第6話 引率クエスト
僕は召喚を宣言し、ワールドマップを見守る。
すると程なくして、冒険者達の背後に複数のアイコンが現れた。
「やった! 成功だ!」
「おお……!」
ワールドマップにはスケルトンのアイコンが10個出現している。
それは僕が召喚したスケルトンの数と一致していた。
つまり僕は今、ワールドマップに直接召喚魔法を使用できたということである。
「一度に10体……。そうか、ワールドマップの機能ではなく、魔法として実行すれば、一度に5体までの制限を抜けられるということか!」
「みたいですね。これなら、一定範囲内に20体までという制限も突破できるかも……」
「おもしろい! やってみるのだ!」
「はい!」
これは、ちょっと面白くなってきたかもしれない……
◇冒険者side
クエストには、若手の冒険者を引率してモンスターを討伐するという内容のものがある。
報酬額は安いのだが、ギルドへの貢献度は高めであり、中級冒険者が貢献度稼ぎのために引き受けることが多い。
俺もその口で今回のクエストを受けたのだが……、はっきり言って暇であった。
「それにしても、やっぱり『剣豪』って凄いんだなぁ……」
『格闘家』の少年が、先程始末したゴブリンから魔石を回収しながら呟く。
「馬鹿! 当たり前だろ! 上位職だぞ上位職! 俺らとはレベルが違うんだよ!」
その呟きに反応したのは『剣士』の少年だ。
二人ともレベルはまだ10以下で、冒険者としてはヒヨッコと言える。
「確かに今のところレベル差はあるだろうが、そんなものは冒険を続けていれば追い付くもんだ。お前達だって、俺くらいにならすぐ追い付けるハズだぞ」
俺はそう言いながらも、内心では追い付かれて堪るかと思っていた。
今回のクエストが達成されれば、俺のランクはAに上がる。
それに比べて彼らのランクはF。この差は、そう簡単に追いつけるような差ではない。
「そ、そうですかね!」
「ああ。だからこのクエストもしっかりと頑張ろうな」
満更でもなさそうに笑う『剣士』の少年に、俺は適当に言葉を返しつつ武器を構える。
「ど、どうしたんですか?」
「予兆を感じた。多分ランダムエンカウントだ」
『剣豪』のスキルである<先見>は、モンスターの奇襲などを感知するスキルだが、ランダムエンカウントなどの予兆を感じ取ることもできる。
まさか、こんな下級エリアでランダムエンカウントが発生するとは思っていなかったが……
「来るぞ。全員構えておけ」
「「「は、はい!」」」
『剣士』と『格闘家』の少年は、『僧侶』の少女を庇うように陣形を組む。
俺はそんな彼らのさらに前に立つが、モンスター次第では意図的に彼らにも何体か引き受けてもらうつもりだった。
全部自分で引き受けてしまうと、彼らの成長の妨げになってしまうからである。
(まあ、だからこそ暇になるんだが……)
俺にとって、この程度のエリアのモンスターははっきり言って相手にならない。
文字通り瞬殺してしまうため、彼らに一部を任せるとその間手持ち無沙汰になってしまうのだ。
これも仕事の内なので、文句は言えないのだが……
「……オークが5体か」
オークは下級モンスターではあるが、その中では強い部類のモンスターである。
それが5体ともなると、このエリアではボスクラスの強敵と言えるだろう。
これは安全のため、俺が4体引き受けた方がいいか……
「1体は任せるが、やれるか?」
「「は、はい!」」
自信なさげな返事に若干不安を覚えるが、まあ『僧侶』もいるしなんとかなるだろう。
念のため、いつでも助けにいけるようさっさと片付けるか……
「せい!」
横一線の峰打ちで、オークを1体弾き飛ばす。
続けざまに2体3体と弾き飛ばしていくが、予想以上に重いな……
今更だがこのオーク達、普通のオークよりも一回りくらい体格がいい。
彼らには少々荷が重いか……?
「<紫電>!」
そう判断するや否や、速やかに目の前のオークを屠ることを決断する。
放たれたスキルがオークの腹部を切り裂き、紫色の火花がまき散らされる……が、オークはギリギリで耐えきってみせた。
「グ、フぅ……」
「チィっ! しぶとい!」
さらに一太刀入れることで、ようやくオークを一体倒す。
しかし、先程弾き飛ばした3体が体勢を立て直し、近距離まで迫ってきていた。
(個体のレベルが高いのか!? 存外身体能力が高い!)
所詮はオークであるため、攻撃を捌くこと自体は
このままでは……
「う、うわぁぁぁぁぁっ!!」
「っ!? どうした!」
「は、背後から、スケルトンが!」
「なんだと!?」
オークの攻撃を受け流して背後を見ると、彼らの後ろにいつの間にかスケルトンが10体程出現していた。
(まさか、連続のランダムエンカウント!? いや、しかし俺の<先見>には何も反応が無かったぞ!?)
ランダムエンカウントでないとしたら、どこかに隠れいていたのだろうか?
……いや、木々があるとはいえ、10体ものスケルトンが隠れられるような場所はなかったハズだ。
いずれにしても、このままではマズい。
ただのスケルトンとはいえ、このオーク達を相手にしながらでは流石に分が悪そうだ。
「<紫電>!」
目の前のオークを弾き飛ばし、彼らが相手にしていたオークにスキルを放つ。
これでなんとか、全滅だけは避けられるだろう。
「退却だ! スケルトンを突破するぞ!」
「「「は、はい!」」」
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