第5話 ワールドマップ



「転送、ですか……」


「うむ。まあ見ているがよい」



 そう言って魔王は、リモコンをオーク達に向けてボタンを押していく。



「選択、選択と……。よし、これでマップを選択して、と……」



 魔王は一々操作を口に出しながら行っていく。

 どうも、リモコンの操作には不慣れなようであった。



「送信、と」



 魔王がボタンを押した瞬間、オーク達の姿が消える。



「え?」


「成功だな。マップを見てみろ」



 何が起きたのか理解できなかった僕は、魔王に言われるがままワールドマップを見る。

 すると、先程のアイコンとは別に、オークと書かれたアイコンが5つ出現していた。



「これって、もしかして……」


「うむ。ここにいたオーク達を、マップの指定した場所に転送したのだ」



 どうやら、このワールドマップには、指定したモンスターをマップ上の指定した場所に転送できる機能があるらしい。

 もしかして、これがランダムエンカウントの仕組みだったりするのだろうか?


 ……ちなみに、ランダムエンカウントとは、冒険中に突然モンスターの襲撃にあう現象の呼称である。

 歩いていると何の拍子もなく突然モンスターが出現するので、冒険者にとっては天災などと同じ扱いになっている。



「あ……! そういうことか……」



 そして僕は、何故魔王が『サモナー』と聞いて微妙な顔をしたか理解してしまった。

 要するに、この機能があるから、『サモナー』の召喚の恩恵が少ないということなのだろう。



「うむ……。そういうことなのである」



 そりゃそうだよな……

 こんな便利な機能あったら、わざわざ現地に出向いて召喚しなきゃいけない『サモナー』は必要なさそうだ。



「便利ですね……、このワールドマップ……」


「うむ。色々と制限はあるが、かなり便利なアーティファクトである」


「これじゃあ、サモナーなんていらないですもんね……」



 タイムラグなしで遠隔指定召喚が可能なのだから、『サモナー』なんて使いづらい存在、全く必要ないだろう。

 どうやら僕は、またしても役立たずな存在であるらしい。

 二度も転生しておいてこの結果は、流石に結構こたえる……



「い、いやいや、このワールドマップにも制限はあるのだぞ? 一度に選択できる配下は5体までだし、一定範囲内には合計20体までしか送り込めないようになっているのだ!」



 ああ、一応そういう制限はあるのか……

 でもそうだよな……

 制限がなかったら、人類なんてあっさり滅ぼされてしまうし。


 どうにもこの世界の神様(?)には、この世界をゲーム的に楽しみたいという意図が見え隠れしている。

 僕のような転生者に特典で才能を与えたり、魔王のような役割を用意していくつかの権限を与えたりと、結構やりたい放題だ。

 このワールドマップの機能だって、前々世のタワーディフェンスゲームの機能を参考にしてるとしか……



(ゲーム……、ゲームか……)



 ふとした思い付きだが、一つ試したいことができた。



「あの、魔王様」


「ん、なんだ?」


「もしかしてですけど、このマップに直接魔法とかを打ち込めたりできます?」


「ああ、できるぞ。チャージ時間が必要な上、補正がかかって威力はかなり削減されてしまうがな」



 やっぱりだ。



「それって、どうやればできます?」


「マップを指定して、魔法を使うだけだぞ」



 簡単親切設計だ。それなら僕にもできそうである。

 魔王に言われた通り、僕はマップを直接指定しマナをチャージする。



(ん……? いつもより、チャージ時間が早い?)



 INT(知力)の影響だろうか?

 前世の二倍以上の速度でマナがチャージできる。

 これなら、すぐにでも……



「スケルトン召喚!」



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