第36話 新しいメンバーと運用計画



「このクッキーっていうのは本当に美味いな!」



 部屋に戻るなり、ククリちゃんはテーブルの上の菓子箱からクッキーを食べ始めた。

 この菓子箱はどうやらアーティファクトであるらしく、クッキーが無くなると自然に補充がされる。

 補充には大体一日かかるみたいだが、それでも無限に食料を出すって凄い代物だと思う。

 栄養は偏りそうだけど、これさえあれば飢えることもなくなるだろうから、貧困に苦しむ集落なんかに設置したら神の如く崇められるかもしれない。



「凄いね。まだ食べられるんだ」


「おう! これならいくらでも食べられるぞ!」



 甘いモノは別腹というが、それにしたって限度がある。

 ひょっとしてククリちゃん、胃だけは変身後のままなんじゃないだろうか……



(……気にはなるけど、美味しそうに食べてるし別にいいか)



 本当は食べ過ぎに注意した方がいいのかもしれないが、今日はたくさん動いたのも確かなので好きに食べさせておくとしよう。

 ……ククリちゃんを見ているといつまでも眺めてしまいそうなので、目の前のことに意識を集中する。



 まずスケジュールについてだが、これはまだ正確なものは作れないと思っている。

 不確定情報が多いので、大まかに予定を組むことになるだろう。

 目下やることとしては、先日と同様、いくつかの冒険者パーティを狩ることだ。

 今日は様子見もかねてノータッチだったが、明日からは定期的に行っていくことにしよう。

 そこで新たに加わったメンバーの調整も行いたい。


 新たに加わったメンバーは3人。

 獣人のリウルさんとレンドさん。それにゴブリンリーダーのガクさんだ。

 三人とは既に召喚契約を交わしているため、召喚も可能となっている。

 正式に僕の配下になったことで、ステータスの確認も可能だ(ちなみに、この前リウルさんのステータスを確認したときは本人に参照モードで見せてもらった)。



「ステータス」



 僕はステータ表示を起動し、レンドさんとガクさんのステータスを確認する。





 名前:レンド

 レベル:134


 種族 :獣人族

 職業 :拳闘士

 HP :23000

 MP :1500

 STR:900

 AGI:900

 VIT:500

 INT:300

 DEX:750

 LUK:800


 スキル:殴打 LV12、突進 LV10、格闘術 LV8、拳闘術 LV3



 名前:ガク

 レベル:98


 種族 :ゴブリン族

 職業 :統率者

 HP :8000

 MP :1500

 STR:200

 AGI:200

 VIT:200

 INT:200

 DEX:200

 LUK:200


 スキル:殴打 LV9、突進 LV5、統率 LV3、棍棒術 LV3





 レンドさんはリウルさんと同じ獣人だが、格闘家から武闘家ではなく拳闘士に派生しているようだ。

 詳細はわからないけど、恐らく文字通りこぶし主体の近接格闘タイプなのだと思う。

 リウルさん程ではないがレベルもそこそこ高く、高ステータスな為、色々な場面で活躍してくれるに違いない。


 そしてゴブリンリーダーのガクさんは、統率者という強力な職業に就いている。

 統率者は、同じ種族の下位の者を文字通り統率することが可能で、その統率下にいる者達にバフ効果(ステータス強化)を与えることができる。つまり、配下が増えれば増える分だけ戦力が増すため、ステータス以上の働きが期待できる。

 ステータス自体も普通のゴブリンよりも高いため、自ら戦闘をしても強い。

 冒険者ギルドではBランクモンスターとして扱われていたが、数が増えるだけ脅威度も増すので冒険者の間ではかなり嫌われていた。


 ガクさんに関しては、スケさんやカクさん、そして僕の魔獣召喚とも相性が良いし、戦力としてはかなり期待できるハズだ。。

 性格はかなり曲者っぽいが、悪い人ではなさそうだし本人の出世欲も強いので、しっかりと働いてくれるだろう。



 さて、編成についてだけど、冒険者への対応は同時に複数個所となるケースも考えられるし、基本は分散させるつもりだ。

 とりあえず、スケさんカクさんガクさんはセットで運用するとして、サムソン、ククリちゃん、リウルさん、レンドさんは、僕の召喚獣とセットで運用するようにしよう。

 これで最大5エリアへの対応が可能となる。余程のことがない限りは十分に凌げるハズだ。


 ただ、明日以降は『ティドラの森』の冒険者狩りも同時に行うので、手数があるにこしたことはない。

 召喚契約は残り2枠あることだし、あともう一人くらいはスカウトしておきたいところである。



「レブル、レブル、仕事は駄目だぞ」


「えっと、仕事はしてないよ?」


「でも、難しい顔してたぞ」


「明日からのククリちゃん達の運用方法を考えていたんだよ」


「っ!? 明日は俺も出撃できるのか!?」


「お願いするつもりだよ。初仕事だね」


「おお! 楽しみだぞ!」



 ククリちゃんは初出撃が嬉しいのか、僕の周りをはしゃいで回る。

 そのとき、ふと鼻につく臭いを感じた。



「ククリちゃん、明日は出撃もあることだし、早めにお風呂に入って寝た方が良いと思うよ」


「お風呂? お風呂ってなんだ?」


「え? お風呂知らないの?」


「うん。なんだそれ?」


「えっと、お湯で体を流したり、浸かったりするんだけど、したことない?」


「水浴びならあるぞ?」



 なんと、本当にお風呂に入ったことがないらしい。

 僕の部屋には備え付けの風呂場があったので気にしていなかったが、居住区にはないのだろうか……



「うーん、それじゃあ、お風呂入っていく?」


「面白そうだし、入ってみたいぞ!」



 そういうことなら、早速お風呂の準備をしよう。

 お湯は沸かしておいたからもういいとして、問題は着替えか。



「ククリちゃん、寝る時に着る服って持ってる?」


「……? そんなの無いぞ」



 無いのか……

 できればこの服も洗っておきたいんだけどな……


 ククリちゃんの服は特別製なようで、彼女が変身しても一体化することで決して破れなくなっている。

 ただし、デザインはほとんど原始人のソレで、汚れとかもそのままなので少々汚い。

 せめて洗濯して清潔感を保ってあげたいところだけど……



『ギアッチョさん、ちょっと宜しいですか?』


『はい。なんでしょうレブル様』


『ククリちゃんに着せる寝間着が欲しいんですけど、備品にあったりしませんか?』


『それでは、獣人用の子供服を用意しましょう。私の部下に届けさせますので、暫しお待ちください』


『ありがとうございます。凄く助かります』



 ククリちゃんの寝間着については、ギアッチョさんが用意してくれることになった。

 やはり備品については事務に聞くのが一番だな。



「さて、それじゃあお風呂に行こうか」


「おう!」




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る