それは好意か勘違いか

 小学生の時、私を含め仲の良い3人組がいた。登下校を共にする幼馴染の女子2人と背の低い男子。放課後に遊ぶこともあった。

 ある日たまたま1人の女子が用事があるとのことで、先に帰るよう促された。私と男の子2人で下校することになった。こういったこと自体は別段なんともなく、よくあることで、私が居残りして他2人だけで帰ったり、女子2人だけで帰ったりすることもあった。

 私と男の子2人、下校中何を話していたのかは覚えていない。ただなんとなく、好きな人がいるかどうかの話になったのだと思う。

 彼は「オレね、好きな人ここにいるよ。」とだけ言った。

 私は「ふーん。」と答えたような気がする。

 聞いた瞬間の私は、これは告白なのか、と疑問に思っていた。「ここ」を指す場所が、今私たちが下校しているこの通学路、さらにいうと私と彼が歩いている今この瞬間の場所なのか。それとも、この学校、住んでいる地域などと広い範囲を指すのか。一緒に住んでいる母のことを指しているのではないか。突然の発言に、小学3年生くらいの私は、その瞬間一生懸命考えていたが、最終的にはスルーしたのだと思う。少年よ、すまない。もしそれが告白なんだとしたら、当時の私にはまだそれを恋愛的感情の好意として受け取る勇気がなかったのだ。

 その後私はこの時の疑問をしばらく抱えたまま生活することになる。というのも、中学に上がってしばらくして、彼は転向してしまったのだから。もう1人の友人に相談しようにも、彼女もまた受験をして同じ学校へは進学しなかったのである。

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