005.めんどうごとにまきこまれました
人通りを避けて路地に入る。が、路地裏の教会前がなにやら騒がしい。
歳若いシスターに男性3人が詰め寄っている。『ヤ』のつく自由業、なんて生易しいものじゃない、ガチでやばい風格がある。
首突っ込む謂れも無いしなにより根性も無いけど、20歳ぐらいの女の子にこの荒くれ者3人の相手はきついだろう。
『解体ナイフ』を腰に挿し、先ほど買った『幸運の護符』を胸ポケットに。『幸運』のパラメーターはちゃんと仕事するのかわからないけど、だからこその気休め。
スマホで録音とか動画録画しておこうかな。
なんて考えてたら、どうやら記録魔法があるようだ。
時間と空間、か。なんでもありだな《時空魔法》。
〈状況記録〉魔法を発動し、わりと無神経な感じ、ただの通りすがりの体で近づく。
やはり?「立ち退き」や「孤児の譲渡」、「シスターの身売り」なんかの穏やかじゃない単語が聞こえる。
そこにいる人達に〈鑑定〉を飛ばす。
中央の軽薄そうなニヤニヤ笑いのイケメン貴族クルボッタ・ネスキオーカはクルボッタ準男爵家の長男でクルボッタ商会の副会長、No2だ。
後ろの二人は地下組織「レイブン」のメンバー。図体がでかいのがマダル、拳闘士で破壊王だ。一方的に殺し壊し暴れ殺戮破壊の限りを尽くしたい、迷惑な筋肉だ。
神経質そうな細マッチョはマーレイ、細剣使いで
「おいおっさん、何見てんだ、あぁ!?」
ようやく気付いてくれた。
「いえ、たまたま通りかかったんですがそのまま通り抜けられる空気じゃなかったもので。
女性ひとりに男性3人で脅しているようにも見えましたが、見た目だけで決め付けるのもよくないですし、どちらの言い分が正しいのかも知りたかったですし」
「何言ってんだテメェ! こっちは領主様の指示で動いてンだよォ!」
はい、嘘発見。〈鑑定〉、万能すぎない?
もうちょっとつついてみよう。
「なるほど、少年少女を拉致して奴隷として帝国に売るのも、そのための教会乗っ取りも教会孤児院運営費の横領もルミエスタ辺境伯の指示というわけですか。
この規模の街ぐるみの犯罪となると、門の衛兵さんとかに伝えるだけじゃ揉み消されるだけでしょ。王都まで行って宰相さんに掛け合うか、面倒だなー(棒読み)」
「えっ!? 子供たちそういうことになってるんですか?」
今まで気丈に頑張ってたシスターアメリアさんが半泣きだ。
「奴隷の売買、譲渡自体は問題なく取引されてますので、国外の子供達に関しては身請けという形で引き取ることになりますね。
金貨1枚で売られた子でも、正当な手段での身請けとなると金貨50とか100とか吹っかけられるでしょう。」
「……なにもんだテメェ」
「ただの太めのおっさんですが?」
「この野郎!!!」
でかいのが殴りかかってきた!
拳闘士がスキル使って殴ると、当たったらしんでしまいます!
「ひゃぁあ」
情けない声をあげながら解体ナイフに手をかける。
スキルによる攻撃は動作のラインが決まっているので見切って半身ずらす。
伸びきった腕の筋肉、肩口にすっとナイフを入れてそのままひねる。これで肩関節と上腕の骨がお別れだ。
なんでこんなことができるんだろう。集中してたと言っても
まるで自分が格闘ゲームの世界に入ったかのように百分の1秒の世界で思い通り正確に動ける。
弱点? 肩関節の継ぎ目は『解体ナイフ』の技能に導かれたかな?
「あひゃあああ」
殴られた勢いでふっ飛ばされた
頬が熱い。触るとぬるっとしている。皮膚が裂けて血が出たようだ。
もうひとりの細剣使いが参加、追撃してくる。
初撃はなんとか避けるが、2撃目避ける体勢作るより追撃のほうが早い。
やっぱり相手の
ナイフの背で細剣の剣戟を流しながら、細剣の根元に近い部分で強く弾く。浮いた手首に解体ナイフを刺し込みひねる。間接外し、食事で鶏の足にナイフ入れてもなかなかこうはうまくいかないのに。
ごろごろ転がって距離を取る。
3人全員に一撃づつ。自分は損傷軽微だが情けなく見えるよう、うまく立ち回れた。
ノーダメージだと怪しいからこのあたりは計算通り。
用心棒二人は利き腕に深刻なダメージが入ったからこのあたりで騒ぎを収める流れになるかな。なってくれ。
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