第15話 ゴブリン達の襲撃
◇冒険者side
「……なあおい、すげぇ瘴気だぞ? やっぱやめねぇか?」
斥候として先行していた『中級マッパー』のチョウジが、戻るなりそんな弱音を吐く。
「ダメに決まってるだろ。デスゾーンの情報を少しでも持ち帰らないと、Aランクなんて夢のまた夢だぞ?」
「そうだが、命あっての物種だろ……」
「チョウジは相変わらず心配症だなぁ。デスゾーンに入るって言ったって、入り口近辺のモンスター情報を探るだけだぞ?」
弱音を吐くチョウジに、『中級魔術師』のロンドが呆れたような態度を示す。
俺も全くの同意見だったため、ロンドに相槌をうった。
「ロンドの言う通りだ。今回のクエストはAランク向けではあるが、討伐する必要はないから逃げに徹せられる。逃げるだけなら、チョウジの力があれば十分可能だろう?」
チョウジの職である『中級マッパー』は、マップ情報を安全に取得するための回避スキルや逃亡スキルを多数所持している。
逃亡することに関しては、上級職である『暗殺者』にも引けを取らないレベルなのだ。
「そりゃ逃げには自信があるさ。ただ、一部のモンスターには目くらましの類が通じないこともある。そうなると、全員で逃げるのは難しいぞ?」
「それってほとんどが死霊系だろ? そこは俺やドッジに任せておけば大丈夫だって」
ロンドの職である『中級魔術師』と、ドッジの職である『高僧』は死霊相手に有効なスキルをいくつか持っている。
相性の有利さえとっていれば、格上相手でも十分通用するため、対策としては問題無いだろう。
「そうだぞ。それに俺の<先見>にジルの<パリィ>もある。奇襲対策もしっかりできているから心配はないだろう」
俺の職『剣客』には上級職である『剣豪』と同様に<先見>のスキルがある。
<先見>はモンスターの奇襲やランダムエンカウントの予兆を感知することができるため、こういったクエストでは非常に重宝されるスキルだ。
ジルの『騎士』スキルである<パリィ>も、事前に起動しておけばオートで攻撃を弾いてくれる優秀なスキルで、仮に奇襲をかけられたとしても味方を自動的に守ってくれる。
俺達のパーティは人数こそ少ないが、安定性の高い優れたパーティという自負があった。
「そうだといいが……っ!? ゼン、感知に反応だ。数は10。恐らくゴブリンだ」
「ゴブリンだと? さっき先行したときに見つけられなかったのか?」
「すまん。だがさっきは確かにいなかったんだが……」
チョウジが索敵を失敗したとは思えない。
となると、俺の<先見>の範囲外でモンスターが出現したということなのかもしれない。
「まあ、そんなこともあるだろう。幸い相手はゴブリンだ。油断しなければ何も問題は無い。各位、迎撃するぞ!」
『応!』
俺とジルが前衛となりロンドとドッジが後方で構える。
そのさらに後ろでチョウジが警戒を行うのが、俺達の基本である布陣だ。
「……あれは、ゴブリンソルジャーか」
前方に迫ってくるゴブリンは、通常のゴブリンよりも戦闘力の高いゴブリンソルジャーだった。
ただ、所詮はゴブリン。『剣客』と『騎士』の敵ではない。
「後方にゴブリンアーチャーとメイジもいる、奴等、一丁前に陣形を組んでいるぞ」
どうやらチョウジの<マッピング>に奴らの詳細情報が見えたようだ。
アーチャーとメイジは中々に面倒だな……
「ロンド、アーチャーとメイジを仕留めてくれ。ドッジは<プロテクト>で流れ弾の対処を頼む」
「任せろ!」
「了解です」
二人の返事と同時に、戦闘が開始される。
奇襲気味に繰り出した俺の一撃が、ソルジャーの片手剣とぶつかり合う。
(防いだ!? コイツら、レベルが高い!)
通常のゴブリンソルジャーであれば、今の一撃を防ぐことはできなかっただろう。
それを防いだということは、ある程度ステータスが高いということを意味する。
「気を付けろ! コイツら、結構レベルが高いぞ!」
ゴブリンとはいえ、高レベルであればそれなりに危険性は増す。
気を引き締めねば、手痛い反撃を喰らいかねない。
「ジル! 出し惜しみせずスキルを使っていけ!」
「わかった! <ヘビースラッシュ>!」
ジルは応じると同時に即座にスキルを使用する。
<ヘビースラッシュ>は文字通り重い一撃を放つ剣技で、攻撃力が高い。
ゴブリンソルジャーは片手剣では防ごうとするが、その重みに片手剣ごと体を切り裂かれる。
(よし!)
スキルを使用すれば、問題なく倒せそうである。
俺も早々に鍔迫り合いを止め、スキルを放つ。
「<居合>!」
<居合>は<ヘビースラッシュ>のような攻撃力はないが、高速の斬撃であるため防御が困難である。
反応しきれなかったゴブリンソルジャーは、腹を切り裂かれ苦悶の表情を浮かべる。さらに……
「行くぜ! <ファイアボール>!」
ロンドの放った中級火属性呪文が、ゴブリンの後衛達にヒットする。
被害は甚大で、2体程いたゴブリンメイジが全滅。
3体いたアーチャーは1体を除いて黒焦げになっていた。
残った1体では、ドッジの<プロテクト>を貫くのは不可能だろう。
このまま、一気に畳みかける!
「ゼン! 新手だ!」
そう思った矢先に、チョウジから悪い知らせがくる。
「新手だと!? どういうことだ!?」
少なくとも、俺の<先見>には何も反応がなかった。
またしても範囲外で出現したとでも言うのか?
「こ、後方にスケルトンが20! 奴等、いきなり現れやがった!
いきなり現れただと!?
クソ! 一体何が起きている!?
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