019.やさしい嘘(嘘)
おなかいっぱいのちびっ子たちは、おねむの時間だ。
シスターと面倒見のいい年長さん女の子たちに任せてこっちは食堂の片付け。
片付けと言ってもたいしたことないんだよな。
回転寿司のお皿とか包装のビニールとか、目を離すといつの間にか消えてしまう。
コンビニ弁当の容器とか缶やペットボトルなども、ぜひこの素材で作って欲しいものだ。
ゴミ袋、45L半透明袋に雑に詰め込んでいく。
残ったペットボトル飲料と未使用の紙コップ、紙ナプキンはひとまとめにしておく。
「明日の夜までに使い切れなければ捨てて」ってシスターに言っておこう。
紙ナプキン使って机を拭く。
大机と自分の机だけだと10分かからないな。
教会の裏にはちょっとした広場があって、その奥に家庭菜園っぽく小さな畑が。
試しておきたかったもの、カバンの中から『
これも何か装備効果があればいいんだけど、という打算。
・・・ありました。
これは、手に取って正面に構えた瞬間にわかるやつ。
頭の上に振りかぶって胸の高さまで振り下ろす。
ひゅん!
棒が風を切る、すごくいい音。
心の赴くままに〈
体の制御を持っていかれる感覚はあるけど、心の中の達人に身を任せてみる。
魔法と同じ感覚。何ができるか使えるかは脳内でリスト化されてて見えてる感じ。
「使おう」と思えばそのまま発動する。
威力はかなり高いと思われる。感覚的に言って最低ランクの基本技っぽいのでも倍ぐらいはダメージありそう。
でも、ゲーム感覚で技発動後の硬直、隙みたいな動けない時間が出るのがすごく嫌だ。
使えそうな
《杖術》《棒術》のスキル群については、かなり高
〈旋風撃〉とか、いかにも広さが必要そうなものは使わない。
いろいろ遊んでみたけど、必殺技キャンセル必殺技みたいなスキルを繋ぐ連続攻撃はできないみたい?
特定の技から技への繋ぎはできそうな気がするんだけど、その組み合わせを探してる時間は無いなあ。
ちょっと夢中になってた。
何人かが熱心に見てる視線は感じていたけど、そこにアメリアさんが加わってることに気が付いたのは、ふと我に返ったこの時。
そろそろ頃合だからシスターに話をしておこう。
建物に立てかけていたカバンから取り出すふりをしてペットボトルのスポーツドリンクを召喚、500ml1本を一気に飲み干す。
「アメリアさん、ちょっと大事な話があるんですけど、部屋ひとつ用意してもらってもよろしいですか?」
「え? はぃ? ・・・わかりました///」
え? 何その反応。なぜ照れる。
不思議な反応を見ながら応接室に案内してもらう。
「お茶、用意しますね」と席を外したが、湯を沸かすところからだろうか、なかなか帰ってこない。
さて、どう説明したものか。
少し思案の海に沈んでいるとアメリアさんが戻ってきた。
アメリアさんに淹れてもらった紅茶をいただく。
きつい花の香りは苦手だ。茶葉の良し悪しはわからない。
大きく息を吐いて「おいしい。落ち着く香りですね」と言っておく。
「ありがとうございます」
アメリアさん満足そうだ。
お茶請けにクッキーを出す。
「タモツ様、なにか武術を?」
棒を装備したらスキルが生えた、とはあんまり胸を張って言うことじゃないよな。
「昔の話ですよ」
ちょっと遠い目を演じる。
「地区の予選で上位に顔を並べる程度です。地区代表としてその上に進むことはほとんど無かったですね。」
懐かしいなあ。
ゲームセンターなんて10年以上行ってない気がする。
気が向いたときにちょっと立ち寄るだけじゃなく、「このゲームがやりたい!」と言って店に通うレベルになるともっと行ってないか。
腕が伸びる炎を吐く人とか酔っ払いおじいちゃんとか紙袋かぶった闇医者とか、イロモノキャラ好きなのはまた別の話。
店舗大会を抜けて県大会で1回戦突破あたりが最高の戦績。
そんなのを実際やってきたことのように嘘吹く、デブのおっさん。
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