第12話 召喚契約



 ――召喚契約。

 これは僕が普段使っている死霊召喚などとは異なり、文字通り対象と召喚契約を結ぶことで成り立つ召喚方法だ。

 契約を結べるのは純粋な人間以外に限られるが、種族や強さに縛りがないため、非常に強力なスキルである。

 ただ、その強力さにも関わらず使い手自体は非常に少ない。

 それは、召喚契約の難易度が凄まじく高いのが原因である。


 本来、召喚契約には対象との意思疎通が不可欠なのだが、この意思疎通こそが最大の問題となっていた。

 何故ならば、モンスターと意思疎通することは通常不可能だからである。

 当然と言えば当然だが、対話ができないのであれば契約など結べるハズもない。

 なので普通、契約を結ぶには精神レベルで屈服させるなどの手間が必要なのだが、そうして屈服させたモンスターは戦闘では何も役に立たなくなってしまう。

 これでは召喚契約を結ぶ意味がほとんどない。


 必然的に、契約を結ぶ対象は意思を持つモンスターや魔族に絞られるのだが、そういった存在は非常に強力なものが多いため、対話まで持ち込むこと自体至難を極める。

 仮に対話ができたとしても契約までいきつくことは稀であり、歴代のサモナーの中でも僅か3人しか成功例が無いのだそうだ。


 そんな背景から、召喚契約とはサモナーにとって憧れのスキルなのだが……



「い、いいんですか? 僕なんかと契約を結んじゃって」


「はい。私も多忙ゆえ、毎回召喚に応じることはできないでしょうが、今のように時間に余裕があるときであれば召喚いただいても問題ありませんので」


「……(ゴクリ)。あの、失礼ですが、ステータスを拝見させていただくことは可能でしょうか?」


「はい。構いませんよ。ステータス、参照」



 ギアッチョさんは迷うことなく快諾し、僕にステータスを参照モードで見せてくる。





 名前:ギアッチョ

 レベル:556


 種族 :悪魔

 職業 :氷王

 HP :3550000

 MP :1200000

 STR:1800

 AGI:3000

 VIT:3200

 INT:5500

 DEX:4000

 LUK:550


 スキル:氷魔法 LV20、水魔法 LV20、氷闘技 LV20、氷剣技 LV13、氷王 LV5





「ぶふぉぁ!?」


「ど、どうしましたか?」



 いや、どうしましたかじゃないよ!?

 何このステータス!? 完全に化け物じゃん!?

 思わず鼻水から涎から、色々なものを吹き出してしまった。



「ギ、ギアッチョさんって、物凄くレベル高いですね……?」


「はい。魔王様には及びませんが、長年仕えていることもあり、レベルだけは魔王軍でも上位に入るでしょう」



 え……? ザッハ様はともかく、その言い方だと他にももっと強い人がいるってこと?



「私はあくまで魔王様の副官ですからね。戦場に出ている幹部の者であれば、もう少し戦闘力の高い者もいますのでご安心ください」



 いや、心配なんか全然してないですよ?

 というかコレ、絶対人間じゃ勝ち目ない気がするんですけど……



「……私では、不服でしょうか?」



 固まっている僕を見て何か感じたのか、ギアッチョさんがそんなことを言い出す。



「いやいやいやいや! そんなこと全くありませんって! むしろ僕のような弱小魔族が、ギアッチョさんのような高レベルの悪魔と契約しちゃって良いのかと……」


「そんなことですか。でしたら何も問題ありません。生まれて間もないレブル様のレベルが低いのは当然のことです。それを支援するのも、我々先達の役目ですから」



 そう言われるとそうなのだけど、本当にいいのかコレ?

 流石にチートってレベルな気がするんだけど……


 いや、でも待てよ?

 そもそも僕は、こっちの世界に転生する際、神様のような存在からチート的な才能を貰ったんだった。

 前世ではそれをほとんど役に立てることができなかったけど、これが本来の状態なんじゃないか?

 そう思うと、これはこれでアリな気がしてくる。



「……わ、わかりました。それでは、僕と契約を結んでくれますか?」



 僕は手を差し出しながら、召喚契約のスキルを起動する。

 淡い燐光が体から放たれ、契約の準備が整った。



「では、今後とも宜しくお願いします。レブル様」



 僕の手をギアッチョさんが握り返すことで、契約が成立する。



(これが、召喚契約か……)



 なんとなくギアッチョさんから繋がりのようなモノを感じる。

 実際、何らかのパスのような繋がりができているようで、強くギアッチョさんを意識することで意思の疎通が可能なようであった。



『これは便利ですね』


『ですね。これなら連絡や都合の確認も楽そうです』



 前世では召喚契約の情報がほとんどなかったので、こういった意思疎通の経路が設けられることも知らなかった。

 王家や貴族が秘匿していたのか、単に情報が知れ渡っていなかったのかはわからないけど、なんだか得をした気分である。



「御用の際は、この意思疎通方法で連絡をください。業務上問題なければ、いつでもはせ参じますので」


「ありがとうございます」


「それでは、これから兵士達のもとへ向かいましょうか」


「はい! 宜しくお願いします!」




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