第19話 ククリちゃん
階段を上ると、どうやらまだここは地下のようであった。
「ここは地下何階になるんですか?」
「ここは地下3階になります」
ギアッチョさんの話によると、魔王城は城の本体である上層部分がダンジョンになっているらしく、それ以外の居住区や業務区画は全て地下にあるのだそうだ。
さっきまで僕達がいたのが、業務区画及び幹部部屋のある地下4階、その下がサムソン達の住む地下5階、そしてその下が大型魔獣などが住む地下6階(大空洞)ということになる。
「なんで、業務区画を挟んで居住区があるんですか?」
「居住区は隣接していた方が効率が良いためです。距離的な意味で公平性を保つ意味合いもあります」
ああ、学校でいう職員室や保健室の場所とか、自販機のある階みたいな感覚なのか……
確かに共用施設の類は、なるべく真ん中寄りに配置したほうがいいだろう。
福利厚生の考え方まであるとか、本当しっかりしているな魔王軍……
さっきから感心してばかりである。
「おい」
「?」
今、誰かに呼び止められたような?
振り返ってみるが、誰もいなかった。気のせいかな?
「コッチだ!」
「痛い!?」
甲高い声とともに、何かが
魔族の人体構造は人間とほぼ変わらないので、脛――つまり弁慶の泣き所を打たれると普通に痛かった。
痛みで視線を下げると、そこには小さな女の子が立っていた。
「だ、誰?」
「俺はククリだ! お前こそ誰だ!」
「僕はレブルだけど……」
「レブル……? 知らないぞ!」
そんなことを言われても困ってしまう。
一応僕は朝の集会で紹介されたハズなんだけど、この子は見てなかったのか?
「この子は……。レブル様、失礼しました。この子は龍人族の将、グルガン殿の娘です。若い個体ですし、恐らく朝の集会には参加しなかったのでしょう」
龍人族のグルガン……って人のことは知らないが、どうやらザッハ様の配下の娘であるらしい。
「ククリ殿、この方は魔王軍の幹部の方です。くれぐれも粗相のないように」
「幹部? じゃあコイツ、偉いのか?」
「はい。ククリ殿のお父様より偉いです」
「親父より偉いのか!?」
娘さん――ククリちゃんがギアッチョさんに食い気味に詰め寄る。
彼女の背丈はギアッチョさんの下腹部までくらいしかないため、子どもが親に何かをねだっているようにしか見えない。
ククリちゃんは、ギアッチョさんが肯定すると、今度は俺の方に縋りついてくる。
「なあ! お前偉いんだろ! だったら俺を配下に加えてくれよ!」
「ええぇ!?」
配下に加えてくれって……、こんな子どもが何を言い出すんだ!?
「む、無理だよ! 君みたいな子どもを配下にするなんて、駄目に決まっているじゃないか!」
「俺は子どもじゃないぞ! これでも18歳だ!」
「う、嘘ぉ!?」
この見た目で、18歳!?
って、人間じゃないんだから、そんなこともあるか……
確かさっき龍人族って言ってたし、成長が遅い種族なのかもしれない。
「レブル様、龍人族の18歳は、人間で言うところの10歳未満です。十分子どもと言えるでしょう」
「そうですよね……」
「お前、余計なことを言うなよ! 俺は大人だぞ!」
うん。完全に子どもだ。大人は自分で自分を大人だなどとは言わない。
しかし、子どもに対してそれを指摘しても無駄だろう。
「え~っと、ククリちゃん。ククリちゃんは体も小さいし、もう少し大きくなってからじゃないと雇えないかな」
「小さくないぞ! ホラ!」
そう言ってククリちゃんは、拳を握りしめて蹲ってしまった。
一体何事かと思い腰を落そうとする僕を、ギアッチョさんが制止する。
「お下がり下さいレブル様。その位置ですと、少々危険です」
「危険?」
僕が尋ね返すと、ギアッチョさんはそれに応えずに腕を後ろに引いた。
その瞬間――
「どうだ! 小さくないだろ!」
なんと、ククリちゃんがドラゴンに変身していた。
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