013.異世界ショッピングしてみた

 気になっている、こっちの世界の雑貨屋とか魔道具屋とかを冷やかしてみたい。


 ケバブサンド? と言うのか、甘くないクレープというかピタパン的なものに肉や千切り野菜を詰め込んだものをいただく。


 あー、一度〈収納〉しておくべきだったか。口つけてから思い出したわ。

 なんて思ったけど、ちゃんと〈召喚〉リストに掲載された模様。

 さっきの紅茶セットも、紅茶とドライフルーツを別々に召喚できるし、まじ有能。


 これは買い食い外食がはかどる!



 広場から外れ、貴族街手前の高級エリアに入る。

 それなりに人通りはあってもがやがやごちゃごちゃしてない。

 かと言って重い空気ではなく、歩く人々は晴れやかだ。

 

 


 大通りに面する、わりと大きめの店構えの雑貨屋に入る。

 こういうところは量産というか大量仕入れで品質が均一、というのが定番。


 店頭から見える感じアクセサリーショップの空気だったけど、わずかな期待を砕くように奥までアクセサリー系しか置いてないようだ。

 そして女性客が多い。


 なんか場違い感あるなあ。若干居心地悪い。



 見回していると、お目当てというか「あればいいな」と思っていた一品を見つける。


 魔法的な〈恩寵効果パラメータアップ〉のついたアクセサリ類。



〈Str+5〉とかどれぐらい効果があるのだろうか。

ちょうど受験シーズンの前だし〈Int+5〉とか気休めでも需要ありそう。


 マラソン選手に〈Agi+5〉〈Vit+5〉渡してみた~い!


 これらが大銀貨1枚と少し、着火スティックと同じ値段。



 ただ、魔石使ってるので魔力の無い現代世界に持ってきてどうなるか。

 まあ向こうで使えなくてもこちらで売りさばけばいいものだし。


 軽い気持ちで全種類揃えてみる。恩寵の+5は揃ってるけど魔石の質が違う。

 デザインで選別しているふりをして、魔石の質がいいもの、魔力保有量が高いものをしれっと選ぶ。

〈Str+5〉〈Vit+5〉〈Int+5〉〈Mgr+5〉〈Agi+5〉〈Dex+5〉〈Luk+5〉の7種。


 指輪やイヤリング、ブレスレット、チョーカーなどなど結構ジュエリー宝飾的ゴージャス豪華だ。



 魔石を外して落ち着いたデザインに付け替えるのもできそうだけど、魔力回路の知識無くただ石を外すだけだと動かなくなる。

 制服高校生にはちょっと似合わないデザインだ。ふはは勝った!(何に?





 あともうひとつ、本屋さんも覗いてみたい。


 狙いは絵本。絵があって見た事無い文字の文章があればそれで興味引ける。

 ただ予想だとこれは無駄に高いんだろうな。20ページの絵本で5万とか10万とか行ってもおかしくない。


 写本で絵本だとオリジナルイラストの1点ものだろうしなあ。

 そもそもそういう絵本みたいなものは無いのかもしれない。


 問題はそんな値段の本を誰が買うか、だ。売れる気がしない!

「薄い本」問題のように勝手にコピーされてネットに挙げられるのも止められない。




 書店に入ってみる。


 薄暗い店内、埃っぽくも落ち着いた動かない空気、いい古本屋だ好きなタイプ。

 ちょっと違うのは油っこい匂いと酸っぱい匂いが。

 羊皮紙?動物の皮を使っているからなのかインクの匂いなのか。



 目立つところにあるのは数ページの「街の名所案内」、ここルミエスト版と王都版を購入。各銀貨2枚。

 見た感じ版画? 定期的に刷新されているみたい。


 絵本っぽいのは見当たらないなあ。シスターアメリアさんに聞いてみるかな。

 だが、教会の関係者に聞いても一方的な見解の偏った神話だろうという偏見。



〈鑑定〉かけながらざっと棚を見てまわる。値段差の大きい商品はあんまり無い。

 というよりむしろ、全体的に値付けが〈鑑定〉さんより高めだ。



『初級魔法大全』を金貨1枚で買ってみる。なんか新しい魔法使おうと思ったら簡単に使えるし、新しい魔法覚えたらその属性の適正生えたりするかもと期待。


 冊子じゃないマジックスクロールの〈洗浄〉を買う。俺は使えるけど、使えない人にどんどん配ってあげたい。

 現代日本に魔法使える人ができれば面白い。


 このへんは売れ線なのか、〈鑑定〉とそんなに価格差は無い。



 さすがにこの店で片っ端から買い漁る「大人買い」できるだけの財力は無い。

 食器売った金貨20枚が入っても、一瞬で使いきれる。





 西教会まで戻る。本屋の裏から自宅に転移してもいいんだけどね。

 ほぼ日課の〈危険感知〉〈虫の知らせ〉セットでかける。


〈危険感知〉は短時間というか今の状況を把握する感じでわりとはっきりとしたフィードバックがあるが、〈虫の知らせ〉はほんとにふわっとしている。


 その〈虫の知らせ〉が、ほんとにほんのわずか危険な気配を引っ掛ける。気になるからやめるわけにいかない。

 でも半日、明日朝までは問題なさそう。


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 部屋に戻る。 22時。

 PC用ローデスクの前、座椅子の横。





 …… 土足だ。






 ちょっとしたどうでもいいアクシデントに軽く落ち込みつつ、会社の後輩にメール返信。

 もう1件、友人の小田貴之(おだたかゆき)、オタ田にも「明日行くから」とメールしておく。


 オタ田は中学からの親友で、大学で一度離れたけど就職して何年目、盆か正月の連休で帰省してたときに連絡が取れて、会うことに。

 偶然オタ田も都会のほうに出稼ぎに出ててこちらの住所も近所ということが判明。


 それ以来の、復活した腐れ縁だ。



 オタ田は30になる前に会社辞めてしまったようだけど、バイトじゃなくフリーでなんやかんややってるみたい。


 俺はオタ田の自由な生活に憧れ、オタ田は俺の給料に嫉妬する、そんな仲。




 1,800円の松花堂弁当をビールで流し込んで、おやすみなさい。

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