絡新婦
明けゆく
『宿直草』/巻二・第一より抜萃
一、
その
僧侶は
その頃、都を
罪人が現れても取り締まる役人である
だから、
化野念仏寺の
実際、
二、破戒
赤黒い
まあ、それも
「おや、あれは一体全体何だろう――」
「不届き者めが。そこまでして生きたいか。その
僧侶が
「何じゃ、
老婆はそう叫ぶと
呆然としていた僧侶は先程まで老婆が伏せっていた泥水を覗き込んだ。
僧侶は何とも言えない厭な気分を抱えながら、肩を落として
三、問答
トントントントン――。
ある晩のことである。
トントントントン――。
戸を叩く音は中々鳴り止まない。
僧侶は
それは
「こんな夜更けに訪ねてくるとは何事かな。
そう言うと、僧侶は
「夜分遅くの訪問をご
その老婆は――私の母親なのでございます。本当に可哀想なことをしてしまいました。もっと
遊女の訴えを聴いていた僧侶は生きた心地がしなかった。女は事故の真相を知らないらしい。彼は真実を打ち明けるべきか悩んだが、結局は口を
「うむ、その老婆のことなら知っておる。
僧侶は口ごもりながらも、そのようなことを言った。当初こそ、女は静かに頷いて僧侶の話に耳を傾けていたが、「
「生きるために奪うことが罪でございましょうか。私どもは
私は都の男連中に自身の肉体を売って
僧侶は反論することができなかった。女の
生きようとする者の熱意に当てられて、歳若い僧侶は眼を白黒させるばかりである。ここに至って、彼は自身の内側に充満する
女は憎しみの
自身の醜悪さを真っ向から覗き込んでしまった僧侶は
四、
「
念仏寺の
「ああ、やっぱりか。あの悲鳴の
念仏寺の
その時である。一匹の
(了)
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