第4話 魔族のステータス



 ほんの1分程の時間で、ギアッチョさんがオークを数匹連れて戻ってきた。



「連れて参りました」


「グフ」



 オーク達は言葉が話せないようだが、ある程度知性はあるのかギアッチョさんの命令にはしっかりと従っている。



「よし、では早速……っと、何をそんなに震えているのだ?」


「そ、それはですね……」



 僕は自分が死んだときの状況を説明する。

 僕の記憶はオーク達に組み敷かれて噛みつかれたところで途絶えているが、恐らくあのまま食われてしまったのだろう。

 そのせいか恐怖が焼き付いており、自然と震えがこみ上げてくる。



「ふむ、成程な。しかし、今のお前なら、オーク如きに後れを取ることなどないと思うぞ」


「え?」


「当たり前だろう。何せ今のお前は魔族なのだから、たとえ戦士の適正がなくともオーク程度ほふるのは造作もないハズ。どれ、試しにアイツを殴ってみるといい」



 魔王がそう言うと、ギアッチョさんはオークを一人、僕の前に差し出してきた。

 途端に僕の震えが強くなる。



「さあ、殴れ」



 殴れと言われても、膝にも腕にも力が入らない。



「む、無理です!」


「無理ではない。小突くだけでもいいからやってみろ」



 そんなこと言われても……

 オークは今の僕よりも身長が高かった。

 明らかに僕を組み敷いたオーク達よりも上位の個体である。

 そんなの相手に僕のパンチが通じるワケ……



「ほら、こうして拳を握って」



 じれったかったのか、魔王がわざわざ僕の手を取って拳を握らせてきた。



「それで、こうして――」


「わ、わかりました! やりますから!」



 まるで子供に教えるような魔王のやり方が恥ずかしくなり、僕は魔王の手を振りほどく。

 そして覚悟を決め、オークの腹目掛けて拳を突き出した。



「えい!」


「グフぅ!?」



 その瞬間、オークが凄まじい勢いで吹き飛んでいく。



「……え?」


「ほら、言った通りであろうが」



 僕が信じられない思いで突き出した拳を見ていると、魔王がやれやれといった様子で肩を叩いてきた。

 確かに言った通りなのだが、いくらなんでも今の吹き飛び方はおかしくないだろうか。

 ……そうだ、今の僕のステータスってどうなってるんだ?



「ス、ステータス!」



 僕がそう宣言すると、視界に自分のステータス情報が表示される。

 それを見て、僕は驚愕せずにはいられなかった。





 名前:

 レベル:5


 種族 :魔族

 職業 :サモナー

 HP :12000

 MP :1000

 STR:500

 AGI:500

 VIT:500

 INT:1500

 DEX:1000

 LUK:150


 スキル:魔獣召喚 LV1、死霊召喚 LV3、ゴーレム召喚 LV1、魔蟲召喚 LV1、契約召喚 LV1





 う、嘘だろ? STR(力)が500!?

 前世の僕が10だったから……、50倍になっているぞ!?



「ふむ。魔族としては平均的なステータスだな。INT(知力)は優秀だが、本職には及ばず……。『サモナー』らしいと言えばらしいステータスだな」


「え、魔王様もこれ見えるんですか?」


「当たり前だろう。お前は私の配下なんだぞ?」



 ステータスってそういうものだったのか……

 主従関係なんて前世では結んだことないし、知らなかった。

 まあ、敵対者じゃなければ、別に見られても困るということはないけど。



「そういえば名付けがまだであったな。まあ、それは後回しにするとして、今は本題に戻るぞ」



 本題……

 そういえば、魔王は『サモナー』自体が悪いというワケじゃない理由を説明するために、オーク達を呼んだんだっけ……



「グフ」



 いつの間にか、僕が殴り飛ばしたオークも戻ってきていた。

 凄いな。へなちょこだったとはいえ、あのSTRの攻撃を受けてケロっとしているなんて。

 死んでてもおかしくはないと思ったけど、流石に立場的には仲間と言えるオークを殺してしまうのは少し気が引けるので、生きててよかった。

 ただ、元々僕は人間の頃オークを何匹か殺したことはあるし、逆に殺されたこともあるので罪悪感のようなものは感じなかった。

 本当に、少し気まずかっただけである。……思考が少し魔族寄りになっているのかな?



「今からこのオーク達を、この冒険者達のもとへ転送する」



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