023.お返ししますね
筋肉デブと仕切りなおしの再戦。
さっきの不意打ちは1戦にカウントするのかどうか。
どうでもいいね。
胸の前で握りこぶしをガッチンガッチン、メリケンサックというか金属の指通しを当てる音が暗い路地に響く。
やる気に満ちてるなあ。
これはさっきみたいに不意打ちは無理か。
にらみ合いになる。
手が止まって硬直状態が続くと後ろからの援護が来そうな気がする。
ゆらり、はいどうぞと、力も速さも乗せず筋肉の顔に向けて棒の先を向ける。
さてどう出るか。
手で払いに来たか。
棒の先端に、魔力を乗せられるだけ乗せて〈
マグネシウム燃焼とか太陽光直視みたいな、視覚に痛みが走る閃光。
払われた棍撃を引き戻し、相手の股間に向けて〈刺突〉を繰り出す。
シスターを「お菓子回して」なんて発言聞いたら、子孫繁栄をお祈りしたくなるじゃないですか。
シスターだけじゃなく彼に関わる女性すべて、不幸になるルートを潰すために。
勝算半々ってところだけど、まあ予想通り《スキル》で防御してきた。
やはり、視力を奪った状態でも
このへんは
こういうのは確認しておきたかった。
引き戻した『
いい角度で直撃入った。
鼻、上あご、前歯あたりの何かが割れる、いい感触。
尻もちをついた筋肉ダルマに右上から振り下ろし。反動を使って左上から振り下ろしの追撃は包帯巻いてるヤツの肩に向けて。
フルボッコの3撃目は入らない。
乱入してきたのは正騎士崩れっぽい正統派。軍属経験あって基礎がしっかりしてるように見える相手だと厳しい戦いになる予感。
顔は出てるがしっかりした全身鎧には棒で叩いても効く気がしない。
隣にいたイケメン細剣使いは利き腕を痛めているからか、たぶん形勢が大きく傾くまで参加してこない感じ?
〈鑑定〉を飛ばしてみる。
『オルランド』、やはり王軍崩れの元騎士爵。
なにがあって騎士爵の爵位を剥奪されたのかは知らないが、貴族や教会幹部や国外への顔つなぎをほとんど担ってる『真っ黒』だ。ギルティ!!
小細工の奇襲。いける気がしないけど。
棍の先に、ごく弱い〈
何をどう見ているのだろう。
こちらと目線が外れることもなく、武器の動きにも惑わされず細心の注意を払っている。視野が広い!
こりゃ参った。どうにかできるビジョンが全く見えない。
ヤツの目の前に〈
攻撃力もなにもない、ただ濡れるだけの嫌がらせだ。
かわした先に棒を突き込む。長剣で打ち払い、こちらに踏み込んでくる。
それよりもこの棒、剣で斬られても切り落とされる気がまったくしない。
どういう素材だよ。
上段からの斬り下ろしを、棍を横にして受ける。こっちは刃物じゃないから両手でしっかり受けることができる。
・・・両手が塞がったこのタイミングで背後からナイフが飛んでくるか。
〈危険察知〉さんを信じるなら、防刃マントを抜けてくるほどの攻撃力無いって。
顔とか手に当たらなければノーダメージ。
騎士さんから目を離すことはできない。ちらりと確認する隙さえ無い。
装備を信じて肩で受け止める。
「いってぇ!!」
ですよね。少々の厚みぐらいはあっても布装備なんだから、ぶつけられたらそれなりに痛いのは当然でした。
思わず膝をついてしまう。
足元に転がった投げナイフを拾う。刃先になにやらどろっとしたものがついている。
思わず〈鑑定〉を飛ばすと、投げナイフ自体は使い捨てできる普及品のようだが、かなり強力な『麻痺毒』が塗られていた。
ぜひともこれは返してあげないと。
立ち上がって一歩近づく。
騎士崩れが警戒して剣を正面に構える。
とは言っても、10歩弱の距離に対する警戒だ。
数歩踏み込まないと武器の間合いに入らない、はず。
「お返ししますね」
〈
彼の頬を、投げナイフについてるベタっとしたものを塗りつけるように浅く切る。
そこから〈
ふたりから距離を取る。とはいえ囲まれてるからそんなに離れることはできない。
教会の門の格子の向こうで、シスターアメリアさんが見てる。
出てくるなと言っておいたのに。
騎士崩れ、こちらを睨んでいるが顔の傷口のところの筋肉がめっちゃ震えてる。
殺意が込められている目の力も少し弱くなってる。
筋肉ダルマのほうはもっときつそうだ。
膝をついていて、もう立ち上がれない様子。
勝負はついたかな。
自分達のところで使ってる毒だ、解毒剤ぐらいは持ってるだろう。
再度の仕切りなおしになる前に終わらせたい。
特眩級の〈
30mぐらい? の高さの照明弾。
街の衛兵さんたちが囲んでくれてるのは知ってる。
〈気配察知〉で気付いている。
イケメン剣士ともうひとりの女性を含め、蜘蛛の子を散らすようにバラバラに逃げていくが、そのへんは衛兵さんがなんとかしてくれるだろう。
騎士崩れと筋肉ダルマは置いていかれる。
先に転がされたザコチンピラも、動けるヤツは肩貸してもらったりして逃げてるのに。
人望あるなあ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます