006.めんどうごとをさらに面倒にしていきます
結局バトルはこれでお開きになった。こういう荒事になると雇い主より当事者の判断のほうが上だ。
軽薄イケメン貴族はまだやりたそうだったけど、「これで勝ったと思うなよ」いただきました。
せっかく〈状況記録〉の魔法で記録を残したんだから、どうせならご期待通り全力で引っ掻き回したい。
「ありがとうございます」
シスターアメリアさんから声をかけてくれた。〈鑑定〉で名前は知っているけどお互いの自己紹介はまだだ。
「いえいえ、たまたま通りかかっただけですから。殴られましたけどこの程度で済めば」
「すぐに手当てしますので入ってください」
教会に案内される。孤児っ子たち数人が遠巻きに見ている。
玄関扉を抜けたら礼拝堂だ。5mぐらいの女神像らしき石像が安置されている。
礼拝堂の両脇にいくつか扉が並んでいて、そのうちの一つに招かれる。
部屋には大きめのベッドがある。診療所としても利用されているのだろう。
出された椅子に腰掛け、言われるままにしばし待つ。
シスターが桶に水を入れて帰ってきた。塗らした布で拭いてくれるようだ。
若くて金髪美人でおっぱい大きい。近い!ご褒美だ!
棚からなにか薬をだしてきた。つい〈鑑定〉してしまう。
『怪我治療薬F(軟膏)』、これで止血になるし翌朝には傷もふさがるだけの充分な効果はあるようだ。
シスターさんの〈
だが、
「こんなツバでもつけとけば治るような怪我にポーションまで使っていただいてありがとうございます」
「こちらこそ、孤児院を救っていただいてありがとうございます」
「それなんですけど、これであいつらが引き下がるとは思えませんし、自分も気にかけるようにします。
あ、私タモツといいます」
「私はルミエスタ西部教会でシスターを務めさせていただいております、アメリアと申します」
「神様にお祈りしていきたいのですが、よろしいですか?」
「はい、ぜひとも。神のご加護があらんことを」
診療室を出て礼拝堂へ。女神像の前の奉納台に金貨を1枚。
手を合わせ目をつむり頭を下げているとシスターアメリアの鋭いツッコミが。
「ちょっと!金貨1枚は多すぎます!!」
「治療していただいた治療代と薬代です。お金は稼げば稼げるんで気にしないでください。
自分よりもこちらのほうが必要としてるでしょう。子供たちに美味しいものをおなかいっぱい食べさせてあげてください」
まだ何か言いたそうなシスターをなかば無視して、デブのおっさんはクールに去るぜ!
まずは商業ギルドへ。
魔石が欲しいことを伝え、金貨1枚まででいろいろなグレードのを見せてもらう。
魔力量が欲しい基準値超えてるのは大銀貨2枚クラスから。魔物のレベルで言うと15~20あたり。金貨1枚の魔石がレベル32のオーガロードだった。
5つほど欲しいけど選びたいからと倍量の10個ぐらい用意してもらう。
初の小切手決済、カード払いを済ませたところで本題へ。
「商会絡みでトラブルというかそんな感じなんですけど、そういった話ができる方っていらっしゃいますか?」
担当を呼ぶからと、談話室商談室に案内される。待ち時間に〈状況記録〉した動画を魔石に〈転写〉する。いちおう3個用意してみた。
「おまたせしました。商会担当のウェインです。本日はどういったご用件で」
「まずはこちらを見ていただけますか」
先ほどの顛末の小芝居を再生する。
「こんな感じで、街の教会がクルボッタ商会に乗っ取られ、孤児が奴隷化されて国外に売られているようなのです。
今回の西部教会は未遂といいますかこれからの話ですが、北部教会はクルボッタの手に落ちているようですね。それなりの数の被害が出ていると思われます。
あと、シスターのこの驚き具合から見ても、不当に拉致されてる疑い、行方不明者が出ているのではないかと。
嘘だと知っていますがこれが男爵様独断の犯罪行為ではなく辺境伯様およびルミエスタの街ぐるみの犯罪だと大変な事態ですよ。
ま、そういうふうに言質を取って不敬罪とかそういう方面にも持っていけるように追い詰めてみましたが」
「了解しました。この件は預からせてもらいます。」
「必要になるかはわかりませんが、この再生の魔石をお持ちください。
再生、もう一度見るのは
あと、男爵家、貴族さまを断罪できるだけの地位のある方へ話を通したいのですが、どこにこの話を持っていけばよいでしょうか」
「辺境伯様や国王直属の聖騎士隊へ今すぐ直接というのは難しいが、東門の訓練場に行けば衛兵長と話ができるでしょう。衛兵長は権威に弱いから副長に話を通すのが良いと判断します。
商業ギルドから一筆、紹介状を書きます」
「ありがとうございます。」
その足で東の訓練場へ。紹介状を渡して衛兵隊副長へ取り次いでもらう。
副長といっしょに聖騎士隊の人も野次馬的に立ち会ってくれたのが幸いだ。
再生魔石で動画再生し、懸念を伝える。しばらく定期的に市内の教会に巡回してもらうようお願いして、再生魔石を聖騎士さんに預ける。
返してもらえなくてもいいけど1個大銀貨2枚、たぶん2万円ぐらいだからなあ。大盤振る舞いしてるけど今の自分にはけっこう痛い。
西門へも足を運ぶ。こちらも説明と西の教会が近いから巡回のお願い。
こちらはここから上へ話が流れることはなさそうだから再生魔石は預けない。
なんだか無駄な正義感に突き動かされたけど一日中、15kmは歩いた。達成感と共に疲れと眠気が一気に押し寄せる。
冷たいビールが恋しい。
帰るか。
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