004.ルミエスト市民になってみました
ルミエストの街に入った。大通りが1本、南北(たぶん)に貫いていて、ここがメインストリートなのだろう。4車線ぐらいの広さがある。ほとんどが2階建てだけど3階建ても珍しいが見回して目に付く程度、無くはない。
その中でもひときわ堂々とした大きな建物、看板には「剣と盾」。冒険者ギルドだなあ。
日本では見たことないけど一目でわかるユニバーサルデザイン。
《時空魔法》とか《召喚魔法》で戦えるかもしれないけど、おっさんだし体も動かないし定番の冒険者ギルドよりは商業ギルドのほうかなあ。
大通りを南へ向かう(たぶん)。たぶん街の中央部分にやたらでかい広場がある。
サッカーコート1面分はありそうな広場、泉を中心に東西南北4方向に石畳。
石畳から外れたところは市場になっているようだ。どういう縄張り争いがあるのか、自然にできた迷路を散策する。
屋台で肉串売ってたので豚串を1本、大銅貨1枚。想像以上においしい。
焼きすぎた豚肉のわりに脂(サシ)が入っててやわらかく、フルーツ感の強いバーベキューソースとすごくよく合う。
水筒の水で口を潤して散策再開。しかしこの水、ほどよく冷えててすごくおいしい。
なんだか趣きのある骨董品を並べているところで足が止まる。〈鑑定〉とか使えたらいいのにな。鑑定までできたら現代世界との転移とアイテムボックスで楽勝やんやん。
『祈願の邪神像:旧魔法文明時代、邪神として迫害された一柱の神に祈られた想いの形。金貨450枚。』
まじか。鑑定できちゃったじゃん。〈鑑定〉が発動してわかったけど、モノの価値とはすなわち人の手を渡ってきた歴史や時間そのものなんだな。さすが《時空魔法》。
ちょっと足を止めていろいろ見せてもらう。店主に断って手に取らせてもらう。
ちゃんと効果のあるマジックアイテムは横に置いといて、いろいろガラクタを見てまわる。
「この像、お値段おいくらぐらいですか?」
「銀貨1枚かな。」
「こっちの石版のかけらは」
「大銅貨2枚」
「もうちょい大きければちゃんと価値あるんでしょうけどね、これじゃ古代文字が何文字か見えるだけだし研究の足しにもならないですかね」
なんて言いながらそんな感じで20点ほどを銀貨5枚でまとめ買い。強気の値段設定の旧魔法王国魔金貨を除いてほとんど全部根こそぎお買い上げだ。
こっそり『幸運の護符 金貨20枚』とか混じってるけど内緒。
店主のじいちゃんの村の近くに遺跡があり、そこから拾ってきたという。場所は聞いたけど村から山の中を歩いて1日かかる距離、魔物も出て危険だということで遺跡訪問はひとまず断念、残念。
露店の雰囲気見るためにちょっと立ち寄っただけのつもりだったけど、結構熱くなってしまった。
急ぐ理由無いけど商業ギルドに急ごう。
広場中央の泉を目印に、南へ向かう。
南側大門の人の出入りが見える距離に、冒険者ギルドと併設するように商業ギルド。
看板の『袋と硬貨と宝石』の意匠はそれでいいのか?
建物の前で考えていても仕方ない。こういうのはさくっと入る。
長い受付カウンターで職員と客を隔てている。銀行みたいな感じ。バーカウンターのように客側にも椅子があるのは話が長くなるからだろうか。
よく見たら職員エリアは奥で冒険者ギルドとつながっているようだ。護衛の依頼とかもあるだろうし、商人と冒険者のつなぎの役目もやっているのだろう。
受付のお姉さんの一人と目が合う。視線だけで「おいでおいで」と完全にロックオンされているので、吸い込まれるようにそちらに向かう。
「ようこそいらっしゃいました。ご用件は」
お姉さんに椅子を勧められ、促されるままに座る。
「あ、商業ギルドのギルドカード作ってもらいたいのと、あと商売のルールみたいなのを少し教わりたくて」
「かしこまりました。先に本人認証と登録をさせていただきます」
ネームプレートと滞在許可棒を渡し、魔道水晶に手をかざす。登録料は大銀貨3枚、滞在許可証分の大銀貨1枚を引いて大銀貨2枚を渡す。
そして貰ったカードはEランクだった。毎年のギルドカード更新は市民税も兼ねている。
登録が高額なのは信頼への担保だ。商業ギルド、高ランク登録者への信頼があるから仕入れのための借り入れや後日払い、ツケが効くようになる。
取引のときカードを見せてそのグレードがそのまま信頼になる。冒険者ギルドのようにタダ同然で登録できるFランクは設けていないそうだ。
「それで、教えてもらいたいのが露店や屋台の場所代など……」
ひととおり説明を受けた。露店なら場所代などは問題ないようだ。
売り上げなどにかかる税金はギルドカードの出納を見て徴収されるらしい。小遣い稼ぎ程度の規模なら市民税に含まれる、と。
実店舗で大銀貨ぐらい以上の取引ならカードによる決済が基本。魔法による個人認証がきっちりしてるので、サインによる小切手決済で問題にならないという話。
とりあえず金貨2枚を預け入れておく。ポーチの中には金貨があと1枚。このお金どこから出たんだろう。
契約小切手100枚綴りとペン、インクを購入。大銀貨1枚。
細かいことは置いといて、一応これでルミエスタ市民になれたわけだ。
もう少し街を歩いたり宿に泊まったり、こっちの世界の雰囲気を楽しみたいところだけど、明日は仕事だからなあ。
自宅に転移するために、ちょっと人通りの少ない路地裏に向かう。
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