003.まずは街に向かってみよう

 最初に感じた違和感は足元だった。

 長靴のような革靴を履いていた。ズボンのすそは革靴の中に仕舞って、伸縮性の無い生成りのシャツ。肩掛けカバンとフード付きマント。全体的に薄茶色いコーディネート。

 正面、へそのあたりに構えたウェストポーチにはいくばくかのお金と身分証カード、ポーチ内の仕切られたポーションホルダーにポーションが3本。


 身分証カードは金属プレートに「タモツ」と自分の名前だけが入っている。名刺よりも情報量少ないなこれ。


 あ、あれ? このプレート触ってたら自分のステータスわかるっぽい。



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Name: タモツ(大和田 保)

Level: 1


Status

腕力:E 防御:F 知力:B 魔法抵抗:A 素早さ:F 器用:C 運:C


Skill

《時空魔法》《召喚魔法》


Extra

《言語理解》

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 よかった。翻訳スキルついてる。身分証と少々のお金があれば街には入れるだろう。

 街に行って何するわけでもないけど。

 MP回復するまで推定5時間、ここで待つのもあれだしな。街に向かおう。



 しかしまあなんですな。転移の瞬間、落ちる感覚のあった1秒ほどの間に神様でもいたのだろうか。

 気にしたのは言葉の壁と服装のことで、どちらも願いがかなっている。


 あの瞬間に「剣術Max世界最高峰になりたい」、とか「このおなかのお肉が無かった15歳頃に戻りたい」とか思っていれば叶ったのかな。




 丘から見下ろすと街に向かって街道が延びている。丘の中腹に1本目立つ大木が立っている。またここに転移できるように、この光景を目に焼き付ける。


『この地点を転移ポイントに設定できます。設定しますか?』


 誰だか知りませんがご丁寧にありがとうございます。設置いたしますよ。


『城塞都市ルミエスト近郊を第2ポイントに設定しました。』



 ああ、あの街ルミエストって言うんだ。というと第1ポイントは


《1:大和田 自宅マンション》

《2:城塞都市ルミエスト近郊》


 よかった。転移ポイントに設定されてるなら問題なく帰れるんだろう。

 いつでも帰れる保障がついた気がして、ずいぶん気が楽になる。

 まあ一度街に入ってみよう。


 街に向かって小一時間歩く。暑さ寒さを感じないちょうどいい気候だけど、歩くと汗が出る。水筒から水を一口飲む。


 うん? この水筒どこから出した?


 水筒を肩掛け鞄に戻そうとして理解する。この鞄が《空間収納》持ってるようだ。

 中には杖、解体ナイフ、いくらかの保存食など。

 杖を取り出してみる。身長より短い150cmぐらい。うん、この長さの杖は普通、鞄に入らないよね。


 そろそろ城壁に近づいてきて他人の目もあるし、検証は控えよう。


 入市処理で並んでいる列にさりげなく混じる。近くのグループの話し声が何を言ってるのか理解できてほっとする。



 ほどなく自分の番がまわってくる。


「この街に来るのは初めてか」

「はい」

「身分証を」

「はい」


 さっきの名前プレートを渡す。


「名前と犯罪歴を」

「タモツ、ありません?」


 本人に犯罪歴聞くのはどうなんだろう。


「ん、よし。入市税は大銀貨1枚。」


 銀貨と交換で、名前プレートと指1本分ぐらいの大きさの黒い金属棒を渡される。


「滞在許可期間は10日、それまでに市民登録を行うか滞在延長の申請をやっておけ。

 許可証を無くしたり期限を過ぎたりすると不法滞在として相応の罰を受けることになる。罰金で済めばいいがそれが払えないと奴隷落ちだ」


 怖!

 軽く脅されてビビりながら、それでも一応問題なく街に入ることに成功した。

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