寝肥
むかしみめうつらかなるおんなありしが、ねぶれる時はその
『桃山人夜話・絵本百物語』より
一、不思議
この
「
無論、
村人連中は
万事において
やがて、季節が巡って夏が訪れるようになっても、噂話の火種は
日が暮れて空が
――本当に
彼らはあまりにも
こういった小さな不審が重なって、やがては大きな不思議を
二、
――きっと、お
「
心を砕いた看護の
――ああ、やっぱり泣いている――
見る影もなく荒れ果てた屋敷に
「あなた、そこにいらっしゃるの」
妻の
「あなた、そこにいらっしゃるのでしょう」
――肉の塊が俺を呼んでいる――
「もう、たくさんだ――、やめてくれ」
「ああ、ひどいじゃないか。こんな姿になってしまったのはあなたのせいでしょう。初めからお医者様に
妻は夫の不義理を恨めしそうに訴えて
しかし、今さら悔いてもどうにもならないではないか。彼は
いつしか
三、
「あなた、
ああ、何だかまた胸が切なくなってきました。いっそうのこと、このまま死んでしまえればいいのに。私の
ねえ、あなた――最後に枕を共にしたのはいつのことでしたかしらね。この醜く太った
「そんなことはないさ。お前は充分に妻としての役目を果たしているよ」
「ねえ、あなた。もう二度と私を抱いては下さることはないのでしょうね」
それは
――俺はどうしようもないまでに
お
お
しかし、
『私は妻としての役目を果たすこともできない
要するに、お
これほど妻に
――薄情者だと
桃色の
お
「あなた、どうか許してくださいまし。私は醜く肥え太っていく己の姿を
――もはや、これまでだな。俺は誠実であろうと努めてきたが、怪我を負った妻を
四、
しかし、
仕方がないので、
ふたつの死体が折り重なるようにして横たわっている。ひとつは
彼は
――これで
――思った通りだ。女の方は自殺に違いない。男の下腹部には
(了)
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