第25話 監視体制の強化
翌日になり、僕は早速ワールドマップを起動する。
(……よし、異常はなさそうだな)
監視設定は仕込んであるが、眠りが深くて警報に気づけなかったなんてこともあり得る。
それを避けるために、できれば自分一人だけでなく何人かで監視体制を取りたいのだが、可能なのだろうか……
(まあ、夜間はあまり心配しなくてもいいとは思うけどね……)
冒険者は基本的に夜間活動をしない。
だから、今後も夜間に監視警報が鳴る可能性は低いと思われる。
ただ、先日はBランクと思われる冒険者パーティを一つ壊滅させているため、捜索隊が出ている可能性も僅かながらあった。
そのため、昨晩は少し心配だったのだが、どうやら杞憂だったようである。
(さて、今日のすることは、と……)
僕は先日のうちに、今後のスケジュール表を作っていた。
前々世でサラリーマンだった父の真似をしたのだけど、成程、これは確かに良い。
学生時代はあまり縁がなかったが、スケジュール管理をすると色々とメリットが見えてくる。
予めスケジュールを組んでおけば段取りよく仕事を進めることもできるし、やるべきことの漏れも無くせる。
何か急務が入っても、スケジュールを調整すれば、あとでごたつくことも減るだろう。
(社会人って、本当色々と考えていたんだなぁ……)
父は普通の平社員であったが、そういったことはしっかりとしていたのだなと、今になって感心してしまう。
もう少し孝行しておけば良かったなと思うが、それ以前に僕は親より先に死んでしまうという最大の親不孝をしていることに気づき、居た堪れない気持ちになった。
(よくテレビや小説で、「先立つ不孝をお許しください」なんてセリフを聞いたけど、僕はそれすら言えなかったんだよな……)
不慮の事故だったので仕方がなかったとも言えるのだが、転生した直後の僕は夢の異世界転生を果たしてしてテンションが上がっており、そんな当たり前の感情すら抱かなかった。
十数年も経過してからそんなことに気づくなんて、僕は本当に親不孝者である。
(……なんだか、朝っぱらからブルーになってしまったな)
こんな気分では仕事に影響が出てしまう。
僕はパンパンと自分で頬を叩いて活を入れる。
(よし、まずはザッハ様のところに行こう)
………………………………
……………………
…………
「失礼します」
「ん? レブルか。どうした? ギアッチョでも解決できない案件でもできたか?」
「そういうワケではないのですが、ザッハ様に直接確認したいことがありまして」
僕はそう言って懐からワールドマップのリモコンを取り出す。
「このワールドマップですが、確認するとSUBと書かれていて……。もしかして、親機ってザッハ様が持っていますか?」
「ああ、確かそんなことが書かれていたな。一応私も持っているぞ。ホラ」
そう言ってザッハ様は机の引き出しからリモコンを取り出す。
「ちょっと失礼していいですか?」
「構わんが……」
僕はザッハ様の了承を得てからリモコンを操作させてもらう。
ワールドマップを起動し、エリア表示をすると――
「やっぱりだ。この親機と僕の持っている子機は、連動しているみたいですね」
僕が自分の方で設定した監視設定が、ザッハ様の持つ親機の方でもしっかりと設定されていた。
「もしかして、昨日ピーピーと鳴っていたのは……」
「はい。僕が監視設定をしたからですね」
「すまんな。よくわからなかったので暫く様子を見ていたのだが、途中で音が止んだのでそのまま放置してしまった」
「いえいえ、こちらこそお騒がせしてしまってすいませんでした」
僕は音が鳴った理由と、監視設定についてザッハ様に説明する。
「成程、そういうことだったのか」
「はい。それでですね、今後も度々警報が鳴ると思うのですが、もし鳴りやまなかったら僕に連絡をいただきたいんです」
「構わんぞ」
「ありがとうございます。なるべく僕が反応するつもりではありますが、不測の事態で気づかない可能性もあるので、助かります」
「そのくらいのことであれば問題はない。……それだけか?」
「はい。お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます」
「いや、構わんよ。私も書類仕事が終わり次第、実務の方に移るつもりだ。そうしたら、また宜しく頼むぞ」
「かしこまりました。……それでは、失礼いたします」
僕はそう言って執務室を後にする。
ザッハ様は相変わらず忙しそうにしていたので少し心苦しかったが、これで二重監視体制が取れるようになったので、一つ憂いが解消された。
次は戦力の確認である。
(ククリちゃん、起きてるかな……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます