第8話 目的についての考察

隣の凛花に目をやると、ん〜?といった眼差しで返されていつも通りである。特に変わった様子は無い。


俺のすぐ傍にすっぽりハマって凛花の逆側には若生がいる。それで視線の先には阿部さん。彼女の頭に乗っているカチューシャは熊に変えられていたが、女の子が付けている物は全部可愛く見えるから不思議である。あえてこちらから突っ込まない。


この4人のフォーメーションが大分落ち着く。近況とか語るでも無く面白いことを求められるわけでもない。


だから、ほんとにいつも通り、不意に腕を置く場所が行方不明になって、凛花の頭にポプリと俺の手が落ち着いた。


犬耳だからというわけでも理性を失ったわけでもない。いつも通りに。


ぽんぽん、と。


うん、やっちまった。


気づいた時には周りからの視線が痛いし、それもカップルたちへ向けるものとはまた違う好奇の目。


カップルが醸し出す甘い空気も持て囃されるのは過去の話。それよりも残り4人の雑多な連中は俺と凛花の主従関係の方が気になるらしい。


完成されたサンクチュアリ(不可侵領域)よりも歪な方が俗世は好まれるようです。


うん、自分でも何を言っているかはわからないが、とにかく焦るわ。


「今日の、ワンコ」


と若生が言ってきた。俺に何か言えよということなのだろうか。


「・・・モフモフが200%増量中でして」


と凛花が言う。期間限定なのだろうか。それなら、頭を撫でたくなるのも仕方ないかもしれない。


「反則だよね。それを見た飼い主の反応ってば如何に?」


そんな感じで阿部さんがノッてきたので、答えることにする。


「いや、もう・・・最高にモフいです」


おお〜、と周りからは歓声が上がる始末。


っていうか、首藤はこのメンバーで誰を狙っているのだろうか。


真っ先に凛花は除外するとして(他意は無い)、カップルを除けば若生か阿部さんなのだが・・・若生は頼まれて参加してるんだよな?じゃあ残るは阿部さんしかいない。


阿部さんはほんわか雰囲気にいつまでも馴染んでいられる数少ない凛花の友人である。若生が言うには、2人と自分の時間の速さが違うらしい。何か1人だけ取り残される恐怖心に苛まれるんだとか。わからなくはない。


凛花と阿部さんが似てるかというとそうではないし、要はお互いのフィーリングの問題のようだ。だから、俺からすると阿部さんは小動物のような可愛い感じではなく、背が高いから普通に美人に分類されるのだ。


「合コンってこんな感じなんだ。ふうん」


メンバーが初対面でもなく、半分はいつもと変わらないから、それを喜んでるのか、退屈しているのか微妙な表情をしている凛花。


まさかおまえが言い出しっぺなのか?


「あっくん、楽しい?」


「俺のことはいいから自分が楽しめばいいだろ」


「楽しみ方がわかんない」


合コン行きたいとか自分で言った癖に、他人に委ねる鬼畜。


いや、俺も何したらいいかわからんけども、このメンバーなら少々込み入った願望も通るんじゃ無いか?



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幼馴染がいつもと違う行動をする場合 とろにか @adgjmp2010

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