第27話 戦闘訓練②



 サムソンを標的としたスケルトン達が一斉に向かっていく。

 同時にサムソンも自ら前に出て、勢いよく<突進>をしかける。



「うおぉぉぉぉぉぉっ!!!」



 普段の大人しい雰囲気とは打って変わって、雄々しい雄叫びをあげるサムソン。

 彼の<突進>はレベル3だったハズだが、その巨体のお陰でスキルレベル以上の迫力と威力がある。

 最初の突進だけで、スケルトンが5体ほど砕け散った。



「おお! 意外と強いなアイツ!」


「うん。流石はレベル58ってところだね」



 サムソンはそのまま棍棒を振り回し、スケルトンを蹴散らしていく。

 <棍棒術>はレベル5と<突進>以上のレベルであり、その破壊力はスケルトン如きでは耐えきれるものではなかった。



「スケルトンじゃ全く相手にならないな……。スケさん、カクさん援護射撃をお願いします」


「了解しやしたが、アッシらの腕じゃスケルトンにも当たっちまいますぜ?」


「気にせず打って構いませんよ。時間さえ稼げればいいので」



 矢じゃスケルトンを一撃では落とせないし、多少のダメージなら戦闘にはほとんど支障がない。

 サムソンの気を引ければ十分だ。



「ふん!」



 飛んできた矢を、サムソンは棍棒を振るうことで弾く。

 彼のVITなら、スケさん達の矢でも大したダメージは与えられないハズだが、それでも頭部に刺さればそれなりに危険だ。

 完全に無視することはできないだろう。



「よし、チャージ完了。スケルトンソルジャー召喚!」



 チャージが完了次第、次の召喚を行う。今度はスケルトンソルジャーを10体召喚する。

 以前だったら20秒以上かかっていただろうチャージ時間が、今では10秒足らずで完了するのだから、ステータスとは本当に偉大である。



「カラカラカラカラ!」



 スケルトンソルジャー達が、声にならない声を上げながら突撃していく。

 その速度は通常のスケルトンよりも速く、武器も持っているため攻撃力もそれなりに高い。

 サムソンは最初のスケルトン達を粗方片付けつつあったが、スケルトンソルジャー達を視認するや即座に距離を取る。

 武器を持った相手囲まれるのは不利と判断したのだろうか?

 流石は自ら地下の大空洞で修業をしているだけあって、状況判断が早い。



「この距離だと、アッシらの腕じゃ狙えませんね。近付いて打ち続けますかい?」


「いや、大丈夫です。もしまた射程に入ってきたらお願いします」



 どうやら、スケさんとカクさんの弓も射程外のようだ。

 それを見切ったのだとしたら、観察眼もかなりのものである。

 こういった要素はスキルでも判断できないので、やはり実戦を見たのは正解だったようだ。



「<薙ぎ払い>ぃぃぃぃぃ!」



 サムソンはさらに<薙ぎ払い>のスキルを発動し、スケルトン達を文字通り薙ぎ払う。

 このままでは本当に全滅させられてしまうので、僕もすかさず動く。



「っ!?」



 僕が近づいたことでサムソンの警戒が一気に強まる。

 恐らく、以前僕に殴られたことを思い出したのだろう。

 サムソンは攻撃の手を緩め、防御を固める。


 僕はそれを視界に収めつつ、サムソンの至近距離でスキルを発動する。



「ゴーレム召喚!」


「えっ!?」



 僕の行動が意外だったのか、サムソンから疑問の声が漏れる。

 しかし、僕は最初から直接攻撃をするつもりなどなかったのだ。


 召喚されたストーンゴーレムは2体。

 眼前に突如召喚されたゴーレムに、サムソンは慌てたように棍棒を叩きつけた。

 しかし、ストーンゴーレムは頑丈で、怯むことなくサムソンを掴みにかかる。



「くっ……」



 ストーンゴーレムの動きは鈍重で、サムソンも捕まりはしない。

 ただ、サムソンの動きもそこまで速くはないため、振り切るには至らなかった。

 そして……、



「カラカラカラ!」



 処理しきれなかったスケルトンソルジャーの攻撃がサムソンに突き刺さる。



「くそっ……!」



 スケルトンソルジャーの攻撃はサムソンに大きなダメージを与えることはないが、細かいダメージは入る。

 さらに、そこにストーンゴーレムの攻撃が加われば……



「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「はい、<送還>っと」



 僕はストーンゴーレムの拳が振り下ろされる前に、<送還>を発動させる。



「……あれ?」



 サムソンは防御の体勢を取ったまま、いつまでも来ない攻撃に疑問の声をあげる。



「訓練は終わりだよ。お疲れ様、サムソン」



 僕はそう言いつつ、未だ攻撃を続けているスケルトンソルジャー達も<送還>する。



「終わり、なんですか?」


「うん。これはあくまでも訓練だからね。どちらかを倒すのが目的じゃないから」


「そう、ですか……」



 と、何故か残念そうに呟くサムソン。

 何だろう、もしかして、あのまま続けて欲しかったのだろうか?

 サムソンは自ら地下の大空洞で魔獣達を相手にトレーニングを積んでいるそうだし、あの程度じゃ物足りなかったのかもしれない。

 一瞬、ドMなんじゃないかという疑いを持ってしまったが、流石にないかとすぐに否定する。



「ともかく、サムソンの実力は把握できたから、次はククリちゃんかな」


「俺の出番か!?」


「うん。それじゃあ、アッチの陣地で準備宜しくね」


「わかったぞ!」



 ククリちゃんが嬉しそうに向こうの陣地へと駆けていく。

 それを見送りながら、これからあの幼女をモンスターで攻め立てるということに、若干の後ろめたさを感じる僕なのであった。



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