い人物。

 大道寺さくら(だいどうじ さくら) 短髪のいかにもスポーツガールという言葉がふさわしい、運動神経抜群、明智香と天野天理とは同じテニス部で大親友。しかし、頭はよくない、馬鹿と言われることもしばしば、常にポジティブ思考。アニメが好きでSNSでは自分の好きな男キャラになり切って話すことが多いらしい、いわゆる中二病。中学一年生。



 とある休日、今日は土曜日。この日、7人は午前からファミレスで待ち合わせにすることになっていた。合唱部もテニス部も全員部活は休みで絶好の機会だったからだ。

 花野アリスは携帯を持っていない、そこで未来と会い未来を通じて伝達してこの7人を今日集めた。内容はなかなかに楽しめそうだと思う人もいれば乗り気ではない人もいるだろう。しかし勝利者には焼肉食べ放題を奢ってもらえる、逆に敗北者には焼肉食べ放題を奢るといういかにも一番最初に行われた残酷なルールとはかけ離れた平和なルールだった。7人は集まった。未来、朱音、黒龍、アリス、明智、天理、さくらの七人だ。主催者からゲームのルールが発表される。まだルールは何も聞かされていなかった午前11時。主催者アリスからの挑戦状、ルールの紙が配られる。



・ルール

 参加者七人にはランダムに7つのカードから一枚引いてもらいます。

 3種類のカード

優勢者 4枚

劣勢者 2枚

反逆者 1枚


・優勢者の勝利条件と敗北条件

勝利条件 時間内までに優勢者が一人でも生き残っている場合、優勢者の勝利

敗北条件 優勢者の全滅


・劣勢者の勝利条件と敗北条件

勝利条件 優勢者、反逆者が全滅し劣勢者が一人でも残っていた場合劣勢者の勝利

敗北条件 時間内までに優勢者の生存、劣勢者の全滅


・反逆者の勝利条件と敗北条件

勝利条件 時間内までに反逆者以外、自分以外の全滅

敗北条件 反逆者、自分の全滅



 これだけ見ると確実に優勢者が有利、次に劣勢者、最後に反逆者が不利だろう。

・劣勢者の特殊ルール 劣勢者はお互い誰が劣勢者かわかります

・反逆者の特殊ルール 反逆者は問答無用で一人だけ脱落させることができます、また、指名できる人数が二人までできます。


・共通ルール

自分の引いたカード、例えば自分が優勢者を引いたとしてもそれを他人に見せることは禁止です、それがたとえ味方の優勢者であってこそです。ただし劣勢者に限り、劣勢者同士は見せあうことが可能です。また、全員一度だけ一人を指名して優勢者、劣勢者、反逆者を当てる権利があります。当たれば当てられたプレイヤーは脱落します。しかし当てに行ったプレイヤーが外した場合その当てに行ったプレイヤーが脱落します。しかし、反逆者に限り、二名指名できます、しかし一度目で外してしまった場合脱落してしまうため実質当てなければ二名目を指名することができません。反逆者は問答無用で一人脱落させることができます。それが優勢者でも劣勢者でも関係ありません。つまり、反逆者だけは一人で最高3人脱落させることが上手くいけばできます。


「なるほどなぁ、俺の興味を引かせるゲームだアリス、だが肝心のゲームマスターがいねぇと勝負のしようがねぇぜ」


 するとアリスは見知らぬメールアドレスを見せる。


「僕のパパのメールアドレスだ。携帯は今日だけパパののを使わせてもらっている。例えば僕が優勢者だとして黒龍が僕に優勢者を指名するときこのメールアドレスにアリスは優勢者と書き込んでほしい、そうすることで当たりか外れ、どちらかが脱落になる、一番最初に脱落になった人物がパパは離脱しゲームマスターになる、その人物に個人チャットで連絡してほしい、そしてその人物はこの7人グループに必ず報告すること、まず自分が脱落したこと、それから誰が誰に対して何の勢力を言い当てたのか書き込むこと、そこからの情報戦になる、もちろん会うことは構わないけど劣勢者同士以外カードを見せあうことは禁止」


「なかなか考えたなぁアリス、だがぬけてんぜぇ、どうやって劣勢者同士が知り合うんだ?カードは見せちゃいけねぇんだろ?間違って劣勢者と優勢者が見せあっちまうこともあるし勝手に見せあうってケースもあるかもしれねぇぜ」


