第6話 わんこ生成

「まじで・・・わんこ?」


「み、耳が・・・ふさふさの耳が・・・!」


凛花に犬耳が生えている。


それは若生にもちゃんと見える代物らしく、すぐに凛花の頭を撫でてわしゃわしゃと耳を触り始めた。


「か〜わ〜い〜い〜!!」


「ま、待てよ。凛花、なんともないのか?」


「なんともない。頭にふわふわが乗っかってる感じ」


若生はピンと立ったふさふさの耳を右に左に引っ張り遊び始めた。


「ちょっと自分で見てみろよ」


スマホで写真を撮って凛花に見せてやると、おお〜と感嘆の声を上げる。


「これは・・・このままでいいの?」


「可愛いからこのままカラオケ行ってみない?」


「あっくんは、どう?犬耳かわいい?」


「まあな。普通に似合ってるとは思うぞ」


「じゃあこのまま行く。みんなびっくり?」


「凛花、ついにほんとの忠犬になっちゃったね」


「ところで、これって首輪取ったらちゃんと元に戻るんだよな?」


俺は首輪に手を伸ばそうとした。だけど、ぷいっと首を退け反らせる凛花。


「・・・やだっ。取らないで」


その拒否の仕方が、散歩中にリードを引っ張っても微動だにしない犬を連想させる。


「わんわんッ」


「どこまで犬でいたいんだよおまえは」


「くぅーんくぅーん」


甘えるような鳴き声に、俺は思わず手を凛花の顎下に持っていってしまった。今度は首輪を外す気が無いのを知ってるかのように、俺の手に顔を委ねてくる。


こしょっ。


俺の指が少し動いてくすぐったそうに顔を赤らめる凛花。嫌そうではない。がぶっと噛みつかれそうな感じもない。


「あっくん、それ・・・・・・やばぁ」


こしょこしょっと指を動かしてやると、とても気持ちよさそうにしているではないか。


あー、なんかめんこいな。こいつ。


「あのさ・・・見せつけスキンシップは家でやってくれない?」


若生にジト目で見られる。いや、俺こいつの飼い主やるからいいじゃん。犬にするのと一緒で、今の時間はただの撫で撫でタイムだろ?癒しの時間だ。アニマルヒーリングだ。


「めっちゃ良いアイテムあげちゃったな。今日の主役は凛花で決まりね」


「わお〜ん」


感謝するかのように凛花が犬の鳴き声で答えた。



ーーーーーー


そして、そのまま授業を受けた俺たちだったが、数学の先生から凛花の耳に対して何のツッコミもなく、受験対策の過去問引っ張り出してずっと解説している始末。どんだけ生徒の学力上げたいんだこの人。


そしてクラスのやつらからの反応も薄い。若生からは、あんたがめっちゃ嫉妬するからみんな気を使うんでしょと言われる始末。


なんだよそれ。わかりづれーよ。


いつもと変わらず教室はピリピリした緊張感を保ったまま放課後になった。


「じゃあ、行くか。合コン」


「今からでも断れるよ?凛花」


「・・・・・・行くったら行く」


なんでこいつが合コンに出たがっているのかわからない。アイス食べたいなら買って帰ればいいのにな。なんでだろうな。

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