油すまし
人はおおむね自分で思うほどには幸福でも不幸でもない。肝心なのは望んだり生 きたりすることに飽きないことだ。 ロマン・マロン
一、依頼人の訪問
大正十一年の東京の冬は
幾度目かの
「
「あら、お部屋に上げてはいただけないのかしら。ひと月前にお手紙を差し上げたはずよ。ご相談したいことがあるので、上京するとお
美しい叔母は自分が
いつまでも本家の使者を玄関に立たせているわけにもいかないので、
「ご
叔母は相談したいことがあって、熊本から東京までやって来たと言っていたが、
客に茶を出さないのは早く帰って欲しいという意思の表明でもあったが、訪問者である
「お手紙を拝見しなかったことはお
年頃の男の放つ
「どこからお話したらいいのかしら。お父様――
「
「はあ、叔母さんも大変ですね。はっきりと言ってくださっても平気ですよ。お
「分かりました。ここは叔母さんの言う通りということにしましょう。それで僕にどうして欲しいんですか。ご相談したいことがあると
「私は貴方に
遠くで警察官が吹く
二、油すましのこと
東京の寒空の下で働く警察官の
――つまり、この美しい女性は自分に安楽椅子探偵役になることを望んでいるというわけだ――
「
ここまで
「
気を緩めれば
「
そう言いながら、
「
「お父様は
「ええ、
「それはどのような決まり事なのかしら」
「私どもは幼い頃から
それがどのような
「なるほど、お
「明治の頃の出来事だったと聞いております。
ある日、
それからというもの、
いずれにせよ、大昔の出来事ですから
「
「
彼女の死に関しては
「残念ですが、今はまだ見せられません。
窓の外では
三、夢想家の推理或いは妄想
窓の外では
「さて、
「お父様が誰かに
「
「脅迫された上で行方知れずとなっているからには、何かしらの
「
「
①、それは過去には
②、それは一人で遭遇すると身の
③、
「
叔母さん――、僕は思うです。実際はもっと他の植物の種子から油を
「大陸には特殊な
「
『油すまし』とは特殊な植物の種子から油を
いずれにせよ、
「
――
夜が
四、ある精神科医の日誌の抜粋
大正十一年十二月十三日(金曜日)。
東京帝國大学ニ
重度ノ
発見時ハ
下宿先ノ部屋カラハ
(了)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます