迷光より出づ(5)
スピカは目を開く。そこが夢の中ということは、すぐに理解した。
自分の目の前には、男性が一人立っている。知っている。彼は、
彼は自分を見下ろして、柔和な微笑みを浮かべた。
「偉大なことだ。君は竜に見初められた」
何を言われているのか理解できず、スピカは疑問を口にしようとする。しかし彼女の口は動かない。
ユピテウスは何度もめでたいと口にする。しかし、スピカはと言えば、心に何か引っかかったかのような居心地の悪さを感じていた。
この感情は自分のものではない。スピカは察する。この体の持ち主が感じていることだと、直感めいた勘で判断した。
『他人の記憶を盗み見るなんて、はしたないわ』
エウレカの声が聞こえる。
スピカは辺りを見回した。部屋の壁にかけられていた姿見は、スピカとは違う別人の姿を映し出していた。
金色の髪に青い瞳。ウェーブが掛かった髪は引きずる程に長い。本来のスピカとは対照的な、儚げな容姿の少女。それが今のスピカの姿だった。
『眠りなさい』
空間から闇の中に弾き出されたかのように、彼女の体は闇を舞った。意識は薄れていく。
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