「劣勢者カードには目的地が記されてある、つまり必ずそこで遭遇する、勝手に見せあうに関しては口頭上になるけどルールを守ってもらいたい、それしか言いようがない」


 アリスと黒龍の話が終わるとアリスはカードをシャッフルしだす。アリス含め4人は軽く夕食を取るとそのあとに待ちかねる焼肉よりもそのゲームに興味をそそられる。朱音は不安そうだ。未来はあまり乗り気ではなさそうだ。天理は特に興味を示さない。

 そして7人に優勢者4枚、劣勢者2枚、反逆者1枚のカードのうち1枚がランダムに配られる。全員は確認する。この時点で勝負は始まっている。勝手に見せれば即脱落。焼肉の奢りなどどうでもいい、この勝負に勝つ、それが黒龍だ。目を確認するが動揺している人物もいる上にさすがにそれだけではだれが何のカードを持っているか把握できない。


「行動範囲はこの市街まで、この市街外に出た時点で強制脱落と見なす」


 アリスの言葉でゲームが開始された、ファミレスを後にする。全員に一つずつ持たされたカード、果たして誰が何のカードを持っているのか。



 未来は他の6人と別れようやく一人となった。自分のカードを確認する。この勢力でどう動くか。下手に動かないほうがいい。それに回答権は未来が反逆者でなければ一回。まずは相手の様子を伺おう、それが未来にできる最善の一択であった。



 朱音は自分のカードを確認する。


「なるほどねー、このカードで勝ちに行かないとだねー」


 優勢者は数で有利、劣勢者は互いを知る利点、反逆者は上手くいけば最大三人を潰すことができる。自分の陣営の勝利条件を今一度確認する。今は13時、あと5時間、ちなみに5時間後には回答してない人は反逆者は一度だけ回答していればよくてそのほかの人は全員回答しなければならないルールが、5時間後にゲームは終了する。


「ちょっと動いてみるかなー」


 朱音はぶらぶらと街を眺めながら動き出した。



「これが俺に課せられたカードって訳か、面白れぇ、どう動くか、情報がなさすぎる」


 黒龍は情報が欲しいが人のカードを見るのは劣勢者同士以外禁止だ。ルールくらいは黒龍も把握している。破るつもりはない。これはアリスが決めたルールではあるもののアリスも不正はしていない正真正銘のガチのゲームなのだから。



 アリスは路地裏ばかりに引きこもっていたがたまには顔を出してみようかとそんな気分でいた、そんなとき、後ろから見知った声が聞こえた。


「あれ、アリスちゃん?」


「未来?」


「こんなところにいたんだね、こんな大きな町で会うなんて奇遇だね」


「確かにそうだね、まさか未来からきたとは思えないが、僕のカードは見せないよ」


「もちろんルールには従うよ」


 アリスと未来は遭遇した。



 明智はカードを見ながら考える。


「ふむ、なるほど、私が警戒するのはやはり天理君と黒龍さんだね」


 しかし、天理、黒龍を潰すということは天理と黒龍をよく知る人物にヘイトが行くのに間違いはない。下手に二人に手を出せないのも事実だ。


「天理君ならきっと下手に動かないだろうね」


「ん?明智か?」


 そんな時、警戒していた人物、黒龍と出会ってしまった。


「黒龍さん?どうしてここに」


「それはこっちのセリフだ、俺は反逆者かもしれねぇぜ?それともお前の味方か、敵かもしれねぇ」


「そうですね、下手に身は晒しませんよ」


「ふん、このゲームは一筋縄ではいかねぇなぁ」



 天野天理はゲームに全く興味がないのか海を見ていた。


「はぁ…」


 なんでこんな面倒なゲームに巻き込まれるんだといったような表情のため息。天理は自分の勢力は知っているが動揺もしなければ安堵もしない、まるで、ふぅんといった感じ。


「さっさと終わらせたい、眠い…」


「あれ?遠目にだからもしかしたらと思ったけど天理ちゃん?」


「あ、そうですけど…朱音さんですか、一応ルールなんでカードは見せませんよ」


「わかってるって、ルールはちゃんと守るから」


「ふぅん…」


 天理は興味なさそうにまた海を見上げるのであった。


「偵察されたか…?」



 大道寺さくらにとってはかなりの苦手分野のゲーム、しかしここでもし天理が敵で勝てば天理に認めてもらえるかもしれない。天理の思考を思い出す。さくらの思考では敵わないだろう。明智、天理という人物が味方ならどれだけ心強いか。すると明智の姿を見たので近づくことにした。


