第3話 ハズレ職と呼ばれる理由
中学二年の修学旅行中に転落事故で死んでしまった僕は、めでたく異世界転生を果たす。
その際、神様のような存在から特典として一つ才能を貰えることになった。
そこで僕が選んだのが、サモナーの才能である。
何故サモナーの才能を選んだのか?
それは単純に、戦闘に対する恐れがあったからだ。
元々僕は体が弱かったため、切った張ったをする職業は絶対にできないと思っていた。
いくら体が強くなろうとも、それで殺し合いができるかと問われれば、普通の現代人なら無理と答えるだろう。
でも、冒険者という職業には前々から憧れがあった。
生前読んだ漫画やライトノベルの主人公たちのように、冒険者として活躍したいと思ったのである。
その結果選んだ才能が、サモナーなのであった。
サモナーであれば、自分が近接職のように直接戦闘することもないし、魔法職のように身を守るすべに乏しいということもない。
それに、元々僕はタワーディフェンスゲームを好んでプレイしていたこともあり、自分の手を汚さず指揮官のような立ち回りをすることに憧れもあった。
しかし現実は、僕が想像したものとは大分異なっていた。
サモナーは、この世界の冒険者の中では
理由はいくつかあるが、大きな理由は二つ。
一つ目は、召喚までにかかる長いチャージ時間である。
この世界の召喚魔法は、召喚するまでにマナのチャージ時間が必要であり、その時間が戦闘においては絶望的に長かった。
スケルトンのような下級モンスターでも10秒ほどの時間が必要であり、それより強いモンスターを召喚しようとすると、1分近くも時間がかかってしまうのだ。
じゃあ最初から召喚しておけば? と思うかもしれないが、それができない理由もある。
通常、契約なしで行使できる召喚魔法では、知性のないモンスターしか召喚できないのだが、そういった知性のないモンスターには高度な命令ができないのだ。
『あの敵を攻撃しろ』などであれば可能だが、『見張りをしろ』だとか『偵察をしてこい』などは不可能なのである。
知性のあるモンスターであれば、そういった命令も可能なのだが、知性のあるモンスターとは契約が必要であり、その契約を結ぶのが非常に困難という問題があった。
そんな理由もあって、戦闘におけるサモナーの貢献度は限りなく低くなっているのである。
二つ目は、戦闘における連携が取れないことだ。
これは、モンスターに高度な命令ができないことが主な原因である。
普通の人間同士なら、互いの攻撃が当たらないように連携が取れるものだが、残念ながらモンスターにそんな高度な連携を求めることはできない。
僕の死ぬ直前の戦闘でダンテがスケルトンを2体粉砕する場面があったが、あれは何もダンテが悪いワケではない。攻撃中のダンテのそばにスケルトンが寄ったのがいけなかったのだ。
そして、これは立場が逆であっても同じである。召喚したモンスター同士であれば、互いの攻撃が当たらないように制御できるが、他の仲間のことは一切考慮されない。
要するに、フレンドリーファイアの可能性があるのだ。
そんな存在をパーティに入れたいと思うハズもなく、結果としてサモナーはハズレ職とされ、冒険者の間で除け者にされていた。
そう、そんなサモナーだからこそ、ダンテ達の誘いも最初から怪しいとは思っていたんだ。
でも、サモナーがクエストに参加できる機会は滅多にない。
怪しいとはわかっていながらも、誘いに乗るしかなかったのである。
まあ、結果がアレで、今に至るワケだが……
「……やっぱり、モンスターの中でも、『サモナー』ってハズレ職なんですね……」
「い、いや、そんなことはないが、ただちょっと求めていた戦力とは違ってだな……」
沈んだ僕を見て、魔王は気まずく思ったのかそんな言い回しをしてくる。
しかし、結局は役立たずということに変わりはなさそうであった。
「ほ、本当に『サモナー』が悪いというワケではないんだ! ちゃんと理由がある! これを見てくれ!」
増々沈んだ僕を見て、魔王が慌てて何かを懐から取り出す。
それは何やら、リモコンのようなものであった。
魔王はそのリモコンのようなものを操作して、中空に画面のようなものを映し出す。
「これは……」
「ワールドマップというものだ」
その画面には地図のようなものが映し出されていた。
魔王の言葉がそのままの意味であるなら、これは世界地図なのであろう。
「見ての通り、これはこの世界の地図……、その一部だ」
「一部、ですか」
「そう、一部だ。私に任されている地域のみが、この地図には表示されている」
どうやら、この広いマップでも、この世界のほんの一部分に過ぎないらしい。
知らなかったな。世界ってそんなに広かったのか……
しかし、このマップが何の理由になるというのだろうか?
「少しズームするぞ」
「ズームって、あ……」
魔王がリモコンを操作すると、本当にマップがズームし詳細な地方の情報が見えてくる。
そこには、僕の住んでいた地方の名前もあった。
「ここ、僕が住んでいた地方です」
「そうか。なら丁度いい。ここをさらにズームアップしよう」
魔王はそう言ってさらにリモコンを操作する。
すると、今度は村や町の名前など、もっと詳細な情報が出てきた。
「ふむ。丁度よく冒険者達が我々の領域に侵略してきているようだな」
画面にはラガック山脈という地名と、いくつかの職業の名前が表示されていた。
魔王がそれをさらにズームアップすると、よりリアルな地図とアイコンのようなものが表示される。
「実際に見てもらう方が早かろう。ギアッチョ! ギアッチョはおるか!」
「ハッ! ここに」
魔王が手を叩くと、すぐさま羽の生えた男が飛んでくる。
ギアッチョと呼ばれた男は、魔王の目の前に着地し、片膝をついて跪く。
「オーク達を数人呼んでくるのだ。戦闘力は問わぬ」
「ハッ! 承知いたしました」
そう返事をし、ギアッチョさん? は再び羽ばたいて奥の方へ消える。
ただ、僕はそれ以上に気になる単語があったことにビビっていた。
(今、オーク達を呼んでこいって言ったよな……)
前世の死ぬ際を思いだし、震えがこみ上げてくる。
一体オーク達を呼んで、何をするつもりなのだろうか……
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