第94話:黒田、ルビアの計画に気づく
「どうしよう。推しのサンドウィッチになりそう」
自室で頭を抱える私は、予想外の展開に頭が追い付いていなかった。
グレンの気持ちを聞いて、平熱を維持しているのは奇跡だろう。嬉しい気持ちが湧き上がってくるものの、素直に喜ぶことはできない。
現実で逆ハーレムをやっても、許されるのだろうか。グレンとアルヴィに嫌われないだろうか。領民に浮気令嬢だと叩かれないだろうか。
お父様に認められたグレンと、イチャイチャカップルイベントをこなしたアルヴィ。恋愛経験ゼロのアラサー女子の身としては、常に恋愛はラストチャンスという思いが強く、どちらも引き下がるなんて行動はできなかった。
二兎を追う者は一兎をも得ず、という言葉があるが、強欲の黒田にそんな言葉は通用しない。
心の中で暴走する黒田が逆ハーレムを所望しているのだ。ここまで来たなら、推しを独り占めしたい、と。
どうしよう! アルヴィとのカップルイベントで良い夢を見過ぎて、欲望を抑える方法を失ってしまった……!
ジグリッド王子がいない分、逆ハーレム感が少なくていいのでは? という謎の意見で正当化する黒田がいる。
きっと今頃は、ジグリッド王子とルビアで仲良くしているはず。それなのに、姉である私が問題を起こせば、妹のルビアの婚約にまで影響しかねない。
そんなことを考えていると、コンコンッと部屋をノックして、ポーラが訪ねてきた。
「クロエお嬢様、ジグリッド王子がいらっしゃいました」
ノオオオオオオオ! どうして私の元に推しが集まるのよ!
クロエに推しホイホイシステムでもあったのかしら。
「ちょっと言っている意味がわからないのだけれど、フラスティン領にジグリッド王子がいらっしゃったの?」
「おっしゃる通りです。もうすぐ夏祭りが始まりますし、旦那様がお相手をするのは困難になります。クロエお嬢様が対応するべきかと」
混乱する私とは違い、ポーラは冷静だ。明らかにその言い分が正しいと思ったので、ジグリッド王子の元へ案内してもらうことにした。
応接室に入ると、本当にジグリッド王子が座っていたので、原作が完全崩壊していると察する。
「どうしてここにいるのか、聞いてもいい?」
「急遽決まったんだが、王子としての仕事のために来たんだ。正確に言えば、母上とルビア嬢に押し切られた、という感じなんだが……」
もはや、ルビアの考えがまったくわからない。自分のイチャイチャする時間を捨てて、私にジグリッド王子を押し付けてどうするのだろうか。
「ルビアの姿が見えないのだけれど、一緒に来ていないの?」
「ルビア嬢は、母上とライルードと一緒に
こっそりと呪縛解除記念パーティーをしてるんじゃないわよ! そこは私も混ぜなさい、
って、それどころじゃない。主人公はルビアなのに、このままではジグリッド王子とも恋愛イベントが発生する。
この時期のフラスティン領に視察に来たのであれば、発生するイベントは一つしかない。
「もしかして、夏祭りの視察に来たの?」
「まあ、そういう感じだな。一応、俺の浴衣も用意してもらっているみたいだ」
ジグリッド王子の聞いて、さすがに鈍感な私でも察した。
すべて実家に帰省する前から仕組まれていたことであり、ルビアの計画的な行動で間違いない。夏祭りを視察するとなれば、私が案内することになるだろうから。
つまり、夏祭りデートイベントをしてこい、というメッセージである。
いったいルビアの目的は何? 私とジグリッド王子を結び付けたい、なーんてことはあるまいし……。
いや、まさかね……。まさか……。ま、まさか………?
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