「ふむ、今度はさくら君ではないか」


 今度は、その一言を見逃さなかったさくら、もしかすると明智は。


「香ちゃん誰かと会ってたの?」


「親しい人物にね」


 何者かは言わないようだ、明智の勢力はもしかすると。さくらは何か情報を掴んだのか満足そうに明智の元から去る。



 そして事態は動いた。一時間後くらいだろうか、おそらく反逆者がアリスの父にその父がアリスに伝えたのだろう、7人グループにアリスからのチャット、このグループ内ではプレイヤー同士で話す行為は禁止、また個チャでのやり取りもゲームが終わるまで禁止とされている。


『反逆者の権限により、今日一人、脱落者が出ました。脱落者は横口未来、よって今後のゲームマスターは未来とする、未来に回答権は失われました。反逆者の権限は失われました、今後指名するときは、未来の個チャに連絡するように、ゲームマスターの未来だけ脱落者の答えを見ることが可能』



 唐突に反逆者に脱落させられたゲームマスター未来。未来自身も予想外だ、しかし未来だけは脱落した人物の答えを知ることができる、もちろん他言無用だ。未来は考える。未来と会った人物は花野アリス、アリスが反逆者?未来は確実に反逆者ではない。なぜなら反逆者は一人で反逆者自身が自身を脱落させることはできないからだ。よって、未来は優勢者、劣勢者のどちらかとなる。

そしてこの情報をもとに未来を除いた六人は動き出さなければならない。もう劣勢者同士はどこかで繋がっているかもしれない。まだ繋がっていない可能性もある。または未来が劣勢者だった場合劣勢者はあと一人。時は徐々に迫っている。



 黒龍は考える、なぜ反逆者は未来を落としたのか、未来を警戒している人物。確か未来曰く悟りゲーム、あの優勝者は未来だった、唯一そのゲームに参加している人物が未来を除きアリスだ。アリスが未来を警戒する可能性は十分にあり得る。このゲームは一度は一人指名して当てなければならない、逆に言えばそれっきり指名できなくなるが当ててしまえばもう指名する必要はない、ただし、これは全て黒龍がアリスに濡れ衣をかぶせるためにわざと蹴落とした、黒龍が反逆者という線も捨てきってはいけない。



「ふむ、未来さんかね、未来さんと接点がある人物は黒龍さん、朱音さん、そしてアリス君もだったかな」


 明智は考える、わざと接点のない人物、天理、さくら、特に天理なら未来とそんなに話していない、自分は反逆者ではないとカモフラージュするために特に接点のない未来を落とした、その線を明智は睨んでいた。しかし、それは明智にも言えること、明智が反逆者の可能性も0ではない。



「未来さんか…私なら黒龍を落としていたな…」


 そんなことをぼやく天理、特に動くこともせず気持ちよさそうに海を見つめる。


「このゲームは一件、優勢者が有利に見えるが実際は違う、上手く使いこなせれば最強の駒となれる反逆者、クイーン、そして弱い駒だが互いが互いを支えあう駒になれる劣勢者、ポーン、ビショップ、ルーク、ナイト、様々な駒を持ち合わせているものの連携が取れていない優勢者、そして私の立場は…」


 全く読めない天理の思考、天理が反逆者の可能性も十分にあり得る。



 アリスは明智を監視していた、明智は黒龍、さくらと会っていた、また、監視途中に未来とも遭遇、もちろんアリスは参加者だ、劣勢者がどこで落ち合うか、それがビルの中なのか、道端なのか、路地裏なのかはアリスすらわからない、しかし明智という人物は様々な人物と遭遇している。劣勢者の可能性は非常に高い。だがそれはアリスにも言えること、未来と会い、明智を監視している、それは明智とアリス、または未来とアリスが劣勢者だからではないだろうか。


 未来は脱落者にしてゲームマスター、もちろん脱落したからと言って答えは教えられない、未来は指定のレストランで待機する、まだ報告は来ていない、反逆者は指名したところで間違えれば脱落早めに反逆権を使ったのが妥当だろう、なぜ未来が選ばれたのか。反逆者の第一目的、混乱、しかし、反逆者とて、一度は指名しなければならない、全員慎重に事を進めているようだ。

ただ、これだけは言える、今現段階、どの陣営も生き残っている、未来が優勢者だろうと劣勢者だろうと反逆者の手によって落とされた。

この時点で優勢者、劣勢者、反逆者、誰がどの陣営かわかっただろうか?


未来  脱落 GM(ゲームマスター)反逆者×

朱音  生存

黒龍  生存

アリス 生存

明智  生存

天理  生存

さくら 生存


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