光を燻しタルタロス(3)

 ユピテウスは、背後の人影に問いかけた。


「貴様は誰だ」


 その人影はクスクスと笑い、ユピテウスに話しかける。


「代償を払うのは彼じゃない。あの少年だよー」


 人影は、その細い指でアヴィオールを指差した。光の奔流ほんりゅうの中、アヴィオールの姿は黒く塗り潰されてよく見えない。

 

「私のお守りはね、私が守りたいと思ったヒトしか守れない」


「お前は誰だ」


「あの少年が生き返ったところで、面白い展開になるとは思えないなー」


「お前は誰だ!」


 その人影は、深紅の瞳を細めて笑う。


「ラドンの娘って言ったらわかるかなー?」


 ユピテウスは肩を震わせる。


「もしかして、私のこと忘れちゃった? あーあ。忘れちゃったんだー」


 魔女の手がユピテウスに重なる。光が一層輝きを増す。


「おじさんを代償にしたら、代償が足りなさ過ぎて二人とも石屑になっちゃう。だから、魂が若々しい少年を使った方が確実だよー」


 魔女は微笑み、ユピテウスに手を重ねた。

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